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北朝鮮の核不拡散条約(NPT)脱退宣言は、現在の核不拡散体制を揺るがしかねない事態だ。NPTは条約で「核保有国」と「非核保有国」を固定したうえ、核脅威に対する非核保有国の安全に十分な手当を施していない欠陥がある。その結果、核拡散の芽をはらんだままの状況になっている。非核保有国の核開発への誘惑を和らげるには、核保有国が非核保有国に対して恣意的に核威嚇や核攻撃を加えることのできないレジーム(体制)をつくりあげる必要がある。
具体的には、NPT上の核保有国が、非核保有国に核威嚇や核攻撃を加えないことを約束する「消極的安全保障」の条約化がある。これは、非核保有国が他の核保有国と連携して、核保有国あるいはその同盟国に武力攻撃を加えないことを条件にしている。
米英仏中ロというNPT上の五つの核保有国は、これまでも消極的安全保障宣言を繰り返してきている。だが、いずれも政治宣言の域を出ていない。核保有国による消極的安全保障を強化するには、宣言に法的拘束力を持たせるように条約下を図らなければならない。
実際に、ラテンアメリカ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約、33カ国加盟)など、非核地帯条約に加盟している非核保有国に対しては、法的拘束力を伴った消極的安全保障を付与しているのである。しかも、95年4月に出された5核保有国の消極的安全保障宣言に見られるように、無条件の消極的安全保障を宣言している中国を除くと、核保有国の宣言は、次第に似通った文言になってきている。消極的安全保障をグローバルな規模で制度化するチャンスが高まってきているのである。
しかしながら、インド、パキスタン、イスラエルなどNPT体制の枠外で核を保有している国には、消極的安全保障を約束させるわけにはいかない。これらの国々に法的拘束力を持った消極的安全保障を約束させることは、NPTの枠外での核保有を法的に認知することになるからである。
この欠陥を埋め合わせる施策が、国連安保理を通じて対抗措置や救済措置をとる「積極的安全保障」である。安保理常任理事国(P5)はNPT上の核保有国でもある。P5が加害国となった場合は拒否権によって機能しない公算が大きいが、加害国がP5以外の核保有国の場合は対抗措置を採ることが可能なのだ。
ただし、この場合であっても、安保理常任理事国による拒否権の発動の可能性がないわけではない。こうした障害を乗り越えるには、事前に、核使用に対し何らかの法的規制を整備しておかねばならない。
その糸口は、96年7月に出された国際司法裁判所の勧告的意見に見いだすことができる。勧告的意見の中で国際司法裁判所は「国家の存亡がかかる究極的な状況における核使用を除き、核兵器の使用や威嚇は、一般的に国際人道法を含めた国際法に違反する」との趣旨の判断を示したのである。この判断を法制化できれば、核威嚇や核使用をめぐって核保有国が政治的に拒否権を発動することを防ぐことができるだろう。
NPT体制は今、北朝鮮の脱退宣言に見られるように有効性が問われている。だが、北朝鮮がNPTに加盟していたからこそ、安保理決議を含めて国際的に対応することが可能になっていることも見逃せない。
核に対するグローバルな安全保障システムの確立に向けて日本が外交努力をすることは、NPT体制の強化に役立ち、ひいては北朝鮮への国際的圧力を強めることにもなるだろう。非核保有国が連携して、こうした目標に向けて英知を絞ることが期待される。