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人工子宮できたらどうする?
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031025/mng_____tokuho__000.shtml
米国で「代理出産」した子どもは実子とは認められず日本国籍もあげられない。法務省の見解だ。出産者が実母というルールが適用されているからだ。だが、海外で代理出産し、その事実を伏せたまま国籍を得るケースも。今回は、母親が五十五歳で届け出の際「代理」が発覚した。年齢による線引きの実態を探ると。
「年間四、五組が米国で代理出産している。十五年前から代理出産のあっせんを始めて、これまで五十数人の子どもが誕生しています」。代理出産事情を明かすのは、卵子提供・代理母出産情報センターの鷲見侑紀代表だ。
さらに「今回のように、五十歳以上の女性から依頼を受けたこともある。養子縁組したので、トラブルは起こらなかった」とも。
鷲見代表は説明を続ける。
「代理母は、三十−三十五歳の子どもを産んだ経験のある人がなります。報酬は二万ドルぐらい。代理母に対しては、精神鑑定や家族調査など詳細な調査をする。おなかの子どもを人質に、法外な金銭を要求される恐れもあるから。多額の借金などがある人を選ぶことはできない。基本的に子ども好きでボランティア精神がないと務まらない」
■「国内に数百組希望者がいる」
国内で代理出産二例にかかわった、登誠会諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長も証言する。「国内には数百組の代理出産希望者がいる。自分の病院にも、二十数組が相談に来ている」
すでに代理出産をめぐる米国ルートは確立されているようだ。だが−。
「出産の事実をもって母とする」(一九六二年の最高裁判例)「母親が五十歳以上の場合は出産の事実を確認する」
(六一年の法務省通達)
日本人夫婦に立ちはだかった二つの壁だ。海外で代理出産しても、「依頼夫婦が父母」という内容の出生証明書を現地でもらい、実子として出生届を出せる。しかし、今回は母親の年齢がネックとなり、日本政府が届け出の受理を留保した。年齢からみて、政府が認めていない代理出産の可能性が濃厚だったからだ。
五十歳の線引き。この理由について厚生労働省母子保健課担当者は「普通、四十五から五十歳ぐらいで生理が終わり、生殖年齢ではなくなるから」と話す。法務省の担当者は「はっきり線引きしているわけではないが、出生証明書の添付書類に疑問があれば、事実関係を確認する。五十歳未満でも疑問があれば調べる」という。だが、「母親が若い場合、代理出産でも見逃されている例があるかもしれない」と矛盾も認める。
代理出産の希望者は多い。だが法律が整備されていない。こうした中、二人の子どもが国籍を取れない。
根津氏は「日本から米国などに代理出産に行っている事実を知りながら、日本の官僚は『確認できない』と無視してきた。問題が起きると四十年前のかびのはえた判例や通達を持ち出してきて、現実から逃げようとする。法が現実に追いついていない。親子ともどもスムーズな日常生活を送れるようになぜできないか」と政府の対応に怒りながら続ける。
「五十歳未満だと、代理出産でもお目こぼしされるケースがあるなら、それは代理出産を認めない厚労省の姿勢と矛盾する。五十歳の線引き自体が、意味のない基準だ。通達のころより、肉体年齢が若返っており、五十歳以上での出産も数例報告されている。線引きは、『五十歳以上が妊娠するのはおかしい』という女性に対する冒涜(ぼうとく)だ」
鷲見氏は「日本で出産しても、母親の年齢が高い場合は、調査を経ないと受理されない現実がある。若い人だけが見逃されるのはフェアじゃない。禁止をうたうなら、海外で普通に出産する人は全部調査すべきだ」と非難する。
代理出産に直接かかわる人たちは政府の対応に憤る。では法律や医療の専門家の見方は。
■「倫理問題あり法律上は当然」
日弁連人権擁護大会でシンポジウム「先端医療技術と人間の尊厳」事務局長を務めた黒田陽子弁護士は「代理母には、子宮を貸すという女性の機能を売る行為や、生まれてくる子に出生の経緯が知らされていなかったりと、産む側、生まれる側双方に倫理的な問題がある。今回の対応は日本の法制度上、当然の処置と言わざるを得ない」とみる。
その上で「代理母を認めない日本と、米国など合法の国との違いを国際間でどう調整し、そういう中で生まれた子の権利をどう守るか。子どもの立場に立てば、出生の経緯が明確であることは極めて重要なはず。今回の場合、日本では、代理母が認められていない以上、養子縁組の対応で決着せざるを得ないのではないか」と指摘する。
海外での移植など先端医療を倫理的に研究する岡山大学の粟屋剛教授は「米国では代理母が、自分の産んだ子を手放したがらなかったり、代理母、依頼母双方が子どもを放棄したりすることが問題化している。現地で認められているからと、日本から行って代理母を求めるのは相当慎重でなければならない」とする。
ただ今回のケースについては「父親に生殖能力がなく、精子を第三者から提供された場合、母親が産めば、その子は、父親と遺伝的つながりがなくても実子として登録することが可能だ。今回の場合、『逆だから、だめ』というのは理屈が通らない。法務省は実子扱いして国籍を与えてもよいのでは」と述べる。
■「禁止してもまだ出てくる」
同時に「臓器移植のように、人間の体のパーツ化はどんどん進んでいる。子宮をその一つとしてみたとき、将来、人工子宮ができたらどうするのか。子宮を女性や母性の象徴としてとらえ、そこから産み出るものだけを実子とする法的解釈が、先端医療に追いつかなくなる状況はすぐそこまで来ている」と予測する。
厚生労働省の「生殖補助医療技術に関する専門委員会」委員を務めた岩手県立大学の石井トク教授は「委員会で最も重要視されたのが生まれて来る子の福祉だった。いくら日本で禁止しても、代理出産が可能な外国に子どもを求める夫婦はこれからも出てくるだろう。今回のように、生まれて日本に連れ帰って、初めて問題が発覚するのは悲劇です。本来、渡米する前に、さまざまなリスクを把握した上で、決断すべきだった」と指摘しながら強調する。
「代理出産を法的に禁止することは重要だが、抜け道ではなく、正面から、生まれた子を日本でどう受け止めて育てるか。今回のケースはそれを考える大きなきっかけになる」
<メモ>
代理出産国籍問題 不妊に悩んだ関西地方の夫(53)と妻(55)が米国で代理出産に臨み双子男児が誕生した。
しかし法務省は「親子関係が特定できない」とし、誕生後1年以上たっても日本国籍がない状態が続いている。厚労省の生殖補助医療部会は4月、代理出産禁止の報告を出した。だが、子の法的地位などを定めた法案の国会提出は準備中で、代理出産自体が現行法の枠外に置かれている。