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社 説 2003.07.27(日)
イラク特措法が成立 数々の疑問は残されたままだ
イラクに自衛隊を派遣するイラク復興支援特別措置法が参院で可決、成立した。
平和憲法のもと、初めて戦地へ自衛隊を送り込もうというのである。憲法上重大な疑義をはさむ問題ゆえ、国会においては審議を十分尽くすようにと、私たちは求めてきた。
国会では与野党間で激しい言葉のやり取りもなくはなかった。しかし、論議はかみあわず一向に深まらなかった。その最大の責任は、小泉純一郎首相をはじめ政府の側にある。国の基本にかかわる問題でありながら口を開けば「対米協力」を力説するばかりで、筋道の立った説明はすっぽり抜け落ちていた。
その結果、派遣の「大義」や、憲法とのかねあい、自衛隊の任務など、当初の疑問は疑問のまま残されてしまった。こんなあやふやな法に押され危険地に赴かされる隊員はたまったものではない。
ましてや、秋の解散総選挙が有力視されているため、与党内からは、こんな話も聞こえてくる。
―もし、自衛隊員がイラクで死亡しようものなら選挙は戦えない。だから、派遣は選挙後にすべきだ―。
自衛隊員の生命というものが、政治的打算にまぶす形で、軽く論じられている。この国の政治家の「志」の低さ、あさましさを如実に示す裏話ではあるが、これでは派遣隊員の士気が高まるはずもない。
政府の国会答弁にしても誠実さを欠いていた。肝心な部分ははぐらかすばかりだった。
イラクでは大量破壊兵器がまだ見つかっていない。国際社会ではイラク戦争の「大義」はなお問われ続けている。政府が筋道を付けた対応をしようとするなら、まずその問題整理から取りかかるべきだろう。
しかし、小泉首相は「大量破壊兵器が見つからないから、なかったとは言えない。フセイン大統領が見つかっていないから、大統領はいなかったといえるのか」と再三答弁した。
そこからは、国民の疑問に真摯(しんし)に答えようという姿勢がうかがえない。同じような「小泉流韜晦(とうかい)術」は随所に見られた。
平和憲法のもとでは海外での武力行使は禁じられている。法案の審議では「戦闘地域」と「非戦闘地域」の峻別(しゅんべつ)が最大の焦点となった。
この点について、小泉首相は当初は「独自に収集した情報、諸外国などから得た情報を総合的に分析し、合理的に判断することが可能」としていた。
ところが、現地では占領米兵へのテロがやまず、ベトナム戦争の初期を思わせる事態となっている。その点を指摘されると「(非戦闘地域がどこにあるのか)私に聞かれたって分かるわけがない」と言わざるをえなかった。
イラクへの自衛隊派遣は国のありよう、憲法の根幹にかかわる問題でありながら、それを語る最高責任者の言葉はいかにも軽い。戦後積み上げてきたものが、音を立てて崩れようとしている。
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