現在地 HOME > 掲示板 > 戦争36 > 812.html ★阿修羅♪ |
|
アメリカの言う「解放」の現実。
http://www.aljazeerah.info/News%20Photos/2003%20News%20photos/Today's%20News%20Photos.htm
"LIBERATED"
Nine-year-old Iraqi Ashwaq (L) smokes a cigarette as her friend Omar, 12, sniffs
glue June 27, close to Fardous or Paradise Square in Baghdad. The children,
orphans, spend nearly all the money they beg on solvents to sniff. According to
the UN Children's Fund (UNICEF), the number of children living in the streets of
Baghdad has increased since the US-led war that toppled the regime of Saddam
Hussein in April. UNICEF is preparing a study to assess the magnitude of the
problem, which did not exist before (AFPphoto, Jordan Times, 7/10/03).
アメリカの言う「解放」の現実。
イラクの少女、9歳のアシュワクがタバコを吸っている。その傍らでは、
アシュワクの友達、12歳のオマールがシンナーを吸っている。6月27
日、バグダッドのファルダス(パラダイス広場)にて。
多くの子供たちや、孤児たちは、シンナー溶剤のために物乞いした金を使
い果たしてしまっている。
国連のユニセフによれば、バグダッドのストリート・チルドレンは、サダ
ム政権を倒した4月の米国イラク戦争以来増加し続けている。
ユニセフは、事の重大性を調査するため準備中である。このようなことは、
かつてイラクでは無かったことだ。
イラクは本当に「ならず者国家」だったか?
参考資料
********************************************************************************
「日本アラブ通信」主宰 阿部政雄さん
http://www.kikanshi.co.jp/prior/syuppan/m-abe/m-abe.htm
------------------------------------------------------------------
「悪の枢軸」「ならず者国家」とアメリカの激しい攻撃にさらされるイ
ラク。私たち日本人は、あまり実情を知りません。アラブと日本の友好を
めざすホームページ「日本アラブ通信」を主宰している中東問題研究家、
元東海大学講師の阿部政雄さんは、アラブ諸国を50回近く、イラクだけで
も14回も訪問して現地の実情に詳しい方。イラクという国の素顔を語って
いただきました。
女性が明るいイラク社会
―もっとも最近、イラクに行かれたのはいつですか。
阿部 2002年11月初旬にイラクの首都バグダッドで開かれた国際見本
市を見に行きました。ドイツ、イタリア、中国など世界46カ国が参加
して、なかなかの盛況でした。しかし、日本はオブザーバーとして政
府と貿易振興会の代表が顔を出しただけでした。国連の大量破壊兵器
査察が始まる前でしたが、不思議なほど明るい平和的な雰囲気で、女
性や子どもを含む大勢のイラク市民が見本市を見にきていて、「戦争
前夜」という感じではなかったですね。
写真を見ていただければわかるように、イスラム社会一般と違って
イラクの女性たちは顔をかぶりもので隠すこともなく、たいへん活発
に生活しています。美人が多いでしょう(笑い)。
―女性が明るく、元気なのはなぜ?
阿部 イラクは政治と宗教の分離が徹底していて、信仰や戒律は個人の自
由に委ねられており、政治によって強制されません。イラクのサダム
・フセイン大統領は、自分はイスラム教徒ですが、自分の著書で「女
性は人口の半分を占める重要な存在。教育でも社会参加でも差別され
てはならない」と書いていて女性の地位の確立に熱心なんですよ。そ
の政策の反映だと思います。
「独裁者」の虚像と実像
―フセイン大統領は、ヒトラーやスターリンのような独裁者と言われ
ますが。
阿部 イラクは反イスラエルだから反ユダヤ、反ユダヤだからヒトラーや
スターリンみたいな独裁者と思われがちです。1979年に政権につ
いたフセイン大統領とそれを支えるバース党は、女性の解放に熱心な
ことにも現れているように、なかなか近代的な政治理念を持つ政党で
す。イラクはイギリスの植民地から第2次世界大戦後に独立したわけ
ですが、イラクの伝統社会は少数民族クルド人やキリスト教徒も抱え
ている一方で、血縁や地縁でつながる部族、氏族の社会集団が林立し
て、なかなか国家としてまとまりにくい。国家の統一を守りながら、
イラクの近代化を進めようとすると、いろいろ複雑な調整が必要です
し、時には強権を発動せざるを得ないこともある。外国の干渉にも気
をつけないといけない。まず軍隊を掌握してシビリアン・コントロー
ルを確立し、石油収入を基盤とする国民経済を管理する必要がありま
す。そこから「独裁」というイメージが生まれやすい面もあるでしょ
う。
―1党独裁、メディア規制などもやり玉に上がっていますね。
阿部 バース党のバースはアラブ語で「復興」という意味です。アラブの
