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近づく朝鮮半島統一のシナリオ
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投稿者 N.H. 日時 2003 年 7 月 23 日 18:55:10:

近づく朝鮮半島統一のシナリオ

北朝鮮がプルトニウムを抽出確保し、起爆装置の実験を繰り返し、核弾頭などを製造する態勢に入ったという。世界では徐々に北朝鮮に対する危機意識が拡大してきており、アメリカの先制攻撃さえ噂されている。そういう時期に、わざわざさらに自らを窮地に追いやるかのように矢継ぎ早な北朝鮮の強気の姿勢の意味は何か。

おそらくこれは大方の予想とは反対に、北主導による朝鮮半島統一の日程を急ぎ始めたものと思われる。北朝鮮の外交は常にスケジュールに従って行われる。場当たり的に危険な綱渡り、暴走、瀬戸際外交を繰り返していると見られているが、これは間違っている。最も冷徹に日刻みの日程を押し詰めていっているはずである。またその時々の世界、特に米国の動きを機敏に捉えて、そのスケジュールに組み込んだ対応策を打ち出してゆく。

今にいたって世界のみならず北朝鮮自身をも危機状態に追い詰めてゆく真意は、その真意を疑わせることにある。ブラフの真骨頂は、本気だと思わせるところにある。自らをも危険な領域にまで押し出さねば、これは成功しないわけである。また危険だと思わせるだけでは、危険を回避できない。相当に手ごわいと強く印象付けて初めて譲歩を引き出すことが出来る。

これが瀬戸際外交といわれるゆえんではあるが、その裏打ちには戦争の覚悟がなければならない。いざとなれば,民族の存亡をかけてもやるという覚悟である。日本のように、いざとなれば逃げ出すことが分かっていては勝負にならない。その結果はどうなるか。このまま間断をおかずに危機を押し詰めてゆけば、おそらく戦争とはならず、南北統一にまで一気に加速することになると思われる。相当な危機が醸成されなければ、そこまで劇的な展開は得られないであろう。

北朝鮮は核配備をとうの昔に終えているかもしれないし、また核以上のものを保有しているとも伝えられている。しかし外交上これまで公式に核保有を明言したことは一度も無い。またすでにNPT(核拡散防止条約)脱退宣言をして国際法の縛りを免れている。さらにご丁寧に、使用済み核燃料棒の再処理完了を米国に通告してもいる。

もしこれから核弾頭を製造するということであれば、核凍結もこれまで約束どおり遵守していたことになり、欺瞞との批判は受けても、明白な不法性を問うことは出来ない。日韓に対する非道にはそ知らぬ顔をしても、アメリカに対しては一指も染めることはない。米朝合意の遵守においては、逐一生真面目に通告(報告?)して慎重に痕跡を残している。

したがって自国は国際法、米朝合意に違反しておらず、アメリカのKEDO離脱、重油援助停止、軽水炉建設の遅延等の米朝合意違反の非を鳴らして、やむを得ぬ対抗措置としての自衛行為として、一点の非もない自己の正当性を主張することができる。すべては場当たり的なアメリカの合意違反、不当な言動に責任があるとボールを投げることが出来る。

先にアメリカから北朝鮮が核保有を認めたと報道されたが、これも一種の伝聞に過ぎなかった。そのような重大な下手を打つことなどあり得なかった。このような経緯は、おそらくアメリカは十分に承知しており、世界に向かっては北朝鮮の陰険なる無法国家としての悪逆を吹聴できても、当事者たる北朝鮮との交渉の場においては、一言の非を指摘することも出来ない状態であろう。

つまりアメリカには交渉の手駒が無く、ただ核の脅威を声高に宣伝し各国の同調を非難の束とするしかない。欧米の論理による現代世界は,自己の正当性の大義名分が無ければ武力攻撃など出来ない。今頃になってイラク攻撃の大義名分の虚偽が問題となっているなど、欧米人の自縄自縛である。自ら無法国家として認めることなど出来ないからである。

今武力行使するとすれば、核の脅威、大量破壊兵器の危険性、悪の体制を非難して攻撃するしかない。これがアメリカの正当性である。国内体制の行き詰まりとその惨状、拉致問題などは別として、北朝鮮の論理は一貫して自国防衛と祖国統一だけである。これ以外にはない。アメリカは宣伝においては勝てても、論理においては勝てない。

北朝鮮のスケジュールは速すぎてアメリカは付いてゆけず、付いてゆくことによってかえって自国を追い詰めてしまうことになりかねない。アメリカは太平洋地域の軍備再配置を急ピッチで進めつつあるが、これにはまだ時間がかかる。極東情勢の展開には間に合わないのである。おそらくアメリカは北朝鮮の矢継ぎ早な危機醸成に困っているはずである。

