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IRAQ
International Peacekeepers
Updated: July 24, 2003
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他の諸国はなぜイラクの安定化のための部隊派遣をためらっているのか。
多くの諸国、特にイラクとの戦争に反対した諸国は、戦後活動の国際的正統性を高めるような措置がとられない限り、部隊を送り込むことには乗り気ではない。これが最大の理由だろう。イラクにおける国連の役割を強化するような新しい国連安保理決議の採択の是非を問う議論がすでに始まっている。
その他にも理由はあるのか。
イラク戦争がそもそも世界で不評だったために、世界の指導者の多くは、アメリカ主導型の占領軍に参加する部隊の派遣に合意すれば、国内政治面で矢面に立たされると心配している。これも各国が部隊派遣をためらっている理由だろう。特に、イラクでの任務遂行は危険を伴うし、平和維持活動にあたる兵士に犠牲者が出ることも考えられる。このために、部隊の派遣は政治的にはますます難しい判断となる。イラク戦争前の対立を感情的にまだ引きずっている国もある。また、国連ではなく、米軍の指揮統制下に自国の部隊が置かれることを嫌がっている国もある。
新しい安保理決議に向けた交渉はどのような状況にあるのか。
コリン・パウエル米国務長官は、それによってより多くの諸国がイラクに部隊を送り込むようになるのなら、新しい安保理決議の採択も検討に値すると示唆している。報道によれば、すでにワシントンは、フランス、ドイツ、ロシアとの予備折衝に入っているようだ。だが、七月二十二日に開かれたイラクに関する安保理会合では、新決議の詳細は議論されず、いまのところ決議案の草稿はできていない。「誰かが新決議案を提出するという段階にはない。まだ議論しているところだ」とバウチャー米国務省報道官はコメントしている。
なぜブッシュ政権は、国連の関与を強化することに乗り気になったのか。
期待したようには、戦後イラクでの任務がスムーズにはいっていないからだ。このため、ブッシュ政権は、平和維持活動をめぐる国際社会との責任分担を求める軍事的、政治的圧力にさらされている。
どのような政治的圧力があるのか。
多国間協調型の平和維持活動を取りまとめられずにいるために、米議会はブッシュ政権を強く批判している。米外交問題評議会シニア・フェローで国連の専門家であるリー・フェインシュタインによれば、連日のように米兵が犠牲になっていることも政治的な負い目となっている。
どのような軍事的圧力があるのか。
イラクに展開している米軍部隊はすでに疲れ切っているし、警察・平和維持の任務をこなしていける態勢にはない。さらに、大規模な軍事プレゼンスゆえに、米軍は抵抗勢力による攻撃のターゲットとされている(こうした攻撃が他の諸国の部隊に向けられる可能性は低いかもしれない)。こうした点からも、国際社会との責任分担を求める声がある。また、戦争に反対した諸国が平和維持部隊に参加すれば、戦争前にねじれた外交関係の修復にも役立つかもしれないとみなす専門家もいる。
新安保理決議の採択に関するアメリカの条件はなにか。
ブッシュ大統領は七月二十三日の演説で、イラクの戦後活動に他の諸国がより一層の支援を行うように呼びかけたが、ワシントンはイラクでの権限を他の諸国に譲ることに乗り気ではないようにも見受けられる。
米外交問題評議会シニア・フェローのアーサー・ヘルトンによれば、「アメリカは責任とリスクを他の諸国と共有し、戦後活動をめぐる正統性を高めたいと考えているが、それでもイラク占領軍として基本的な管理権を維持したいと考えている」。しかも、ブッシュ政権内では反国連感情が強く、高官の多くは、国連により大きな役割を認めることに難色を示している。イラク戦争前の国連を舞台とする米欧対立が、双方の不信感をいまも掻き立てていると、コロンビア大学のエドワード・ラックは指摘する。
どのような国が新決議の採択を求めているのか。
フランス、ドイツ、ロシア、インド、パキスタン、ポルトガルなどだ。
インドがイラクへの部隊派遣を拒絶したことはどのような波紋を呼んでいるか。
七月十四日、インド政府は、イラクに自国の部隊を派遣するには、さらなる国連の承認が必要だと表明した。インドの決定はアメリカの官僚にとっては不快なものだった。イラクにおける十四万七千の米兵士と一万二千の英軍兵士の重荷を、一万七千人のインド兵が軽くしてくれるだろうと期待していたからだ。米英軍の兵士の一部は、戦争が開始されるはるか前からイラク周辺地域で任務にあたっている。インドが部隊派遣に応じれば、他の途上諸国もインドに続くとみる専門家もいる。
戦争を支持した諸国はすでに部隊派遣を約束しているのか。
派遣を約束している国もある。だがワシントンでは、そうした国による部隊派遣では現地の必要性を十分には満たせないという懸念が広がりつつある。米政府関係者によれば、アルバニア、ブルガリア、リトアニア、イタリア、オランダ、ポーランド、トルコ、ウクライナが、総勢二万〜三万規模の兵士を今後三カ月以内にイラクへと派遣することになっている。すでに十八カ国から総勢千人規模の兵士が、おもに非戦闘部隊として現地での活動にあたっている。
現在のアメリカのイラクでの権限を規定している安保理決議はあるのか。
国連安保理決議一四八三号では、「国際的に認知された代議政府」がイラクで組織されるまで、アメリカとイギリスが占領軍としての権限を持つことが認められている。
六月二十二日の米外交問題評議会のミーティングで、イラク統治評議会のメンバーも、この決議によって「各国がイラクの米英占領軍当局を支持するのに必要な正統性が付与されている」という認識を示した。七月二十三日の演説内容をみると、ブッシュ大統領もこうした解釈を共有しているようだ。大統領は演説で、「国連安保理決議一四八三号が示した自由で安全なイラクというビジョンを実現するために」、各国が軍事的、財政的な貢献をするようにと呼びかけた。
新決議にはどのような内容が盛り込まれることになるだろうか。
イラクの再建をめぐって国連により明確な権限が付与されるだろうが、平和維持活動に関する全面的な権限が認められることはない、とみる専門家もいる。コロンビア大学のラックが決議の内容は次のようなものになるだろうと指摘している。
・ 米主導型の占領軍に参加する部隊を派遣することを容認・奨励する(あるいは、可能性は低いが、米英占領軍とともに活動する国連軍を組織する)
・ イラク新政府の組織及びイラク経済の管理をめぐる国連の役割の拡大
・ イラクに関する国連任務の正式な承認
・ イラクの状況に関する安保理への定期報告
・ 統治評議会がイラクの自己統治に向けた組織であることの承認
新決議が採択されれば、数多くの諸国が部隊を派遣するようになるのか。
よくわからない。これまでのところ、仏独などの新決議を求めている諸国は、「決議が採択されれば間違いなく部隊を派遣する」とは約束していない。
「決議の内容がどのようなものになるか」も、各国が部隊派遣に踏み切るかどうかの大きな要因となる。米軍の指揮統制下ではなく、国連の平和維持軍として活動すべきだと主張する政府も出てくるだろうし、一方で、国連の承認を取り付けた米軍主導型の部隊への派遣でもよいと判断する政府もあるだろう。資金面での問題もある。例えば、パキスタンのムシャラフ大統領は平和維持部隊を派遣するには援助が必要だと語っている。また、部隊派遣に合意する条件として、イラク再建に伴う魅力的なインフラ整備契約へのアクセスを求めるなど、米英から妥協を取り付けようとする国も出てくるだろう。
http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/Iraq/IraqToday.htm