現在地 HOME > 掲示板 > 戦争37 > 627.html ★阿修羅♪ |
|
社説
2003年07月27日
イラク特措法 自衛隊派遣には熟慮が必要だ
解散風が吹く中で26日未明、イラク復興特別措置法が成立した。民主党など4野党が内閣不信任案を提出するなど混乱の末の決着だった。
多国籍軍を自衛隊が後方支援するイラク特措法は、自衛隊に危険度の高い任務を課している。それだけに密度の濃い審議が期待されたが、政府は疑問に十分答えず、野党の追及もあと一息だった。
法案にはあいまいな点が多く、法案提出時に自民党が法案の目的から「大量破壊兵器等処理支援」を削除するドタバタがあった。
「非戦闘地域」に関する議論も堂々巡りだった。イラクでは5月1日にブッシュ米大統領が大規模な戦闘は終結したと宣言したが、その後も米兵への攻撃は連日のように続いている。終結宣言後の米兵の死者は40人を超え、戦時を含めた死者は湾岸戦争時の147人をすでに上回っている。なお緊張が高まっている。
小泉純一郎首相は「非戦闘地域」の指定について、先月25日の衆院特別委で「各国から情報収集することによって可能」と述べたが、約1カ月後の党首討論では「どこが非戦闘地域かと聞かれても、わかるわけがない」と答弁した。小泉答弁が象徴するように、特措法案の中核をなす部分についての議論は雑駁(ざっぱく)なまま終わった。
イラクの復興支援に日本が協力することに対して国民の多くが異論をはさまないだろう。支援をめぐる困難な事態に対処する能力を自衛隊が持っていることも多くの国民が知っている。
しかし、自衛隊は治安維持を任務とする米英軍とは違う。自衛隊は元フセイン派の残党と戦うために行くのではなく、あくまでイラクの復興を手助けし、進めるために行くのだ。
国会審議では野党にも責任の一端がある。民主党は、提出した対案の中から「自衛隊」を排除した。修正協議を考えれば現実的な内容でなかった。この結果、自衛隊派遣を国会の事前承認とする法案修正の機会を逃してしまったのは残念なことだ。
自衛隊という実力部隊を海外に送り出す以上、事前承認により国会の責任を明確にすべきだったのではないか。
今後の焦点は政府による基本計画の策定に移る。自衛隊の活動地域や派遣規模などを決めるが、その際には国民にわかりやすい情報を提供し、政府として説明責任を果たしてほしい。防衛庁が定める実施要項についても、十分な情報提供を望みたい。
特措法成立で自衛隊派遣の枠組みができたといっても、法の運用はあくまで慎重でなければならない。イラク人指導者らの「統治評議会」を支援する国連イラク支援団創設の動きが出ている。米英軍の後方支援ではなく、人道復興援助に軸を移す方向で検討を進めるべきだ。
情勢はまだ流動的だ。法律の枠組みの中で、自衛隊をいつどこへ派遣するかは政府に対応が任されている。事態を慎重に見極め、熟慮したうえで判断すべきだ。
(毎日新聞 07-27-00:39)
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200307/27-2.html