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フセイン政権崩壊3か月、「米軍襲撃」国造りに影 [読売新聞]
http://www.asyura.com/0306/war36/msg/626.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 7 月 07 日 15:13:38:


 イラクのフセイン政権が米英軍の手で倒されて9日で3か月。長年の圧政から解放された国民は、政治活動を活発化させるなど自由を謳歌(おうか)している。だが、新生イラクの姿がなかなか見えない上、治安回復も進まず、国民は次第に不満を募らせている。イラクを占領統治する連合国暫定当局(CPA)にとっては、早急な治安回復と暫定行政機構の設立が急務だ。(バグダッド 平野 真一、鶴原 徹也)

 ◆軍事

 フセイン政権崩壊直後、全国に広がった公共施設などに対する略奪はほぼやんだ。だが、米軍襲撃事件が連日のように発生。ブッシュ米大統領が5月1日に「主要な戦闘の終結」を宣言して以来、米兵の死者は22人に達した。住民が銃撃戦に巻き込まれるなど、市民生活にも大きな支障が出ている。

 襲撃事件のほとんどは、バグダッドからフセイン大統領の故郷ティクリートに至るチグリス川沿いと、首都の西方ユーフラテス川沿いを結ぶ、半径約150キロの地域に集中。スンニ派イスラム教徒の多い、通称「スンニ派三角地帯」だ。シーア派教徒の住むイラク南部の事件が散発的なのに対し、スンニ派地区では組織的、計画的なものが目立ち、米軍の立ち入りにくいモスク(イスラム教礼拝所)を出撃基地や爆弾製造所にするなど手口も悪質化している。

 米軍は襲撃の実行グループを、〈1〉フセイン政権残党〈2〉イスラム勢力〈3〉犯罪者と見なし、6月9日以来、この地域に狙いを絞って3波にわたる掃討作戦を展開、計800人以上を拘束した。だが、イラク国民の間では、米国が早急にイラク人による直接統治を実現させない限り、襲撃事件はさらに増加するとの見方も強い。

 作戦対象地域の1つとなった首都北方約100キロのサーマッラーのモスクでは4日の金曜礼拝で、説教師アハマド・ファーデル師が「米国は異教徒の占領者だ。占領者を追い出すのはイスラム教徒の義務だ」と聖戦を訴えた。さらに、イスラム慈善協会のハリル・ハマド広報担当は、「政権崩壊後に市内から逃亡していた旧支配政党バース党の活動家が戻り、米軍襲撃を計画している」と証言する。

 米国は、「フセイン大統領を逮捕できないことが政権残党を勢いづかせている」(連合国暫定当局筋)と見ている。その行方は依然ナゾだ。

 先月米軍に逮捕された大統領の個人秘書アブド・ハムード氏が「大統領はティクリートにいる」と自供したと報じられた。だが、政権崩壊後、亡命先の英国から帰国した元イラク情報機関局長ワフィーク・サーマッラーイ氏は本紙のインタビューに対し、独自に得た情報として「大統領はバグダッド・サーマッラー間のチグリス川沿い農業地帯を転々としている」と証言、食い違いを見せている。

 ◆政治

 イラクの「占領後」を見据えた政治プロセスは、イラク人に“国政”への一定の関与を認める暫定機構「統治評議会」が今月中旬に設立されるめどが立ったことで、ようやく一歩を踏み出す。ただ、「憲法制定協議会メンバー選出→憲法制定→総選挙実施」という、連合国暫定当局が想定する国造りの日程表は、定まっていない。

 統治評議会は、12の主要政党代表と14人の個別代表で構成されることが濃厚。占領支配下で、主に国民生活にかかわる行政のかじ取りを担う。行政を担当するのは「暫定行政機構」で、財務を含む22の「省庁」で構成。統治評議会は政策大綱を決め、「暫定閣僚」を任命する。

 統治評議会が機能し、暫定行政が軌道に乗れば、「外国の異教徒による支配」に対する国民の不満は、ある程度緩和されよう。

 一方、「自治体」レベルの暫定体制も全国的に整いつつある。バグダッド市でも、市民代表36人で構成される「暫定諮問評議会」が7日に発足する予定だ。

 だが、イラクが主権を回復する道程は険しい。統治評議会についても、暫定当局による任命という方式を巡り、正統性への疑問は既に出ている。目下の政治上の最優先課題は「制憲協議会」の早期設立にある。

 ところが、制憲協議会は、人選方法すら決まっていない。将来のイラクのあり方を規定する場となるだけに、各勢力の利害がぶつかり合う。

 クルド民主党は「新生イラクは連邦国家が基本。制憲協議会はそれを前提に協議すべきだ」と主張。1991年の湾岸戦争後、米英仏を後ろ盾に、サダム・フセイン体制支配を外れて「自治」を享受できた既得権を維持した上で、イラク第2の石油埋蔵量のあるキルクークの「クルド地域奪還」を求める。これに対して、イスラム諸派の多くは地域分割に結びつく「連邦制」を支持していない。

 「イラク史上初の無政府状態」(バグダッド大学ハッサン・アラニ教授)を抜け出すには、真に国益を考える指導者層の存在が不可欠だが、現状は“派閥”エゴがむき出しになっている。

 ◆民生

 イラクの戦後復興をまかなう原油輸出は、先月中旬に備蓄分の輸出が始まったのに続き、7月中旬にはイラク北部キルクーク、南部バスラの両油田で生産される原油の売却契約が結ばれる予定。生産量も年内には日量100万バレル以上に増加する予定で、国家収入の面では問題は解消されつつある。

 突然の政権崩壊で失職した公務員については、復職と給与の支払いが始まり、官公庁は動き出した。元イラク軍将兵に対しても、再就職までの間の給与支払いが認められ、生活は改善されつつある。

 だが、国民生活に直結する電気などの供給は依然、遅れている。暫定当局筋は、フセイン政権が電力関連投資を怠ってきたため、電力不足が生じていると指摘。停電を完全解消するには3年かかるとの見通しを明らかにした。

 さらに発電所に燃料を供給するガス・パイプラインや電線が反米勢力によって破壊されており、「修復と破壊のいたちごっこ」(米軍報道官)という状態だ。

(2003/7/7/01:20 読売新聞 無断転載禁止)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030706id29.htm

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