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ジルベール・アシュカルに聞く:イラクはいま-- 広がる抵抗闘争と米軍事占領政策の危機 [JRCL:かけはし2003.7.7号より]
http://www.asyura.com/0306/war36/msg/474.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 7 月 03 日 20:10:12:


 バグダッド陥落から二カ月余、米英のイラク占領支配はますます深刻な困難に直面している。占領軍への怒りは高まり、各地で襲撃事件が発生し、すでに米兵ら六十人以上が命を落としている。パリ第8大学教員ジルベール・アシュカル(『エルネスト・マンデルの遺産』、『バーバリズムの衝突』・後者は岩波書店から近刊などの著者)に、「インターナショナル・ビューポイント誌」のテリー・コンウェイがインタビューした。

なにがいま起きているのか

――戦争の砲声が止んでから二週間以上たちましたが、米軍は依然として毎日イラク人を殺し続けています。イラクの現場で起きていることの主な要素は何でしょうか。

 いま起きていることは、この戦争に反対した多くの人々が予想していたことを示していると言えるでしょう。つまり、サダム・フセインを倒すことは、この戦争のナも簡単な部分である、ということです。
 ワシントンとロンドンは、戦争自体だけでなく戦後の国の支配も朝飯前の簡単な仕事であるという根拠のない話を広めました。彼らは、イラク反対派内の親米英の人々が彼らに信じ込ませようとしたこと(そして、いずれにせよ彼ら自身が信じたかったことですが)、つまりイラク人民の大多数が彼らを歓迎するだろうということに賭けたのです。
 また彼らは、中央機関だけがすぐに崩壊するので、彼らがイラク国家機関を使用して、一部の人々が戦前すでにサダムなきサダム主義と名付けていたものを実現できると考えていたと、私は思っています。
 しかし実際に起こったことは、予想できたこと、そして予想されていたことでした。このような非常に中央に集中した独裁的な体制では、中心人物が消滅すると、まるでトランプの城のように全体が崩れ落ちます。一種の連鎖反応が発生します。サダム・フセインが姿を消したとき起こったことは、まさにこれでした。
 一部の人々は、当初の抵抗の程度によって判断を誤りました。抵抗は最小限でしたが、一九九一年に比べて鋭いものでした。これは、今回は攻撃が非常に異なる条件の下で行われたためです。地上軍の攻撃は、五週間半に及ぶ休みない爆撃の後にではなく、ただちに開始されました。したがって、今回は、中央機関が存在している限り機関の最下部が反撃を行う一定の能力を残していました。しかし、サダム・フセインが姿を消すと、すべては非常に速やかに崩壊しました。
 これは恐怖にもとづいた、人民の圧倒的多数の憎しみの対象であるような体制では普通のことです。この体制は明らかに独自の支持者を持っていましたが、それはイラク住民の少数派でした。
 この崩壊は真空を作り出し、この真空を満たすために反対派の政治的諸勢力、ワシントンのカイライ反対派ではなく真の反対派が介入しています。あらゆる種類のグループが関与していますが、最も重要なのはシーア派イスラム勢力で、種々の度合いの原理主義者も含まれています。これらは、明確にワシントンに支配されている勢力ではありません。
 他方では、サダム・フセインによる住民に対する極めて暴力的な弾圧が行われていた南部でさえ、米軍や英国軍に対する熱烈な歓迎はありませんでした。住民や宗教機構は、よくて中立的な立場を取りました。彼らの態度は、「よろしい、サダム・フセインを追い出すという展望については明確に受け入れよう。君たちがそれをやるのを邪魔はしない。しかし、君たちがこの国に留まることには、決して賛成しない」というものでした。
 いま起こっているあらゆることが、このことを明らかにしています。いわゆる解放軍と呼ばれていたものが、日々、その姿、すなわち占領軍であることを明らかにしています。これは外国による占領です。
 いまわれわれの目の前にあるのは、イスラエルによるパレスチナ領土の占領以来二回目の、外国による大規模な占領です。この二つが同じ支配の体制の二つの部分であること、そしてそのようなものとして憤激の対象になっていることが、日ごとに明らかになっています。したがって、ワシントンとロンドンにとっての主要な困難は、過ぎ去ったのでなく、これからであると私は思います。

