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イラク特措法:
「小泉安保三部作」が完成 ハト派の変節?
小泉内閣は戦後日本の安保法制に、歴史を画する足跡を刻んだ。26日未明にイラク復興特別措置法が成立。テロ対策特別措置法、有事関連3法と合わせ、たった2年間で「小泉安保三部作」を完成させた。次は海外派兵の恒久法にとりかかる方針だ。後世の歴史家は、評価の割れる構造改革より、安保政策のめざましい飛躍に政権の特徴を見出すだろう。自衛隊の武力行使には慎重なはずの小泉純一郎首相が、なぜこれほどの「軍事的リーダーシップ」を発揮することになったのか。
◆ハト派の変節?
過去の言動をたどると、首相になる前の小泉議員はタカ派ではない。むしろ「防衛問題にはとんとん無関心」(自民党幹部)で、国際貢献論議では「非軍事」にこだわった。93年、カンボジアPKO(国連平和維持活動)で日本人の文民警察官が殺傷された時、小泉郵政相は閣議で「血を流してまでとはとんでもない」と猛反発している。
10年後。イラク特措法の答弁で、小泉首相は自衛隊員が「殺される可能性、相手を殺す可能性」に言及。国会審議には血なまぐささが漂った。
変節したのだろうか。だが、周辺で小泉首相のためらいを感じ取っていた関係者は少なくない。25日の参院外交防衛委員会で、首相は「自衛隊を派遣できるということで、必ず派遣しなければならないという法案ではない」と気色ばんだ。
◆直観主義
「三部作」の完成は、小泉首相の主導というより、日本政治全体が国際情勢に押し流された結果だった。「9・11米同時多発テロ」の衝撃、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核疑惑への不安。2つの外波が世論を変え、与野党の議員心理に現実主義に根ざす危機感をかき立てた。
だが、状況に場当たりで対応するうち、自衛隊は海外での戦争に後方支援を行い(テロ特措法)、今度は他国領内で交戦状態に加わる(イラク特措法)。もはや専守防衛原則は、なし崩しで置き去りにされつつある。
小泉首相に軍事大国路線といった明確な政治意思はなかっただろう。有事3法も「備えあれば憂いなし」一辺倒で押し切った。直観主義と単純さが小泉政治の特質だ。
だが、たとえ首相にその自覚がなくても、「小泉安保三部作」は未来に重苦しい課題を背負わせる。そうした気掛かりに首相は正面から答えない。首相がもっぱら気にかけたのは米国の意向だが、それも「世界最強の国と協調していく」(25日、参院での答弁)以上の発想ではなさそうだ。
◆あいまいな憲法観
状況に流された軍事路線は、小泉首相の憲法観で最大の矛盾をさらけ出す。「三部作」から恒久法へ至る道筋は、憲法9条を棚上げ(空文化)し、解釈改憲で現実に即応して行く路線だ。
ところが、小泉首相は解釈改憲を否定し、憲法改正を主張しながら、自分の在任中は手をつけないという。社会保障制度改革での消費税率上げへの態度とそっくりだ。最も小泉首相は一昨年の自民党総裁選で、憲法観がふらついていた。
世論はイラク攻撃支持に反対し、今は自衛隊派遣にためらっている。小泉路線への審判は、後世の歴史家にゆだねるのではなく、自民党総裁選や次期総選挙での争点に位置付けられることになるかもしれない。【伊藤智永】
[毎日新聞7月26日] ( 2003-07-26-21:09 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20030727k0000m010064000c.html