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● Patriot Act(愛国者法)に反対の決議をした、カリフォルニアの自治体への復讐の手口を紹介します:
カリフォルニア州サンタ・クルズ。サンフランシスコから太平洋沿いに南下する、海辺の町である。大学町でもある。1970 年代に、アメリカ各地をあちこちと旅して歩いていたころの記憶のなかに、この町で数時間を過ごしたことがわずかに残っている。海岸には、長い、古びたボードウォークが伸びていたはずである。気の置けない、自由な雰囲気に満ち満ちていた。映画『ビッグ・ウェンズデー』に出てくるビーチ・タウンを思い出させる。
去る 9 月 9 日に、サンタ・クルズ町議会は、ワシントンの連邦下院司法委員会に手紙を送り、そのなかで、ブッシュ大統領の弾劾を考慮してほしいと要望した。大統領の弾劾手続きは、下院が発議することになっている。最近のアメリカでは、9.11 からイラク戦争を通じて、現政権がとってきた施策に反対の声を上げる自治体が増えている。市民的自由の制限を定めた、いわゆる「合衆国愛国法」に対して公に反対を表明した州が 3 つ、市町村では 188 になっている。サンタ・クルズの議会による弾劾要求も、そうした流れのなかに位置づけられる。
10 月 23 日付けの AP 電が、その後に発生した「異常事態」の連鎖を伝えた。そこには、アメリカ人たちをとらえている、暗い不安の根深さが表れていると思われる。
弾劾要求が採択されてから 4 日後の 9 月 13 日、町のベーカリー「グッド・シングス・トゥ・イート」に泥棒が入った。この泥棒、高度な技術と、ある固い意志を持っているらしい。というのは、まず、窓を一枚きれいにはずして侵入している。さらに、人間の動きに反応するモーション・ディテクター装置をかいくぐって、古いコンピュータのハードディスクと、そのバックアップを持ち去ったのである。明確な意図のもとに実行されたプロの犯行と疑いたくなる。
このベーカリーは、町の町長を務める、エミリー・ライリーの店なのである。さらに、17 日、突然、ベーカリーを FDA(連邦食品医薬品局)の係官が訪れる。身分証を提示し、店のなかを見回す。そして質問。この店は人工着色料を使用しているか? もちろん、使っていない。州の境界線を越えて運んでいるものはあるか? この店はクッキーの郵送は受け付けているけど。
気になることに数日をおいて 2 回見舞われたライリー町長は、偶然がいろいろ重なっただけで、政府によるいやがらせとか「陰謀」とかではないはずと、問題にしない態度である。しかし、町民はそうはいかない。とりわけ、同じく他のベーカリーは、心穏やかではいられない。「もう 20 年もパン屋しているけど、FDA なんて一度も来たことない」「うちは店が 10 個所あるけど、そんな役人見たことない」などなど。
すべては、なんでもないことと言えばなんでもないことである。実際、偶然が重なっただけなのであろう。係官が予告なく町長の店を訪問した FDA でも、通常の業務にすぎないと言っているらしい。以前なら、運が悪かったということで済んでしまったにちがいない。しかし、いまはそれでは済まなくなっている。見えない影の存在に、心のどこかでおびえている。アメリカ市民のなかに生まれつつある小さな「揺らぎ」は、次第に振幅の大きなものになりつつある。この海辺の些事が物語っているのは、そのことではないか。
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[2003.10.31]
http://www.edagawakoichi.com/