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月刊社会民主2003/7
緊迫する北イラク14 中川喜与志
「キルクーク帰属問題」と「難民帰還問題」で露呈する米国の綱渡り占領政策」抄
*5/28のキルクーク市長選挙に関して
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米軍占領下でのことなので、もちろん通常の「選挙」ではない。まず米軍が住民代表を募り、その中から約三〇〇人を承認し、その三〇〇人が三〇人の「市議会議員」を選出した。この「市議会」が新市長を選出した。キルクークの人口は約七三万人、クルド人、アラブ人、トゥルクメン人、アッシリア人などで構成される。米軍は四つの民族それぞれに六人の議員枠を与え、残る六人は米軍指名の独立系議員枠とした。独立系議員のうち五人はクルド人、一人はアッシリア人となった。市長候補にはクルド人、アラブ人、トゥルクメン人の三人が立ち、結果はクルド人候補が二〇票を獲得し、当選。キルクーク生まれ、
育ちの弁護士でアブドゥラフマン・ムスタファという人物だ。残る一〇票はトゥルクメン人候補が獲得した。
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新市長ポストに就いたのはイラクKDP(クルディスタン民主党)、PUK(クルディスタン愛国同盟)の支持を受けた人物で、米国は今回の「イラク戦争」に参戦協力させたクルド人勢力にメッセージを送っている。また、周辺諸国や国際社会に対しても、イラク戦後処理のモデルを提示しているのである。キルクーク油田を含めて、イラクの石油資源は(いまだ、いつ誕生するかわからない)新イラク中央政府の管理下に置く。行政単位としてのキルクークの帰属問題に関しても、クルド人たちの要求は退ける、と。イラクのクルド人勢力指導部は、開戦の一年以上前より、新生イラク共和国の国家形態を「連邦制」として、「キルクークをクルディスタン自治州の州都に」と要求してきた。この要求へのあからさまな拒絶はクルド人側からの反発を生む。そこで市長のイスといくらかの行政権限を与えるから、これで満足せよ、と。
イラク領土は保全する。中央集権国家として再建する。クルド人のイラクからの離脱は許さない。民族自決権の議論には発展させない、という意思表示。巧妙だが、同時に綱渡りの占領政策でもある。イラク内の武装解除問題がいったん議題にのぽるなら、この政策はただちに破綻する。イラク中央政府からの武力弾圧を繰り返し受けてきたクルド人たちが易々と武装解除に応ずるはずがない。
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