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◎イラク特措法案 アラブ社会の反応は
イラクで米英両軍に死者が増え続けている。終わったはずの「戦争」で、フセイン旧政権の残党らが反撃に転じているのだ。この戦争の大義として「大量破壊兵器の脅威」を説いたブレア英首相は、証拠の未発見や犠牲者の発生で窮地に陥っている。小泉純一郎首相が今国会成立を目指す「イラク復興支援特別措置法案」は、復興支援より米軍支援の実態が浮き彫りになってきた。このままイラクへ自衛隊を派遣すれば、日本はアラブ社会でどう評価されるか。
バグダッドの北バラドで六月二十八日、行方不明になっていた米兵二人が遺体で見つかった。五月一日にブッシュ米大統領が「戦闘終結」を宣言してから、すでに五十人弱の米英両軍の兵士が死亡している。
「大きな作戦は終わったが、まだこの戦争は続いている」。米軍高官のこの言葉が、ブッシュ大統領の宣言より説得力を持っていることは言うまでもない。
米軍は二十九日未明から「ガラガラヘビ作戦」と命名したフセイン旧政権の残存勢力を掃討する大規模作戦を始めた。同政権が持っていたとされる大量破壊兵器が見つからず、戦争の大義が揺れる中、イラク現地の反米闘争が足に絡みついてきた形だ。
現在、反米英闘争を展開しているイラクの武装勢力はどんな組織なのか。イラク情勢の第一人者、中東調査会の大野元裕客員研究員は、二十四日にイラク南部アマラで起きた英兵六人殺害事件と、他の事件を分けてこう解説する。
「他の事件の場合、フセイン政権の残党による、と簡単には言い切れない。発生地域からみて残党や旧政権と関係が密接だった部族勢力、さらに別の勢力も混在していると思う」
大野氏によると、四月下旬にバグダッド西ファルージャの反米デモに米軍が発砲して以来、「戦闘再開」が顕在化したという。
「これは民衆が背後で支援していることを物語っている。米兵が狙われた地域をみると、ラマーディやハディーサ、バラドなど首都からチグリス川を北上したり、ユーフラテス川の北西側。この辺はドレイミーやバニタミーン部族の地域。彼らは旧政権時代、軍や政府の要職を占めていた。逆にいえば、現在は総失業状態で反米感情が強い」
■「都会の場合は勢力さまざま」
だが、狙撃など組織的な戦闘は旧政権軍による可能性が高いという。加えてバグダッドやモスルなど都会でも局所の戦闘が展開されているが「都会の場合はさまざまな勢力が考えられ一つには絞れない」と大野氏。
さらに問題なのは人口で最大勢力のシーア派だ。アマラでの戦闘を除き、表面的にはスンニ派地域に比べて静かだが「これは組織されている裏返し。だから逆に、何らかのきっかけで不満が爆発すれば大変なことになる。その一端がアマラ事件で表れた」という。
結局、ガラガラヘビ作戦にしても、だれを対象にしていいのか、分からないのが実情といえそうだ。
こうした米軍の苦境の一方、同盟関係の英国ではフセイン政権の脅威をめぐり、ことし二月に発表した政府文書で米大学院生の論文を盗用した事実が発覚。誇張もあったことが明らかになりつつあり、六月二十九日付の英ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の世論調査では「ブレア首相は辞任すべきだ」という回答が48%、「信頼できない」は58%にまで急上昇している。
日本では、イラク復興支援特別措置法案の審議が大詰めを迎えている。内容は「復興支援」の大義を離れて「対米支援」にすり寄る。
軍事評論家の神浦元彰氏は「特措法の目的は、自衛隊を戦場に立たせることだ。米国のためというよりは、ブッシュ政権を維持するために必要とされている」と指摘する。「ブッシュ大統領も苦境に立っている。大量破壊兵器は出てこないし、国連安保理の決議も経ていない。米国内でも戦争の大義は揺らいでおり、日本の自衛隊がイラクに立つことがブッシュの『正義』を後押しする」
政治評論家の小林吉弥氏は「英国民は、ブレア首相が戦争に大義があると言うから参戦した。その正当性が崩れたら、許されるべきではないと憤る。日本は、大義がうそらしいと分かっていても小泉首相を非難しない。もともと『長いものにまかれろ』という国民性だけに、戦争の是非は英国のように首相の支持率に直結しない」とみる。
ただ「イラクに派遣された自衛隊員に犠牲者が出て初めて、政権が問われることになるだろう」とも。一方で「犠牲者が出なければ、むしろ特措法が『正しかった』と判断されかねない」という。
米英両軍への攻撃は続くのか。
神浦氏は「米軍は戦って勝ったわけではない。イラク軍が武器を持って消えただけだ。現時点では、米英兵の犠牲者は一日に一、二人だが、米国に対するイラク人の不満や怒りは募る一方だ。犠牲者数はさらに増えることになるだろう」と予測する。
自衛隊をイラクへ派遣した場合、アラブ社会の対日感情はどうなるか。
現代イスラム運動に詳しい同志社大学の中田考教授(イスラム法学)は「よく知られているように従来、アラブの対日感情は欧米と比較して極めて良かった。だが、イラク戦争を機に対日イメージは地に落ちた。サウジアラビアの有力聖職者の一人は最近、『日本は米英に次ぐ第三の敵』と公言している」と危ぐする。
静岡産業大学の森戸幸次教授(中東地域論)も、イラク情勢の本質から自衛隊派遣に警鐘を鳴らす。
「イラク問題をめぐっては二つの側面がある。一つはいわゆる米国から見た中東民主化、もう一つは外国軍による占領という事実だ。後者にはイスラム、アラブ・ナショナリズム双方から反発が上がっている。この二つの側面のどちらが勝っているかというと、占領への反発の方がはるかに強い。日本政府は自衛隊派遣で民主化や復興を名目にしているが、地元では占領強化と受け止められよう。それゆえ、ある意味で自殺行為ではないか」
■「せっかく良好な対日感情が」
前出の神浦氏は「国際的には今は、単純にブッシュの“愛犬”がゴマをすってる程度にしかみられていないが、イラクで戦闘状態になり、自衛隊員がイラク人を殺害することになったら、日本の立場は厳しいものになる」という。
「ベトナム戦争では韓国が現地に派兵し、ベトナム人を殺害した。韓国兵も死んでいる。最近ではかなり改善されたが、ベトナムで韓国はすごく嫌われている。これまで日本は中東で汚いことはしていない。せっかく良好な対日感情が保たれていたが、自衛隊派兵は大きなしこりを残すことになる」と懸念する。