ワシントンはドロ沼に陥る

 この結果の一つは、彼らがイラクの支配のために、NATOのようないわゆる多国的解決の検討を開始したことです。ドナルド・ラムズフェルドがこの地域を最近訪問したとき、状況を支配するのを助けるアラブ軍の可能性を検討したとしても、私は驚きはしません。
 状況が悪化するにつれて、ワシントンとロンドンはイラク直接占領に代わる代替案を探し始めています。いずれにせよ、長期的にイラク占領を続けることは、彼らにとって巨大な困難となるでしょう。ワシントンが検討していることは、イラク国内の人が住んでいない地域に軍事基地を長期的に設置することです。彼らは都市部に留まることを明らかに望んでいません。
 彼らはベイルートの経験を憶えています。イスラエル軍がベイルートに侵入したとたんに悪夢に転化し、彼らはすぐにベイルートから撤退しなければなりませんでした。イスラエル軍の存在はレジスタンスや狙撃兵の行動を開始させ、イスラエル軍をパニックに陥れました。
 われわれはすでにイラクでレジスタンス運動が展開されているのを目撃しています。興味深いのは、今回とベイルートの場合で異なる点です。前回レバノンでは民衆の敗北がありましたが、今回のイラクの場合は当てはまりません。イラク人は自分たちが敗北したとは思っていません。したがって、レバノンの場合より占領の成り行きに関して楽観的になる理由があります。
 ベイルートでは、イスラエルが進入したとき、イスラエルは強力な民衆的レジスタンスを打ち破りました。だから最初は士気阻喪は大きなものがありました。それにもかかわらず、二週間後にはレジスタンス行動が開始され、イスラエルはレバノンを出て行かなければなりませんでした。
 今日、イラクの住民の主要な部分は、自分たちが敗北したのではなく、敗北したのはサダム・フセインだと思っています。特に、シーア派イスラム勢力は自分たちは勝利者だと思っており、占領に反対する大衆的デモストレーションを組織するほど大胆です。
 いまやスンニ派とシーア派の両方のデモストレーションが出現しており、宗教的不和はありません。米軍がデモを行った人々を殺したモスルやファルージャのような一部の都市では、シーア派の間でもスンニ派の間でも同じように占領の終結を要求する強力な要求があります。ワシントンは、真の泥沼に陥る危機の中にあります。この事態を避ける可能な解決策を検討するのに大忙しなのは、このためです。

イスラム勢力と左翼諸勢力

――あなたは、シーア派の種々の政治勢力に言及されたとき、種々の度合いの原理主義があると言われました。ちょっと話を戻しますが、反戦運動や占領に対する抵抗の発展は、原理主義者と世俗派の間の勢力のバランスに関しては何を意味するでしょうか。
 ナセル主義への回帰を問題にしているのではありません。その物質的条件が存在しません。しかし、一九九一年とは異なる仕方で、おそらく、レバノン以降とは異なる仕方で、民族解放のスローガンが掲げられています。これについてはどう思われますか。

 左翼勢力と区別されるという意味でのナショナリスト勢力は、今日のイラクのアラブ人の間ではほとんど無視できます。クルド人の間では、明らかに非常に強力です。しかも、(再び)非常に破滅的な政治的オプションを追及し、占領者と連合しています(そのように見えます)。
 アラブ住民の間では、いくつかの左翼勢力が存在します。イラク共産党が再び姿を現しました。イラク共産党は、地下活動によってではありますが、国内に一定のメンバーを維持してきました。最初に新聞を作成し、それを印刷して配布する手段を組織するだけの政治的センスを持っています。また、いくつかのデモを組織し、事務所を開設しました。
 国内で雨後のタケノコのごとく生まれている数十の政治的グループの中には、確かに左翼勢力も存在します。しかし、思い違いをしてはなりません。現在、イスラム勢力に対して、特に大衆動員に対して、左翼は相手になりません。左翼の人々は明らかに進歩的ですから、私たちは、イラクの左翼を支持するためにできることをする必要があります。しかし、どんな種類の政府や体制がイラクの人民を代表するかはイラク人民が自由に決定するものであることを、われわれは絶対に明確にする必要があります。
 彼らが選択する体制の種類を禁止することは、断じてワシントンの権利ではありません。ドナルド・ラムズフェルドは最近、イラン・モデルによるイスラム体制は受け入れられないと言いましたが、彼にはそう言う権利はありません。イラク人民の自己決定の権利には、彼らが望む体制の種類を選択する権利も含まれます。
 われわれは、いわゆる全体主義的体制を防止するためにイラクに米英軍を駐留させるというテーマに関する狡猾な宣伝を許してはなりません。この宣伝にだまされる可能性のあるまじめな民主的な人々に、いずれにしてもイランの原理主義的体制は、この地域でワシントンに最も近い同盟国であるサウジ王国よりも断じて相対的に専制的でなく、反女性的でないことを想起させる必要があります。
 独裁を打倒するという名目で侵略を正当化した人々は、いまや別の独裁を防止するという名目でこの国を引き続き占領することを正当化しようとしています。何をか言わんやです。彼らの偽善を受け入れることはできません。われわれは、イラクからの米軍および英軍の即時無条件撤退と米英軍や外部からの干渉なしの自由選挙を中心スローガンとするキャンペーンを開始する必要があります。

