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イラク法案:揺れる大義 走る政府 「危険でも派遣」鮮明 (毎日新聞)
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投稿者 彗星 日時 2003 年 6 月 26 日 02:45:07:HZN1pv7x5vK0M

イラク法案:揺れる大義 走る政府 「危険でも派遣」鮮明

 イラク復興特別措置法案が25日、衆院イラク復興特別委員会で実質審議に入った。法案が成立すれば陸上自衛隊が初めて多国籍軍支援に他国領土へと出動することから、政府は「危険なところには行かせない」としてきたこれまでの自衛隊海外派遣の原則を軌道修正した。その一方で、イラク攻撃の根拠とされた大量破壊兵器はまだ見つからないままだ。「戦争の大義」がなお揺れる中、同日の審議では「バスに乗り遅れるな」とばかりにやみくもに自衛隊派遣を急ぐ政府の姿勢に、野党がかみついた。

 【平田崇浩、上野央絵、宮下正己】

 「自衛隊が行くと危険だから一般国民に行ってもらおう、というのも理解できない」

 小泉純一郎首相は25日の答弁で、危険地域での活動を認めてこなかった従来の自衛隊派遣論議に疑念を呈した。首相は、米同時多発テロへの米軍の報復攻撃支援を検討していた01年9月にも「自衛隊は危険なところには行かないというのはなくなった」と言ったことがある。危険だから自衛隊を出すという考え方だ。首相は「自衛隊がやって何がいけないのか。不思議でしようがない」と野党に反論した。

 91年に海上自衛隊の掃海艇をペルシャ湾に派遣して以降、政府は国連平和維持活動(PKO)を中心に次々と自衛隊を海外に送り出した。その前提は、派遣先が「非戦闘地域」であり「危険はない」ことだった。

 だが、カンボジアPKOやルワンダ難民支援などで自衛隊は危険に直面し、現地の軍隊に宿営地周辺を警備してもらうなどの苦しい対応を強いられてきた。それでも政府が「安全」という建前論を掲げ続けたのは、危険な場所での活動が武力行使につながるとの批判をを避けるためだ。そのことが逆に「なぜ、安全なのに機関銃を携行するのか」との批判を浴びる矛盾も抱えてきた。

 イラクではフセイン政権の残存勢力が米英軍を襲撃する事態が相次ぎ、死者も続出している。今回の法案は自衛隊の活動地域を非戦闘地域に限定したが、「危険じゃないというごまかしはもはや通用しない」との声は与野党に共通する。

 そこで政府が編み出したのが、「戦闘地域」と「危険」の概念を切り離す論法だ。首相はイラクの状況を「主要な戦闘は終わったが、混乱は残っている」とも説明。イラクでの「危険」は「混乱」であり「戦闘行為」ではない、との論理で突破する戦術のようだ。

 しかし、旧政権残存勢力の組織的抵抗を「混乱」とするのには無理もある。石破茂防衛庁長官は「(非戦闘地域の)特定は極めて難しい」と答弁、派遣地域の設定が難航する可能性もあることを認めざるを得なかった。

◇大量破壊兵器問題 首相、一転“逃げ”

 「大量破壊兵器が見つからなくても『政府の対応は正しかった』と言い切れるか」。前原誠司氏(民主)が突き付けた問いに、小泉首相は「なかったという仮定で答弁する必要はない」と逃げの姿勢に終始した。

 民主党は、イラク復興支援のための自衛隊派遣について「頭から否定するものではない」との立場をとりつつ、米英のイラク攻撃には、大量破壊兵器が見つかっていないことなどを理由に「大義に疑義がある」と反対してきた。大量破壊兵器の有無はイラク戦争の大義名分を立証する最大の論点だが、政府はむしろ、「戦争」の大義より「復興」の大義へと、論点をずらそうとした。

 首相は、他の野党質問に対しても「今、見つからないから『ない』というのは断定しすぎだ」と繰り返すだけ。大量破壊兵器発見の見通しについて、11日の党首討論で語った「いずれ発見されると思っている」との断定的な口調は、この日は聞かれなかった。

 また、パウエル米国務長官が2月に国連安保理で示した「証拠」を踏まえて「疑惑はさらに深まった」と評価した川口順子外相談話について、前原氏は「(報告後)6、7時間で独自の評価ができるのか。米国情報をすべてうのみだ」と追及。これに川口外相は「米国が情報を提示したことを高く評価すると言っているだけだ。米国の言っていることが正しいと言っているわけではない」と苦しい釈明に終始した。不十分な根拠で開戦を支持した日本政府の判断根拠のもろさが、この日の審議で露呈した。

◇「仲間入り」へ 本音隠さず

 首相はこの日の特別委員会の冒頭で「既に多くの国はイラクに入って復興支援活動している」と強調、法案について「できるだけ早く成立させて日本としてもできることをやっていきたい」と、早期成立への協力を与野党に呼びかけた。

 外務省によると、現在イラク国内に軍隊を派遣している国は、米英を除くと13カ国。主に治安維持活動や野戦病院の開設などで多国籍軍に貢献している。韓国は700人近い工兵・医療部隊が5月中旬からイラク南部に入り、学校などの施設復旧や住民への医療支援に取り組んでいる。

 日本は米国から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上部隊派遣を)」などの催促を受け、ようやく法案提出までこぎつけた。だが、法案が成立するまで「派遣を決定した14カ国」の仲間入りもできないという状況への焦りが、首相答弁には見え隠れしている。

 首相はあくまで「独自の支援」であることを繰り返し、米国の要請を受けての自衛隊派遣であることを否定している。たが、その一方で「米英の武力行使を支持しなかったカナダも軍隊を派遣している」「ニュージーランドはあの戦争を支持しなかったけど、軍隊を派遣すると決定している」などと繰り返した。せっかく国内外の批判を押して米英を支持したのにここでバスに乗り遅れては元も子もなくなる――。そんな本音のにじむ、首相の答弁だった。

[毎日新聞6月26日] ( 2003-06-26-00:11 )

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20030626k0000m010143000c.html

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