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核心
2003.07.26
自衛隊初、戦時下の陸上派遣へ
活動拡大 次は『恒久法』
イラクに自衛隊を派遣するためのイラク復興支援特別措置法案が二十六日、成立する運びとなり、自衛隊は活動範囲を「戦時下」の陸上まで広げる。ただ、治安の悪いイラクでの活動は、一歩間違えば武力行使と一体化し、憲法の枠をはみ出すことにもなりかねない。にもかかわらず、政府は自衛隊の海外派遣のあり方を定める恒久法の策定作業を駆け足で進めようとしており、早くも「次の一歩」に踏み出す。 (政治部・西川裕二)
■初づくし
イラク特措法案のモデルは、二〇〇一年に成立したテロ対策特別措置法。米軍などへの後方支援が柱で、目的を限定した時限立法としたことや、正当防衛や緊急避難に限定する武器使用基準などの枠組みはそっくりだ。だが、自衛隊の活動範囲だけは着実に広がっている。
大きく異なるのは、今回「戦時下」での陸上活動を初めて経験すること。テロ特措法が比較的安全な海上での補給活動が中心だったのに比べ、米兵への襲撃が相次ぐなど、治安がいまだに安定していないイラク国内での活動だ。
事実、小泉純一郎首相が答弁で、「殺される可能性はあるかもしれない。相手を殺す可能性がないとも言えない」と述べるように、危険を承知のうえでの派遣。自衛隊は初めて、危険と隣り合わせの活動を強いられることになる。
さらに、危険な状態に置かれる以上、初めて武器使用の可能性も現実味を帯びる。反撃する相手と交戦すれば、正当防衛が目的とはいえ、見た目は憲法の禁じる「武力行使」との違いはなくなる。
■有名無実
これだけ、「初」が並ぶのは、憲法上の歯止めが有名無実化している証左でもある。
自衛隊活動に関する法制度には、必ず憲法の枠がかけられている。国連平和維持活動(PKO)協力法では、紛争当事者間の停戦合意や、PKO部隊の受け入れ国を含む紛争当事者の合意などの「参加五原則」を設けた。テロ特措法では、武力行使と一体化しかねない陸上での武器・弾薬の輸送を認めなかったうえ、戦闘行為に巻き込まれる可能性の少ない海上を中心に活動している。
イラク特措法案でも、一応は活動地域について「非戦闘地域」を歯止めとして設けた。この範囲で活動する限り、武力行使と一体化することはなく、憲法の枠内で活動している証明になるとの理屈だ。
ただ、ゲリラ戦がやまないイラクでは、非戦闘地域が一転して戦闘地域になることもあり得る。そもそも、非戦闘地域自体が存在するのかどうかも疑わしい。国会審議で、非戦闘地域がどこかを問われた首相が「今、私に聞かれたって分かるわけない」と開き直ったのも、法案が米国の期待する貢献策や治安情勢などの現実とかい離しているからだ。
■便 乗
そうした中で出てきたのが、自衛隊派遣のための恒久法制定の動きだ。
政府は年内にも、恒久法の枠組みとなる国際貢献の大綱をまとめる方針。自衛隊の海外派遣のハードルをさらに下げ、法律と現実とのギャップを埋めようとの狙いがありありだ。
従来のPKO協力法を自衛隊派遣の根拠とすることが困難なケースが増加。さらに、PKO協力法には参加五原則という厳しい条件が課せられている。
福田康夫官房長官の私的懇談会「国際平和協力懇談会」が昨年十二月、国連決議で編成された多国籍軍の後方支援を可能にする新法制定を提言した。また、発生する事態ごとに法整備する特措法での対応には、与野党の批判が高まっている。
こうした「場当たり」批判に便乗し、恒久法制定によって、米国の要請に迅速に対応することを可能にしようというわけだ。
首相は恒久法制定について「イラクの実績を積んで、経験もできる」として、海外での活動実績を重ねることが必要との認識を示した。
だが、イラクでの活動の評価がどう下されるかは、実際に始まってみないと分からないだろう。恒久法制定の動きは、イラクでの活動の危険性や憲法との関係を置き去りに、自衛隊が危険な「初」の領域に踏み込むことを後押しすることにほかならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030726/mng_____kakushin000.shtml