ここに至るまでに北朝鮮は着々と一連の順序だった不可解な手を打ってきた。火のあるところにさらに煙を立て、自らを危険な領域に追い詰めてきた。このまま情勢が煮詰まってゆけば、アメリカは武力攻撃が唯一の選択肢という所に自らを追い込んでゆくことになるであろう。これが北朝鮮の狙いである。なぜならば、北朝鮮にとっていまだ真の危機は迫っていないからである。

北朝鮮にとっての真の危機は、米軍の韓国撤退から始まる。この兆候が見られるが故の北朝鮮のスケジュールの繰り上げであろう。日韓における米軍駐留が、危機の抑止力である。米軍の韓国からの撤退は、韓国の危機ではなく北朝鮮の危機である。北朝鮮は、ここに先手を打ってきたのである。

もとより北朝鮮の南進、米朝対決の危険性は常に存在する。もし戦争をすれば、米国の敗北である。そして北朝鮮の滅亡である。北朝鮮にとって戦争の機会は一度だけ、それも短期だけである。戦闘に勝っても、自国の滅亡は免れない。アメリカは最終的には大量報復力によって北朝鮮を崩壊させることは出来ても、軍事上においても国家そのものにも壊滅的な打撃をこうむる事になる。そのような道を選択することは出来るはずもない。イラクとの奇妙な戦争とは様相がまるで異なる。

アメリカは唯一の選択肢とも言える武力攻撃を選択することが出来ないのである。米軍の中枢部はこのことを十分に承知している。北朝鮮も当然知っている。アメリカは引くに引けないジレンマに、この数十年間悩んできたのである。つまり米朝双方にとって戦争は絶対にしてはならないものなのである。おそらく宥和政策しか取るべき道は無いであろう。ただアメリカは最後の最後まで、戦争が勃発する可能性を声高に叫び続けるはずであるが。

また近来韓国内に瀰漫してきている、同民族に対する攻撃の不可なる論調は、あまりに安易と言わざるを得ない。北から南を見れば、韓国民は脱北者と大差のない一段の劣等同胞に過ぎないのであって、これを排除抹殺するに躊躇するはずもない。

しかし北朝鮮にその備えはあるものの、その第一義的な狙いは、戦わずして敵を制して統一を成し遂げることにある。ブラフはブラフであって、たとえ一万回のブラフがあろうとも、一回の実戦ともなることは無いのである。そのためにこそ日韓との間に軋轢小競り合いはあっても、米軍には一発の手出しもせず、ギリギリの鍔ぜり合いを演じてきているのである。

日本と韓国の出方は、米朝の動向次第である。嫌も応もない。その意向は一顧だにされることはない。したがって北朝鮮のスケジュール表には載っていない。適当にあしらって、暗示的なメッセージを送って、脅し、なだめ、むしり取り続けるだけである。いいようにあしらわれた方は憤りと敵愾心を内に抱くが、その対抗策も後ろ盾の意向次第で腰砕けとなる。ただ今は詰めの手のときであり、不要の軋轢を避けて鞭を手控えているに過ぎない。

おそらくこの後、一連の経緯は窺い知れず道程は秘められたままに、世界の思惑とは逆に、米国の仲立ちによる北朝鮮主導の南北統一が意想外に早く実現するものと思われる。その際に定められる双方に対する条件こそが眼目である。そのとき韓国内の異論は消え去るはずである。なぜならば民族の正統性に関する論理において、韓国は北朝鮮に忸怩たる思いを抱いており、これに対抗することは出来ないはずだからである。

現在喧伝されている、日本に対する北朝鮮の脅威などは、米軍あればこその危険であり、米軍が動かなければ危機は起こらない。北朝鮮の思惑に乗せられているだけのことである。日本に対する朝鮮の脅威は、実に南北統一が成ったときから始まるのである。それまでは標的は米国であり、それからは標的は日本になるのである。

歴史上、朝鮮半島が外部の圧力を離れてひとり立ちをしたことはほとんど無かった。常に是々非々の態度を取りつつ独立の道を探るしかなかった。しかも民族の神話は、韓民族をして一弱小国として付和雷同の地位に安住することをも許してはいない。

常に高い自尊心と相対的な独自性の発揮というジレンマに身悶えし続けるところに韓民族の「恨(ハン)」の鬱屈が存するのである。したがって南北統一が民族の悲願なのではなく、そこから始まる一大強盛国としての朝鮮、高麗あるいは大韓国の実現こそが、その真の悲願なのである。実に奇矯なる大国志向、相対的な独自の文化の宣揚が民族の潜在的な未来図として存するのである。