民主主義めぐる論議は虚構

――ワシントンとサウジアラビアの関係について、米軍をサウジアラビアから引き上げカタールに移動させようとしている事実の背後には何があるのでしょう。

 彼らは、作戦の中央調整機能をカタールに移動させました。彼らはカタールに新しい基地を建設しました。このようなすべての場合と同じように、この基地も地域権力者の支援を受けています。

――したがって、地域住民の支持もですか。

 はい、結局そうなります。これは、戦争はワシントンがサウジに圧力をかけ彼らを屈服させて体制を改革させるもう一つの方法である、という意見に以前から反対していたわれわれの一部の主張を確認するものです。反対に、サダム・フセインの打倒は、彼らがサウジアラビアから軍を撤退させる口実を与えました。なぜなら、これらの部隊はサウジの米国の仲間たちにとって負担になっていたからです。
 ビンラディンがそれまでのスポンサーやワシントンの同盟者に叛旗を翻したのは、サウジ王国に米軍が配置されたためであることは、いまではだれでも知っています。これがサウジアラビア住民の間で米国に反対するアジテーションの主要な主張となっていました。このことが、9・11ハイジャッカーの十九人中十五人がサウジ王国出身者、サウジ臣民であることを説明します。彼らをサウジ市民と呼ばないのは、サウジ市民というものが存在しないからです。
 米軍の存在は政治的負担となり、ビンラディンのアジテーションとは別に、私が著書『バーバリズムの衝突』で指摘した女性の問題によって政治的負担の重さが増加しました。
 米国内の女性の運動によって、米国政府はサウジアラビアに男性のみの部隊を派遣することができませんでした。彼らは、この地域の超性差別的習慣を外れすぎてショックを与え過ぎないようにするために、女性兵士に対して服装と振る舞い方を規制しようとしました(たとえば、車を運転しない)。
 そして、このことがペンタゴンにとって真の問題となりました。ある女性パイロットがペンタゴンを告訴し、勝訴しました。したがって、彼らは、結局女性兵士たちが普通に、すなわちサウジ体制にとって途方もなく問題を大きくするような仕方で振る舞うことを受け入れざるを得ないような状況に追い込まれました。
 したがって、いまや彼らはサダム・フセインを打倒したわけですから、さし迫った外国の脅威からサウジ王国を保護するために部隊をサウジ王国内に留めておく必要がなくなりました。そのような考えられる外部の脅威がもはやなくなったからです。

――主要な脅威は内部的なものだということですね。

 米軍が内部的な脅威を大きくするのです。いずれにせよ、国内的弾圧のための部隊ではありません。大部分は空軍部隊で、イラク南部の「飛行禁止」地帯を監視していました。飛行禁止地帯はもはや存在しません。ワシントンは最初サウジ体制を保護するために部隊を配置したのと同様に、いまや同じサウジ体制を存続させるために部隊を撤退させようとしているのです。主要な関心はサウジ体制の存続にあり、いわゆる民主主義に関するすべての議論は純粋な作り話なのです。
 イラクは、中東における真の自由選挙は米国に敵対的な政府のみを作り出すという有名な法則の恐るべき証拠または詳細な説明と見ることができます。米国政府の同盟者は、おそらく一部は非常に外面的な改革を装ったものも含めて、独裁的政府ばかりです。基本的には、ワシントンがこの地域に打ち固めようとしているのは、米国が支配する独裁的政府にもとづいたパックス・アメリカーナです。

