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哲学クロニクル 第389号
(2003年6月25日)
ロードマップの行く先
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今回はサイードが発表したイスラエルとパレスチナの「ロードマップ」批判の抜
粋です。サイードはこの計画の概要を示し、これを高く評価する意見を紹介した
のちで、こう語ります。
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ロードマップの行く先
エドワード・サイード、London Review of Books, June 19, 2003
http://www.lrb.co.uk/v25/n12/said01_.html
このロードマップとかいうものは、和平のための計画でも、平和をもたらす計画
でもない。パレスチナ問題というものをなくすためのものである。だからこそ、
ぎこちない文章のうちな何か所も「成果(performance)」という言葉が使われる
のである。これはパレスチナ人がどのように振る舞うことを期待されているかを
明かすものである。暴力をなくし、抗議せず、民主主義的になり、すぐれた指導
者をもち、すぐれた制度を作り出す。この考え方の背景にあるのは、この問題の
背景にあり、問題そのものを作り出しているのはパレスチナ人の激しい抵抗であ
り、この抵抗を引き起こしたイスラエルの占領ではないという暗黙の了解である。
イスラエルに対しては、とくに振る舞い方が期待されているわけではない。「不
法な入植地」と呼ばれている小さな入植地を放棄すること(これが不法というの
は、イスラエルの一部の入植地は合法だということを示唆するものだ)、そして
大規模な入植は「凍結」することだけである。入植地を取り除くことや、解体す
ることは期待されていないのだ。
そして1948年以来というもの、そして1967年から、パレスチナ人がイスラエルと
アメリカ合衆国のもとで耐え忍んできたものについては一言も語られていない。
パレスチナ経済の再発展についても何も語られていない。住宅の解体、樹木の撤
去、五千人以上の囚人たち、ターゲットを絞った暗殺、1993年以来の封鎖、イン
フラストラクチュアの完全な破壊、信じられないほど多数の死者と身体障害者の
発生、これらのすべてが一言もふれずに無視されているのである。
アメリカ合衆国とイスラエルがチームとして実行してきた残忍な攻撃と頑固な一
国中心主義については、すでに周知のことだろう。パレスチナ側も、アラファト
の仲間たちでは信頼感を生み出しようもない。このロードマップでアラファトは、
また生き延びることが認められたようなものなのだ。
イスラエルはアラファトを爆撃で崩壊しかけた建物に閉じ込めることで、屈辱を
味あわせるという愚かしい政策をとっているが、アラファトはまだ事態をコント
ロールしているのである。まだパレスチナで選出された大統領であり、パレスチ
ナ財政の財布の紐もアラファトが握っている(小さな財布ではあるが)。そして
現在の「改革チーム」の誰も、そのカリスマと実力で、この「古い奴」に対抗で
きる者はいないのである。
[ここでサイードはパレスチナの自治政府の首相に選ばれたアブ・マゼンについ
て詳しく語った後で、次のように指摘する]
いずれにせよ、アブ・マゼンがどれほど熱心かつ柔軟に「成果をあげる」として
も、次の三つの要因に制約される。第一はもちろんアラファト自身であり、まだ
ファタハを握っているのはアラファトである。第二のシャロンだ。ロードマップ
について5月27日に発表した発言で、シャロンはイスラエルの側の柔軟性として
解釈されるものには、ごく厳しい制限を示している。
第三はブッシュとその取り巻きだ。アフガニスタンとイラクの戦争の後の行動か
ら判断する限り、彼らには国家を構築しようという気分も能力もない。すでにア
メリカ南部のキリスト教の右派勢力は、イスラエルに圧力をかけることに激しい
苦情をもちだしている。最終段階においては、イスラエルに圧力をかけることが
何よりも必要となるのに、議会までこれに反対して始めているのである。
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(c)中山 元
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