世界の最果ての島に流れ集い、外界を傍観して、絶対の独自性の神話を抱懐して歴史を形作ってきた日本との相違はここにある。大陸の外れの半島に位置し、そこにとどまり蟠居した単一民族としての究極の願望である。これは北朝鮮韓国に共通するものであり、この願望の下では本来南北の別は無く、この旗のもとに糾合することにおいては、他の諸条件は閑却されるはずのものである。

韓民族の鬱屈は常に存し、その時々にその愛憎の対象を変える。今日の敵米国に対する愛憎は、来るべき時の盟主に対するものに豹変する。なぜならば本来その愛憎の砲口は、かっての宗主国たる日本中国に向けられるべきものだからである。近い将来の転回であろう。アメリカはあくまで仮初めの敵であり、仮初めの主に過ぎないからである。

北朝鮮とは現代における異質の国である。北朝鮮とは韓民族の神話を背景にし、千年の怨念を内包して巍々たる山塊をなす国家である。善悪を論ずる以前に、このような実体を知らなければその不可解な言動を理解することは出来ない。また東海の渺たる小国が世界の大国に50年にわたって対峙し続けうる理由がわからない。

独裁強圧政治のゆえに、遠からず内部崩壊を免れないと単純に断ずるのは誤りである。他の個人独裁国家と同類として捉えるべきではない。国民を塗炭の苦しみに陥れ、腐敗が浸透し、経済が行き詰まっているからといって直ちに瓦解に結びつくわけではない。決して武力の強大さと強権のみによってこの体制を支え、外に向かって牙をむいているわけではないのである。

もとよりアメリカに対抗し得る国ではなく、アメリカの覇権の喉に刺さった棘である。不思議なことに、今日世界に一極支配の戦略を強硬に推し進めるアメリカにこの棘を抜くすべがないのである。ロシアは戦不戦ともに容喙することはないが、情勢の変化をうかがいつつ、側面から北朝鮮を支援するであろう。中国はアメリカの存在を厭いつつも、最も統一朝鮮の誕生を恐れている。現状の維持を望んでいるが、その向背は土壇場のときまで不明のままであろう。また北朝鮮は中国との同盟関係を国家存亡の絶対必須要件とは考えていない。

さらに統一朝鮮は、一転して調停者としての同盟的な米軍の駐留継続を望むであろう。もし明哲な戦略眼があれば、朝鮮半島の歴史上、地理上の宿命的条件からして当然の選択であろう。とすればアメリカは朝鮮半島から逃れることは出来ない。現在策定されつつあるアメリカの極東軍備再配置には、朝鮮半島からの撤退が視野に入っているはずである。しかし統一朝鮮がこれを許さないであろう。

これが近い将来に朝鮮半島にありうべきシナリオであるが、すべての情勢の変化は当事国の人間の採用する戦略によって決する。統一不統一いずれの場合でも、もし米軍が撤退した場合には、日本の再軍備は論議なく必然のものとなるであろう。なし崩し的な再軍備が最も危うい推移である。

日本と朝鮮とは本来敵対すべきではなく、日本にとっては朝鮮(韓国でも北朝鮮でもなく)こそがアジアで唯一提携すべき国なのである。これは朝鮮も同じである。しかし歴史と虚構が作り出す情勢がその融和を阻み、最も敵愾心を燃やす間柄という現実である。

日本が担うべきなのは、米軍の肩代わりなどではない。日本は歴史上、過去現在にわたり朝鮮との連携以外にその存立の基盤とすべきものはないのである。日本と朝鮮との過去の不幸な歴史とは、過去の軋轢のことではなく、本来提携すべき間柄が逆に最も敵対してしまっているというところにある。しかしこれは日本が独立外交を鮮明にし、両国間にわだかまる淀みを明快に一閃することによって、未来の展望を拓くことができる。

歴史を遡って正すことは出来ないが、上策を同盟、中策を占領、下策を併合とすれば、今のときこそ上策を取るべきである。明治において二流の戦略を描き、昭和において無恥の戦略を受け入れ、いまさらに無力の戦略に流されてはならない。日本は一つには千年来の蛸壺から出て、二つには敗戦のくびきを捨てなければならない。この二つの過程を得なければ、日本の内外に山積するしがらみを一掃すべくもない。しかし現在のところ、それ以上の希望的シナリオを仮定することは無意味であろう。        03・7・23

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