パレスチナめぐるシナリオ

――私には、彼らがしていることの第三の脚、ある意味で最もすさまじいものが、いわゆるパレスチナのロードマップであるように思われますが。

 ある意味では、一九九一年のシナリオが繰り返されています。この戦争は、アラブ中東地域に対する全面的な米国のヘゲモニーを確保する大きな第二歩でした。この地域における彼らの利益という戦争の理由に立ち入る必要はないでしょう。それはこの地域が地球の石油資源の三分の二以上を埋蔵しているという事実に明らかに結びついています。したがって巨大な重要性をもっているのです。
 完全なパックス・アメリカーナを確保するために、彼らのヘゲモニーの前進を打ち固めるために、彼らは、全ムスリム世界の反米感情の唯一ではないとしても主要な根源となっているイスラエル/パレスチナ問題の信管を外したい、すなわち危険性を緩和したいと考えています。つまり、彼らは解決のようなものを見つける必要があるのです。
 一九九一年に、「ジョージ一世」の下で、湾岸戦争の数カ月後に彼らがマドリード会談を開始した理由もここにあります。これには、当時のイスラエル首相イツハク・シャミールに真の圧力をかけることも含まれていました。右翼リクード党の党首としてシャミールは解決を望んでいませんでした。
 リクード内のタカ派は、パレスチナ人に対するいかなる妥協も望んでいません。したがって、「ジョージ一世」は、一九九一年十月末に開始されたいわゆるマドリード和平プロセスにシャミールを参加させるために、経済的手段を通じて真の圧力をかけました。
 いま、このシナリオが繰り返されています。数年にわたるイラク封じ込めの後、イラクの支配を手に入れることによって、この地域全体の第二のより決定的な支配を達成しました。いまや彼らは、一九九一年に必要だったのと同じように、彼らの成果を安定化し打ち固める必要があります。これはイスラエル/パレスチナ問題の危険性を緩和する必要があることを意味します。これがブレアや米国支配階級の一部が推進していることです。彼らは次のように言っています。「われわれは勝ち取ったものを失いたくない。これは支払う必要がある価格なのだ」。

イラクの支配とイスラエル

 これは二つのことを意味しています。パックス・アメリカーナを前進させるためには、彼らにとって、何よりもこのプロセスにおけるパレスチナ人のパートナーを取り替えることが必要でした。彼らは二〇〇〇年七月にキャンプデービッドにおいてこの結論に達しました。このとき彼らは交渉のデッドロックに直面し、アラファトはバラクとクリントンの指図を受け入れることに納得できませんでした。彼は納得できませんでした。彼は繰り返し言いました。彼の人民はそのような方法には絶対に暴力的に反対するだろうから、自分は首を失うだろう。
 この最後の試みが失敗した後、クリントン政権、米国とイスラエル政府は、飛行機と戦車とブルドーザーでパレスチナ民衆のレジスタンスを鎮圧する必要があるという結論に達しました。アラファトがゲームに参加しないのなら、彼らは彼を除かなければならなくなるでしょう。
 この攻勢は、まずバラクの下で、二〇〇〇年九月のエルサレムのアルアクサ・モスクにおけるシャロンによる挑発によって開始されました。これがいわゆる第二のインティファーダのきっかけとなりました。バラクはすでに弾圧を質的に新たな規模に強化していました。シャロンは、二〇〇一年二月の選挙で勝利して以後、これをさらに進めました。
 ある意味で、シャロンの勝利は、イスラエル支配層がパレスチナ人に対して最も厳しい方法を実施できる人物を必要としたという事実を反映しています。また、シャロンは最近まで、シモン・ペレスと労働党との連立によってこれを行いました。したがって、この合意はイスラエル支配層とそのすべての傾向の、パレスチナ人の背骨をたたき折りたいという欲求を表現しています。そして、彼らは大いにそれを実現しました。米国は数カ月前に、アラファト以外の人物を得てこのプロセスを実行する必要があるという結論に達し、首相とパレスチナ内部治安を担当する人物の指名を強制しました。
 そこで、パレスチナ側では、このいわゆる和平プロセスを進めるための重要な前提条件をまとめました。後はイスラエルです。
 シャロンは本当は期待に添いたくないことは明らかであると私には思えます。彼は公然と米国の要求を拒否することはできませんが、彼は戦術的に行動しようとしています。ちょうど一九九一年にシャミールがしたようにです。シャミールがマドリードに行ったとき、彼は頑固で非妥協的な態度を取り、それらはすべて失敗し、したがって彼らはオスロ協定に臨まざるを得ませんでした。それはシャミールではなく、ラビンとペレスがイスラエルの政権に就いてからになりました。私はこう思います。シャロンの場合は、ブッシュ政権とシャロンの間に一定の緊張が発生することはありそうにありません。
 これがどの程度当てはまるかは、シャロンの戦術的能力にもよります。彼は、来年がブッシュにとって選挙の年なので、時間稼ぎをしようとするでしょう。彼はあらゆる条件を駆使して引き伸ばし戦術と議事妨害に訴えるでしょう。これは古典的な戦術です。そこで、ブッシュ政権はジレンマに直面することになります。「ブッシュ一世」のように強力な圧力をかけるか、かけないか。
 私は圧力をかけることを可能性としては排除しません。なぜなら、一部の人々が思っていることとは反対に、犬が尻尾を振るのであってその逆ではないからです。米国の外交政策を進めているのはイスラエルではなく、イスラエルは米国の戦略的資産に過ぎません。米国の外交政策の推進力は、米国の資本主義的帝国主義的戦略的利益です。
 ここから必要になるのは、いまや一定の解決であり、それはアラファトが拒否した二〇〇〇年のバラク―クリントン・モデルのようなものに復帰する場合にのみ結実します。しかしこれは、アリエル・シャロンにとっては受け入れられない、まったく受け入れられないものです。このように予測できます。
 また、これはイラク情勢にも依存します。なぜなら、イラク情勢が米国にとって非常に悩み深いことになった場合、米国はシャロンに強力な圧力をかける立場に立てないからです。彼らがイラクに対する支配を安定することに成功すれば、彼らにとって解決が必要になり、イスラエルに対して強力な圧力をかける方向に動くでしょう。イラク支配に成功しなければ、イスラエル/パレスチナよりもイラクが彼らの主要関心事となるでしょう。

