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劣化ウラン弾:米政府に使用停止要求 民間シンクタンク
【ワシントン河野俊史】米国の民間シンクタンク「核政策研究所」(ワシントン)は8日、劣化ウラン弾が人体に及ぼす影響を検証した報告書「劣化ウラン弾――危険評価の科学的論拠」を公表した。湾岸戦争(1991年)以降の政府機関による研究や動物実験のデータの分析をもとに、「イオン化したウラン酸化物による突然変異の誘発など、住民や兵士、とりわけ子供にとって有害なことが確認された」と結論づけ、米政府に対して速やかな使用停止を求めている。
報告書の作成には同研究所の理事長でもあるヘレン・カルディコット博士やトーマス・ファシー・マウントサイナイ医科大教授(病理学)ら専門家が加わった。
報告書は、湾岸戦争の際に劣化ウラン弾が大量に使用されたとされるイラク南部のバスラでの15歳以下の子供の悪性腫瘍発生率が1990年から2001年の間に3倍に増加した、などのデータを確認。これが劣化ウラン弾の影響を受けたものかどうかを科学的視点から追跡した。
その結果、吸引で体内に入り込んだ三酸化ウランの微小粒子はほぼ全量が肺などに蓄積するのをはじめ、経口の場合も10%程度が腎臓や骨格、その他の臓器に残留。アルファ線などの影響で遺伝子に不安定な状態をもたらすことが確認されたという。特に、イオン化したウラン酸化物(ウラニル・イオン)は突然変異の誘発性が強く、がんやDNAの損傷による先天異常を引き起こす要因になる、としている。
報告書は、米軍放射線生物学研究所と国立衛生研究所(NIH)のマウスを使った共同研究のデータなどを参考に、「ウラニル・イオンは母親の胎盤によっても阻止できない」と危険性を指摘するとともに、米政府は劣化ウラン弾の人体への影響を過小評価していると警告している。
この上で、報告書は米政府に対し、(1)速やかに劣化ウラン弾の生産・使用を停止し、タングステンの利用など代替策を検討する(2)今回のイラク戦争で劣化ウラン弾が使用された地域の住民や兵士の尿のサンプルを採取し、調査する(3)イラク国内での被害の拡大を防ぐため、占領当局は放置された戦車などへの住民の接触を避ける措置を即急に講じる――などを勧告している。
[毎日新聞7月9日] ( 2003-07-09-12:41 )
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20030709k0000e030078000c.html