伝統、6000年前のチグリス・ユーフラテス河のほとりで生まれた
イラク文明の伝統を復興させながら、統一国家として近代化を進めよ
うとしているのがバース党です。イラク近代化をめざす勢力がバース
党に集中し、対抗できる政党が生まれていないことは事実ですが、最
近では複数政党制をめざす動きもあるし、メディア規制の緩和の兆し
もある。イラク内部にはフセイン大統領が嫌いな人々もいるし、亡命
者もいる。しかし、一方でフセイン大統領を信任するかしないかの国
民投票をすると、ほとんど100%の信任票が出ます。今のイラクは
国難と言える状況にあるが、その中で国民が一致団結するとなると、
フセイン大統領とバース党に結集するしかない。
イラク関与の2つの戦争
―イラクが「悪の枢軸」と呼ばれるようになったのはクウェート侵攻です
ね。
阿部 イラクの側には、クウェートはもともとイラクの領土だったという
思いがある。欧米諸国がイラクから港を奪う思惑でクウェートを独立
させた経緯があるんです。1990年8月にイラクがクウェートに侵
攻したのは、当時の石油価格の低落を防ぐためにイラクを含むOPEC
(石油輸出国機構)諸国が原油の生産調整を求めたのに対して、クウェ
ートが応じず、OPECの割当量を大幅に越える原油を増産したことも1
つの理由ですがアメリカが挑発した面もある。侵攻前にアメリカの女
性大使が「アメリカは、アラブの国々の話合いに干渉はしない」と発
言したりしています。イラク軍のクウェート国境集結も軍事衛星でつ
かんでおきながらあえて侵攻させて米英軍が徹底的に叩いた。侵攻に
対する懲罰として経済制裁を加える一方、イラク上空にイラク軍機の
「飛行禁止区域」を設けて米英軍機が監視のためと称して自由に飛行
し、地上から攻撃されたといって頻繁に爆撃もしています。
―クウェート侵攻前にイラクはイランとも8年間も戦争しましたが。
阿部 イラクはイランのホメイニ革命によって生まれたイスラム原理主義
的な政権の方向に危機感を持った。自分たちが進める政教分離・近代
化路線を否定する国内勢力がイランと結んで政権転覆を狙うのではな
いかと疑ったわけですね。宗教上ではイランはイスラム教シーア派が
多数で、イラクにとっては国内にいるシーア派がイランと結びつくこ
とを恐れた。当時のイランは公然と「イスラム革命の輸出」を言って
いましたから。それが1980年から8年間続いたイラク・イラン戦
争の背景です。しかし、イラクのシーア派もイラク人であることはイ
ランも見落としていました。アメリカはホメイニ革命以前のイランに
対しては、親米的なパーレビー国王を使って「中東の憲兵」役をやら
せていた。ところが反米を掲げるホメイニ革命以後に起きたイラン・
イラク戦争ではイラク支援に回る。イラク政権を支持したわけではな
く、実は両国を戦わせて、ともに自滅させたかった。キッシンジャー
元米国務長官が言っています。「できるだけ長く戦わせて、両方とも
滅びてくれた方がいい」とね。とにかく欧米の列強は宗教的対立に目
をつけ、煽り立てて宗教を政治利用しようとしてきたのです。
なぜアメリカは憎む?
―アメリカはなぜ、イラクをあれほどまでに憎むのでしょう?
阿部 イラクは他のアラブ産油国と違って国有化した石油収入、いわゆる
オイルマネーを投資や貯蓄の形で欧米諸国に還元しないのですよ。自
国の民生や社会のインフラ建設に注ぎ込んでいる。そのため、イラク
では教育や医療が無料化されている。アラブ諸国ではもっとも進んだ
社会保障制度を持っているんです。これがアメリカにとっては面白く
ないんですよ。イギリスやアメリカには、もともとアラブの石油は自
分たちのものだという利己的な考えがある。おれたちが開発投資した
石油だ、勝手にはさせないと思っている。アラブ諸国がみんなイラク
に習ってしまったら困るんですね。かつて、ユダヤ人のシオニズムを
利用してむりやりイスラエルを建国し、パレスチナ難民を生み出した
のも、中東の油田地帯にくさびを打ち込むためです。今はイラクの現
政権を倒して親米的な政権をつくりたい。それが中東にイスラエルに
次ぐ新たなくさびを打ち込むことになり、産油国支配に都合がよくな
るんです。米英の戦略のキーワードは常に「分割して支配せよ」です。
―イラクとオサマ・ビンラディンやアルカイダとの関係は?
阿部 イラクの政治路線は、繰り返し申しましたようにイスラム原理主義
的な路線とは一線を画しています。オサマ・ビンラディンやアルカイ
ダとは違うのですよ。「テロ支援国家」などと言われるが、その証拠
は見つかっていません。ついでに言うと、イラクが国内のクルド族弾
圧に毒ガスを使ったというのも、おぞましい写真付きでよく報道され
ますが、国連が調査した公式文書では確認されていません。イラクが
開発したとされているのはマスタード系の毒ガスですが、クルド人に
使われたのはシアン系毒ガスだという説もあり、実態がよくわからな
い。マスメディアはアメリカ側の情報を鵜呑みにしないで、よく調べ
てほしいと思っています。最後に一言、アメリカは今、何とか日本を
対イラク戦争に動員しようとしていますが、これは日本をアラブ・中
東諸国に「手の汚れた国」として印象づけ、非友好国として締め出さ
れるように仕向けていることを忘れてはなりません。
――イラクをめぐる情勢を読み解く鍵が見えてきました。ありがとうござ
いました。
------------------------------------------------------------------
<主な著書>
『アラブパワーは世界を動かす』『アラブ案内』『アラブ世界ーその魅力
を探る』『パレスチナ問題』『高校用視聴覚教材ーアラブ世界』。『エジ
プト百一夜』を現在執筆中