反戦運動は何をなすべきか

――今後六〜九カ月間に米軍の大きな軍事作戦はありそうにないと思いますが。

 はい、次の米国選挙の前にそのような作戦があるとは思いません。そのようなことは極めてありえないことです。そのようなことは途方もなく危険で、経済と全体としてのイラクにとって犠牲を伴うことになるでしょう。彼らは北部朝鮮やイランやシリアやこの種の他の主要な問題に取り組むことができる位置には決してありません。それは現在日程に上っておらず、少なくとも英国の場合、彼らの軍事力は消耗していると告白しています。

――そして、破産している、と。

 まさにそのとおりです。だから、ワシントンが何かを計画しているとは思いません。イラン軍が国境に終結するといった予想外の緊急事態があれば、彼らは自分たちの利益を守ろうとすることは明らかです。しかし、限定的な攻撃はあり得ますがそれを別にすれば、短期的には攻勢を開始するイニシアティブを取ることはないでしょう。

――そのようなシナリオを前提にして、今後数カ月の反戦運動は何に焦点をあわせるべきだと思いますか。また、戦争を阻止するために始まり、戦争を終わらせる運動として展開された運動を、占領の終結を要求する運動へと転換させることは容易でしょうか。

 運動はすでにスローガンを「石油のために血を流すな」から「帝国のために血を流すな」に切り換えることにより、この時期の中心的な必要に対応していると思います。このスローガンは必要なことをよく説明しています。つまり、必要なことは、イラクに対する戦争に反対する運動を全般的な反戦運動に転換させることだけでなく、反帝国主義運動に転換させることです。問題になっているのはこのことなのです。そして、イラクにおける戦争が続く間に、このことはますます中心的な焦点になっていくと私は思っています。
 私は、天候上の理由から戦争は四月以前に始まるだろう、そして、特に湾岸地域で問題になっていることの光に照らして見れば、米国の大衆運動のみが米国政府を阻止する決定的力を持つとすれば、戦争が起こるのを間に合って阻止する現実的展望はない、と主張した一人です。確かに、運動は、戦争を阻止しようというアイディアによって構築される必要があります。しかし、どんな場合でも、その目的は、侵略が起これば戦争屋にとってその政治的コストが可能な限り高いものになるようにすることです。
 この意味で、英国におけるブレアの最近の選挙での後退は、最初の良い結果です。第二に、この運動はこの戦争だけに反対する動員ではなく、戦争を中心軸とする支配のパターン全体、9・11以降劇的にエスカレートしたパターンに対する闘いであることを説明しながらキャンペーンを行う必要があります。
 われわれは、アフガン戦争、イラク戦争、またフィリピン、グルジア、コロンビアにおける低強度介入を経験しました。これとは別に、ワシントンによって「ならずもの国家」と名指しされた国々に対する圧力や脅迫があります。これらの全体が一つのパターンであり、これに反対するキャンペーンを構築する必要があります。これを行う唯一の方法は、反帝国主義キャンペーンとして構築することです。新自由主義的グローバリゼーションに反対する運動の必然的な付随的側面として、キャンペーンのこの面を深め、発展させる必要があります。同様に、実際、軍国主義と帝国主義戦争は、世界的規模での新自由主義の必然的な付随的側面なのです。(「IV」誌03年6月号)


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