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身体障害、職業、それに性別が関係している職業に関する言葉の言い換えと《言葉狩り》に関しては相当ウンザリしているが、《ポリティカル・コレクトネス》の本場アメリカでの《言葉狩り》は信じられないほど凄まじいみたいだ。
宗教とフェミニズムと人種が絡んでくるので、日本よりも遥かに錯綜した状況になってしまうのだ。特にヒドイのが学校の教科書。ありとあらゆる《差別》《偏向》がチェックされ、実におかしなことになっている。ちょっと次の文章を読んでいただきたい。
1)目の不自由な男が、恐るべき障害を乗り越えて、マッキンレー山の登頂に成功した。
2)有史以前には、地球上に恐竜がうろついていた。
3)あるアジア系米国人の少女が、祖父とチェッカーをして、ピザを持っていった。彼女の母親は教授である。
これみんな、《差別的表現》と《偏向》に満ちていて、とても教育に使える代物ではないんだそうだ。
まず1)では、「恐るべき」というのが許せないそうだ。目が見えないことの不利を強調しあたかの身体障害であるかのように扱っている。違いのかって?目が見えないのは、髪の色などと同じ《人間の個性》なのです。それに登山。これは犯罪的な《地域的偏向》だ。砂漠や都市に住んでいる読者はどうする?
2)恐竜?ダーウィンの進化論を受け入れるなんて、キリスト教の観点から絶対に許せません!
3)老人がチェッカーをしている描写は年齢差別にあたる。老人はもっと生き生きとした活動をしてなければならない。ピザはジャンクフード!学校でそれを食べるところを表現しちゃいけない。母親が教授?この表現はアジア系アメリカ人が《モデル・マイノリティ》だという神話を固定化するとんでもない人種差別だ……
冗談みたいだが、本当の話だ。USニューズ&ワールド・リポートの最新号で、コラムニストのジョン・レオが紹介している。拡大鏡でチリを探すように神経症的に《差別》と《偏向》を探し出し、告発し、規制するこうした動きの二大勢力は、宗教的右派と多文化・フェミニスト左派。
宗教的右派は、進化論、魔術、賭博、ヌーディティ、自殺、麻薬などの記述に敏感に反応する。一方、多文化・フェミニスト左派は、「ハックルベリー・フィンの冒険」のような御伽噺を《性差別的》と批判するのを始め、宗教、喫煙、ジャンクフード、銃、ナイフなどの描写、さらに《固定観念化行為》と呼ぶものを告発する。《固定観念化行為》というのは、黒人を運動選手として描いたり、男性が道具を使って作業したり、女性が料理をしたり子供の世話をしているところを描いたりすることだ。
教科書出版は採用されれば、何百万jもの利益を産むビッグ・ビジネスなので、出版社側はこうした右派・左派からのイチャモンに全面降伏して従っている。ある記述が「偏向している」と攻撃されて教科書として採用されなかったらえらいことなので、左右どちらからの非難にも耐えられる徹底的なガイドラインを作り、臆病と保身の結晶のような教科書を作っているそうだ。
ある人種・性別・年齢相のステレオタイプ化を避けようとした挙句、反対にハードな逆ステレオタイプ化とでも言うべき現象が起きている。女性が家庭にいるところを表現してはならない、メイドは黒人であってはならない、というように。
差別や偏向を正すために特定の言葉や表現を禁止しても、差別の解決には絶対にならない。かえって差別を隠蔽し内向させて、かえって複雑で手に負えないものにしてしまう。そして《差別》を食い物にして金や権力を得ようとする政治屋が繁殖する絶好の温床を提供する結果に終わる、という愚劣な構造は日本でもアメリカでも多分、同じだ。[2003/06/24]
http://www5.big.or.jp/~hellcat/news/0306/030624.html
http://www.usnews.com/usnews/issue/archive/030630/20030630040811_brief.php