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「たばこ病訴訟」で国・JTの責任認めず…東京地裁
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がん患者ら6人が、喫煙によって病気になったとして、国や日本たばこ産業(J T)に計6000万円の損害賠償とたばこ広告の差し止めなどを求めた「たばこ病訴訟」で、東京地裁は21日、請求を棄却した。浅香紀久雄裁判長は、「ニコチンの依存性は、アルコールや薬物に比べて低く、喫煙者の意思や努力で禁煙できる」と述べた。原告側は控訴する方針。
この訴訟は、喫煙者が国を相手取った初の訴訟で、がんなどに冒された患者による訴訟としても国内では初めてだっただけに、司法判断が注目された。しかし、判決は原告側の訴えを全面的に退け、喫煙の有害性について、「肺がんなどにかかる危険性を高める」と指摘するにとどまった。
また、「健康のため吸いすぎに注意しましょう」という表示が、1972年からたばこの箱に付けられるようになった点も、「諸外国に比べ、著しく遅れているとは言えない」とした。
訴えていたのは、50代―70代の男性(3人は98年の提訴後に死亡)。
原告側は、たばこの有害性を知らされず、喫煙を続けたことが原因で発病したと主張。JT側には「消費者に正しい情報を提供しないまま販売を続けた」とし、国には「違法な販売を放置した」として、たばこ広告の差し止めや、「発がん性がある」と明記することなどを求めていた。
喫煙者の健康被害を巡っては、ニコチン依存症になったとする男性らが、JTに販売差し止めなどを求めた訴訟があるが、請求が棄却され、確定している。
◆「遅れた判決」患者ら控訴へ◆
「米国などに比べ、30年前のような判決だ」――。判決がニコチンの強い依存性などを否定したことに、原告側からは失望の声が上がった。
「たばこの有害性を認めながら、販売する方の責任を認めないことに憤りを感じる」。原告団長として今年5月の結審まで訴訟の先頭に立ち、1か月半後に76歳で亡くなった荒木照夫さんの3男、淳さん(36)は、判決後の会見で遺影を抱いて語った。
照夫さんは20歳から喫煙を始め、81年に肺がんと診断された。医師から「すぐに喫煙をやめなさい」と指示され、右肺を手術で切除。「たばこの恐ろしさを若い世代に知ってほしい」と、体につないだ酸素ボンベを台車で引き、小中学校などを講演して回った。
米国では98年、たばこの害が原因で医療負担を強いられた各州政府が起こした訴訟で、たばこ会社側が約23兆円を払う和解が成立。JTもこの和解に参加し、輸出品の一部には「がんの危険性あり」と表示している。「有害性を知りながら国内では情報を開示しないJTに、父は憤っていた」と淳さんは言う。
(2003/10/21/15:38 読売新聞)