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精神病と暴力性とは関連ない/男性・若齢・低い社会経済的地位がリスク(英国精神医学研究所の研究成果)
http://www.asyura2.com/0311/bd31/msg/593.html
投稿者 メディカル・トリビューン(2003年2月27日) 日時 2003 年 11 月 02 日 12:08:17:rLUarfp9CwXJA


http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno6/3609/09hp/M3609401.htm

[2003年2月27日 (VOL.36 NO.9) p.40]

精神病と暴力性とは関連ない

〔ロンドン〕 「精神病患者はそうでない人よりも暴力的か」という疑問に答えて,精神医学研究所(ロンドン)法廷精神保健部のElizabeth Walsh臨床講師とThomas Fahy教授は,「精神病が社会にもたらす暴力は少ない」とする研究をBritish Medical Journal(2002; 325: 507-508)に発表した。


共存する他因子の検討も

 Walsh講師らは「精神病患者による暴力行為はまれであるが,その報道は目立ち,時には扇情的ですらある。このことが精神病患者への恐怖感をあおり,精神病患者にますます汚名をかぶせるものとなった」と述べている。精神医学研究所は,英国の主要な統合医科大学であるGuy's, King's and St. Thomas大学(ロンドン)の 1 施設である。
 同講師らは「社会への暴力の大部分は,社会経済的地位の低い若い男性により引き起こされる。この小集団は,精神障害の有無にかかわらず暴力を起こすリスクが高い。すなわち,「精神病にかかっている人が暴力的であっても,それは必ずしも精神病が原因であるというわけではない。高い暴力リスクに寄与している他の因子が原因であるかもしれない」と説明する。
 この指摘は,44歳までフォローアップを行ったデンマークでの出生母集団調査に最もよく表れている。この調査は,Archives of General Psychiatry(2000; 57: 494-500)に発表され,暴力を理由に終身刑となった男性被験者の 7 %が精神異常を原因とすると報告した。しかし,同講師らは「 5 %には薬物乱用も併せて見られ,このことは,精神異常のみを原因としたのはわずか 2 %であったことを意味している。さらに,その 2 %の一部は共存する他のリスクファクターが原因であることも十分考えられる」と述べている。
 同講師らは「精神病のみに罹患している患者の暴力に対するリスクは軽度であるが,最もリスクが高いのは,人格障害,薬物乱用,そして薬物乱用と重度の精神病が複合した異常状態である」と,この問題に関する複数の疫学的調査結果を解釈している。
 今回の結論は,Hospital and Community Psychiatry(1990; 41: 761-770)に発表され「暴力と精神障害に関する最良の疫学的データ」と同講師らが評する米国での疫学的管轄区域(ECA)調査,および1998年にBritish Journal of Psychiatryに発表されたオーストラリアの調査に基づいている。
 米国での調査では,暴力発生率は代表的な 1 万59人から成る地域社会集団サンプルにより判定された。暴力のリスクが最も高かったのは,薬物乱用または薬物依存症(34%),もしくはアルコール乱用またはアルコール依存症(24%)であった。それに対して,統合失調症患者のうち暴力が報告されたのは 8 %であった。
 オーストラリアの調査では,統合失調症の男性は一般人口に比べて凶悪な暴力犯罪を起こす可能性が 4 倍高いことがわかったとしている。


男性・若齢・低い社会経済的地位がリスク

“社会への暴力のうち,精神障害が原因となっているものの比率はどのくらいか”に答えて,Walsh講師は「地域社会全体の暴力発生率により異なるであろう。米国のECA調査では,社会経済的地位の低い18〜24歳の男性の16%が暴力的であった。これは,対象とした全階層の統合失調症患者集団よりもはるかにリスクが高い」と述べている。さらに「精神病の社会への暴力に対するリスクは軽度であるが,男性,若齢,低い社会経済的地位といった因子の,社会への暴力に対する寄与度ははるかに高い」と付け加えている。
 同様に,英国保健省が発表した殺人および自殺に関する全国調査によると,殺人犯の 3 分の 1 が精神障害の診断を受けていた。うち,最も多かったのは人格障害と薬物乱用であり,統合失調症はわずか 5 %であった。
 このことから,同講師らは「米国では最近25年間で大規模の精神障害者施設が閉鎖されたため,施設に入れない患者が起こす社会への暴力の比率が高まったとする主張は根拠がない」と結論付けている。


科学的な知見に基づく判断が必要

 Walsh講師らは「科学的な文献はこの知見を裏づけており,重症精神病患者はすべて危険であるとする固定観念を否定している。多くの精神衛生評価において包括的に評価する場合,多くの側面のうちの一側面として他人への暴力のリスクを予測することは理にかなったことである。しかし,地域社会のなかで効果の高い治療法を提供するのではなく,暴力のリスクに対する先入観に駆り立てられて,精神衛生政策や法制定が行われることは適切ではない」と述べている

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