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社説
07月23日付
■自衛隊派遣――イラク新政権を待とう
政府が週内の成立をめざすイラク特措法案について、民主党が廃案を求めることを決めた。法案は成立させるが派遣は先送りを、という議論も与党内に広がる。
本紙の世論調査では、自衛隊派遣に賛成する意見が先月の46%から33%に下がり、逆に反対は43%から55%に急増した。
イラクにいま自衛隊を派遣することについて、国民的な合意ができる状況はますます遠くなった。法案をいったん廃案にして、イラクの復興支援策を練り直すよう、小泉首相に改めて求めたい。
こんなことになった理由は明らかだ。
第1に、現状認識の無理である。イラクはまだ戦争状態だ。米軍へのゲリラ攻撃がやまず、治安回復のめども立たない。「非戦闘地域」の理屈は通りにくい。
世論調査でも、反対の一番の理由は「危険」だ。国連平和維持活動についての過去の調査では、派遣賛成がほぼ7割に達したこともある。それと全く異なるイラク派遣に、国民の理解は得られていない。
第2に、戦争の正当性の乏しさが露呈したことだ。大量破壊兵器は見つからず、故意に脅威が誇張された疑いが強まり、米英首脳への信認は大きく揺らいでいる。
戦争の結果である占領の手助けに、小泉首相は自衛隊を送ろうとしている。ところが、米軍のニーズと日本側の希望がすれ違い、なぜ自衛隊でなければならないかが、よく分からない。占領政策への加担は復興支援どころか、イラク民衆の反感を買う恐れさえある。これが第3の理由だ。
首相は日米同盟の重視を言う。だが、戦争の正当性や支援の判断は、日本自身がもっと主体的になすべきことである。
日本はイラク再建に協力しなければならない。問題は誰のために、いつ、どういう協力をするかだ。
イラクの民衆のためという大原則に異論はなかろう。それには、イラク人自身による統治と、それを国際社会全体が支える仕組みができたときに支援を本格化させるのが有効だし、正当性もある。
一つの手がかりが、アナン国連事務総長が安保理に出した報告だ。米軍への襲撃などの背景に占領への不満があることから、イラクの主権回復への道筋を明示するよう、米英などに促したものだ。
米英の後押しでできたイラク統治評議会の先行きはなお不透明だ。国連と米英の協議も難航するだろう。だが、イラクの統治を長期的にどうするかという問題は、いずれ国連の場に戻らざるを得まい。
イラク人の政権の要請に基づく支援なら、任務も明確で範囲も広がる。政権の要請で国連安保理が国際部隊の派遣を決めるなら、自衛隊派遣の是非が改めて検討されるべきだろう。それまでの間は現行法制でできる支援に積極的に取り組むことだ。
自衛隊の派遣は国民が納得し、イラク民衆からも歓迎されなければならない。
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