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世界を変えた2年前の9・11同時多発テロは、防ぐことができたかもしれない。米上下両院の情報特別委員会が発表した約800ページの報告書は、読む者にそんな印象を与える。
米連邦捜査局(FBI)はハイジャック犯2人と事前に接触し、資金源もつかんでいたが、中央情報局(CIA)が監視対象者のリストに載せなかった。
米西部のFBI係官が航空機の操縦訓練を受ける不審な人物が増えていることを報告したが、上層部には届かなかった。
アルカイダが米国への攻撃を計画しているとの情報は数多くあった。だが、それらがブッシュ大統領に伝わっていたかどうかは、大統領府が議会に対して情報の開示を拒んでいるため、なおわからない。
こうした内容の多くは、すでにメディアによって報じられている。しかし、膨大な量の公文書や数百人の関係者の証言に基づく報告書には、格別の説得力がある。
先端技術や豊富な資金を使って世界に情報収集の網を張りめぐらせている米国は、情報帝国とも呼ばれる。だが報告書は、情報機関どうしの根強い縄張り意識や情報伝達の不手際から、重要な情報が生かされなかった実態を描き出した。
いま米国は、ブッシュ政権がイラク戦争を急ぐあまり、イラクの大量破壊兵器の脅威を誇張したのではないか、という疑惑に揺れている。重要な情報と的確な分析が大統領に伝わっていたかどうかが問われている点で、報告書の指摘とも同根である。
CIAなどからの情報は、軍事行動についての判断の基礎となる。ブッシュ政権がイラク戦争型の先制攻撃を戦略の柱の一つとしているだけに、情報が正しく扱われなければ大変な誤りにもつながる。
今回の報告書は、石油利権と兵器の取引を通じた米国とサウジアラビアの関係のゆがみという事実も浮き彫りにした。
9・11の実行犯の多くがサウジの出身だった。王族の一部を含むサウジの富裕層は、事件の直前までアルカイダのメンバーを資金面で支援していたとされる。
そのことを具体的に裏付ける情報は公表の段階で報告書から削除されたが、それは外交的な影響を懸念する米政府の要請を受け入れたためだと議会側は認めている。
サウジが王政への批判を外へそらそうとする狙いから過激派を甘やかしてきたと批判する米国内の声は、この報告書でさらに高まるかもしれない。アラブの民主化を唱えるなら、ブッシュ政権にはしっかりとこの間の説明をする責任があるだろう。
議会が政府の外交や軍事行動を監視する。重大な事件については、たとえ政権の不利益になるような調査でも、与党は野党と一体になって取り組み、結果を国民に公表する。そうした米議会の伝統は、9・11テロ後の米国でも健在だった。それを示したことにも、報告書の意味がある。