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2003年7月21日 1:59pm PT ワシントン発――米司法省は、テロ対策の取り組みから派生した威嚇や誤認逮捕など、市民の権利と自由の侵害を訴える1000件以上の苦情申し立てのうち、34件に信憑性があるという調査報告を発表した。
21日(米国時間)に発表された報告によれば、司法省のグレン・A・ファイン監察官は、『米国パトリオット法』の取締り条項のもとで、2002年12月16日から2003年6月15日までの間に行なわれた申し立てを調査した。多くの申し立ては、イスラム教徒やアラブ系市民からのもので、拘禁中に身体的および言葉による暴力を受けたという内容だった。
その中には、「担当官から、靴磨きに使うからシャツを脱げ」と命令されたというイスラム教徒の在監者による申し立てや、9月11日の同時多発テロ事件後に米連邦捜査局(FBI)に誤認逮捕されたというエジプト人からの苦情もある。
報告は、刑務所の医師に「私が責任者なら、おまえたちを1人残らず処刑する……おまえたちみんながやった犯罪が理由だ」と言われたという連邦刑務所の収容者による申し立てが事実であることも明らかにしている。報告によれば、この医師は米連邦刑務局から口頭注意を受けたという。
入国管理局職員が拘束した人間の頭に弾丸を込めた銃を押しつけたという申し立てや、「キリスト教徒やユダヤ教徒を殺したいと思うか」と「荒っぽく」尋ねられたという話もある。
また、FBIがあるアラブ系米国人のアパートの違法捜査を行なったという申し立てもある。それによると、FBIは故意にアパートを破壊し、資産を差し押さえたあと、戻ってきて「申し立て人の家に麻薬を隠した」という。米国籍を取得したレバノン人からの申し立ては、FBIなどの連邦捜査官に、旧ソ連製の自動小銃『AK-47』があるという偽情報に基づいて自宅を捜査されたというものだ。
信憑性がある申し立ての大部分は依然として調査中だという。関係する個人名や地名については報告の中で一切明らかにされていない。
司法省の監察官は、パトリオット法の一環として、市民の権利や自由を侵害されたという申し立てを調査して定期報告しなくてはならない。パトリオット法は、2001年9月11日のテロ事件の直後に議会で承認された法律で、監視および捜査の方法に関して政府の権限を拡大するというもの。
司法省は21日、「連邦捜査官に市民の自由を侵害されたというすべての申し立ての調査に全力を注いでいる」と述べる一方で、信憑性がある申し立ては比較的わずかであるため、「大きな問題ではないことがきわめて明白だ」と付け加えた。
だが、米市民的自由連盟(ACLU)のアンソニー・ロメロ理事は、今回の報告から、同時多発テロ後の司法省による「移民の権利の侵害には、一定のパターンがある」ことがわかると述べている。
今回の発表に先立ち、ファイン監察官は6月、テロ事件後に司法省が移民法違反で762人の移民の身柄を拘束したことに非常に批判的な報告を発表している。この報告によれば、8ヵ月間にわたって拘禁されたり、しばしば虐待を受けたり、1日のうち23時間監禁されたりした収監者もいるという。
「司法省は、やりすぎだったと認めるだろうか?」と、下院司法委員会のジョン・コンヤーズ議員(ミシガン州選出、民主党)は話す。
司法省が内部調査を行なった以前の3件の申し立ては、申し立ての立証ができないことを理由に、6ヵ月の期限を過ぎる前に調査が打ち切られている。この中には、拘置中に殴られて治療を受けさせてもらえなかったという移民や、看守に食事用のトレーを顔に叩きつけらて鼻血が出たと主張する囚人もいる。
昨年12月から6月までの間に司法省監察官のもとに寄せられた新規申し立ては1073件。うち431件は、主にほかの連邦当局に関係しているため、監察官の管轄外だった。
370件は、司法省職員による不適切な行為があったとする信憑性に欠け、市民の権利や自由が侵害されたという直接的な内容を含まないもので、たとえば米中央情報局(CIA)に24時間監視されている、または電話や電子メールを傍受されていると主張する個人からの申し立てだった。
残りの272件の申し立てが監査官の管轄であると確認され、そのうち34件が信憑性があると認められ、調査対象となったと報告書は述べている。
[日本語版:矢倉美登里/高森郁哉]
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030723203.html