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イラン油田開発:米との同盟か国益か 板挟みの政府
日本が自主開発の「日の丸油田」を目指すイラン・アザデガン油田開発計画が揺れている。イランの核開発疑惑を非難し契約の再考を迫る米国との「同盟関係」を重視するか、エネルギー小国として資源確保を優先するかという二つの「国益」の板ばさみにあっているためだ。日本政府はイランに核疑惑の解明を促す一方で、開発交渉を継続させる「2正面作戦」を描いているが、打開の道筋は見えない。【白戸圭一、藤好陽太郎】
◆アキレス腱
「日本では油田の話が大きく報道されているが我々は静かな環境で協議をしたかった」
今月12日、テヘランで開かれた日本とイランの軍縮不拡散協議。イラン側は唐突にアザデガン油田の話を持ち出した。日本側は「軍縮と油田の話は別」と受け流したが、日本のアキレス腱に触れたものだった。
「核開発とテロ支援は許さない」とするブッシュ米政権はイラク戦争後の「標的」をイランに定め、核開発疑惑に神経をとがらせる。イランの油田開発に日本が巨額な投資をするのは容認できないとの姿勢で、米政府関係者から非公式に開発計画への強い懸念が伝えられてきている。
これに対し、日本政府は「核疑惑解消と油田開発両方を追求する」のが基本方針だ。油田開発を放棄すれば米国追随との批判は免れず、かといって油田開発に突き進めば日米関係への影響は避けられない。双方の折り合いをつける方法を探ろうというものだが、米国の圧力に抗しきれるかどうかは不透明だ。
◆狙い不発
日本は戦前から皇室と旧イラン王室が親交を持ち、現在は最大の政府開発援助(ODA)供与国でもある。「パイプを持たない米国とは違ってイランとは外交ができる」(外務省幹部)という自負もあった。イランとの軍縮協議を2年9カ月ぶりに再開させ、抜き打ち査察を認める国際原子力機関(IAEA)追加議定書への署名を求めたのも「日本への批判をかわし、油田開発を結実させる」(同省筋)というシナリオだった。
しかし、軍縮協議でイランは議定書署名に「前向きに検討する」という姿勢を示したものの、時期など具体的な回答は示さず、日本側の狙いは不発に終わった。
ある外務省幹部は「追加議定書署名は核兵器開発断念と同じだ。イランは高く売りつけるだろう。日本だけで事態を動かせるわけではない」と限界を指摘する。
◆したたか
アザデガン油田開発の交渉に当たる政府系石油開発会社の国際石油開発とトーメンの首脳や経済産業省幹部は、このほどイラン入りし、大詰めの交渉に入った。
同油田はイラク国境に近く地雷源があるなど開発環境は厳しい。だが、推定埋蔵量は260億バレルで中東最大級。日本はサウジアラビアのカフジ油田の権益失効以降、国際石油開発と経産省が一体となってイランに開発を働きかけ、00年11月のハタミ大統領来日の際、優先交渉権獲得にこぎつけた。いわば悲願の自主開発油田である。
契約は、一定期間の開発・操業を海外企業に請け負わせ、対価を原油で支払うという内容。日本への支払い額を抑えたいイランは開発費用を値切っており、交渉が成立するかどうか、ギリギリの段階だという。
イランのしたたかさは価格交渉に限らない。ザンギャネ石油相は13日、日本との交渉が妥結に向かっていると発言する一方で、中国やロシアにも開発参入の可能性があることを示唆した。「日本が撤退しても代わりはある」(経産省幹部)という意思表示だ。
「米国の強圧で日本があっさり中止したら、中東全体の日本に対する目も厳しくなる」(畑中美樹・国際開発センターエネルギー室長)という声もあるが、日本政府はイランの核開発疑惑への対応で米国と一定の足並みをそろえる必要もあり、難しい決断を迫られることになりそうだ。
◇イランの石油
イランの原油の可採埋蔵量は世界4位の746億バレルで、3位のイラクとほぼ同量。アザデガン油田は推定埋蔵量260億バレル(可採埋蔵量は3割程度)で中東最大級だ。イランの輸出先(01年)は日本が日量53万バレルでトップ、2位韓国(22万バレル)▽3位中国(21万バレル)▽4位イタリア(21万バレル)となっているが、中国が前年比で約5割増と急激な増加を示している。
[毎日新聞7月21日] ( 2003-07-21-19:18 )