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【米大統領選 日本から“1票”を 】東京新聞
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投稿者 TUP速報 日時 2003 年 6 月 22 日 10:16:47:DlnF7rlwhj5Xo

【米大統領選 日本から“1票”を 】東京新聞

一躍脚光のクシニッチ氏

 二〇〇四年米大統領選に向けて十七日、ブッシュ大統領が再選キャンペーンを開始した。一方、日本や欧州では、共和党の同大統領と対決することになる民主党候補の一人を応援しようという動きが広がっている。「平和省」創設などを訴えているデニス・クシニッチ下院議員(56)だ。米国内ですら知名度の低い候補を、投票権のない日本などから“越境”してまで選挙運動する理由は−。 (早川由紀美)

 「日本の政治は永田町で決まっていると思いますか。私は違うと思う。ワシントンで決まっている。とくに軍事政策は完全な米国主導。ネオコンが牛耳る現政権と組んでいるから日本は嫌な国になる。米国にも平和勢力はある。その人たちと組めばいい」

■貧困家庭で育ち最も若い市長に
 ニューヨーク・タイムズ紙など米主要メディアに反戦広告を出したこともあるフリージャーナリスト、きくちゆみさん(41)=千葉県鴨川市=は、日本発の選挙運動に乗り出した理由を説明する。ホームページ「グローバルピースキャンペーン」(http://www.peace2001.org)上などで、米国の友人や知人にクシニッチ氏のことを知らせるよう呼び掛けている。

 クシニッチ氏はオハイオ州クリーブランド出身で、七人の子どもを抱える貧困家庭に育った。大家族のため大家に敬遠され、十七歳までに二十一回転居した。そのうち二回は車中でホームレス同然の生活を余儀なくされたという異色の経歴の持ち主だ。二十三歳でクリーブランド市議に初当選。三十一歳で同市長に当選し、米国で最も若い市長となった。現在、下院議員として四期目を迎えている。

 これまでに出馬意向を示した民主党候補九人のうち、「もっとも予想外の候補の一人」とされるクシニッチ氏が名乗りを上げることになったきっかけは、二〇〇二年二月の「アメリカへの祈り」と題した演説だ。「テロとの戦い」の名のもと、軍事予算を膨張させるブッシュ政権を批判し「人として、国として立ち直り、九月十一日の廃虚から民主的な伝統を取り戻す勇気と意志を持てるよう、祈ろう」と呼び掛けた。武力の行使ではなく「ゆっくりと手間の掛かる政治的な手腕での問題解決に立ち戻ろう」と話し、「平和省」の創設を提案した。

 この時の聴衆の一人が演説内容をインターネット上で流し、感動した約二万三千人がクシニッチ氏に大統領選に出馬するよう電子メールを送ったという。きくちさんもメールでこの演説を読んだ。

 「すごいことを言っている人がいると思った。政治家として世の中に発信することは、私が夢物語を語るのとは違う。誰だって平和がいい。でも実行するのは大変なこと。彼が大統領だったらいいのにと、発行しているメールニュースで書いた」

 今年二月、クシニッチ氏が立候補を表明したため、選挙運動に加わることにしたという。
■当選する可能性 見通しは暗いが
 「一般的には、クシニッチ氏の当選の可能性はゼロといわれている。彼は自分への企業献金を断り、個人からの献金を集めているが一人二千ドル(約二十三万六千円)が上限です。民主党の候補者の中でも資金力は下の方ですし、ブッシュは最初から二億ドル(約二百三十六億円)集めると豪語している。アメリカでは、日本のような政見放送はなく、テレビの放送枠は買わなければいけない。テレビを制さないと勝てない、PRにお金をかけないと勝てないといわれる」
 一方、インターネットの人気投票では一位という結果も出ている。「今まで選挙運動にかかわったことのない人がクシニッチ氏を応援しています。平和運動や環境運動をしている人、全米に五千万人いるといわれる『カルチュラル・クリエーティブ(文化的創造者)』を自認する人々などです」
 カルチュラル・クリエーティブは、環境や健康問題に関心を持つ中流階級層で、大企業よりベンチャービジネスを志向する。これまで政治的には無党派だった人が多い。「そういう人たちは、これまで政治にかかわりたくないと思っていた。でも次もブッシュが大統領になるのはごめん、と考えている。それらが投票行動に結びついたら当選するかもしれない」。イタリア、英国でも応援サイトができ「勝手連的な動きが(世界で)始まっている」という。
 五月二十七日から三日間、きくちさんはサンフランシスコでクシニッチ氏の選挙活動に同行した。演説では「アメリカが嫌われて、孤独になってテロにおびえていていいのか」と聴衆に訴えていた。
 「デニスを応援するのは、コンサルタントやシンクタンク経営者、アーティストなどで『デニスは本当に自分たちの考えを代表している』と興奮している。彼らは、これまでは投票したい人がいなかった。政治に絶望していた。それが目覚めちゃって、面白い」
 「旧式の選挙運動とは違い、どこの演説会も口コミやインターネットで人が集まっていた。国際協力の関係のNGOの人たちも来て、インドネシアの少数民族のことなど専門的な領域の質問を半ば意地悪でぶつけていた。彼はどんな問題にも精通しているようで、彼の意見を持っていた。彼だって完ぺきじゃないし、すべてが私と同じ考えというわけじゃないけど、弱者の立場に立っている」
■憲法9条説明し「米こそ実行を」
 一時間ほど、移動中の車内でクシニッチ氏と話す機会があった。「日本国憲法の本を持っていき、第九条を説明した。『これはアメリカからもらったものなんだから、アメリカで実行してください』と伝えました」
 きくちさんは、クシニッチ氏の演説を翻訳した本を年内に出版する予定だ。米国では選挙資金法で外国人の寄付は禁止されているが、印税ならば合法的に資金的な応援ができるからだ。本を出すために五百人を目標に、一口一万円でスポンサーを募る。一口につき本十冊と交換する。秋には「本物のデニスを見よう」というツアーも計画している。
 「民主党の予備選挙は来年三月で終わるが、(それまでに敗北して本選挙に出られなくても)クシニッチ氏は下院議員を続ける。日米で平和省をつくる運動は続けていきたい」

◆2004年米大統領選
 民主党は有力視されていたゴア前副大統領が不出馬を表明したため、候補者が乱立。クシニッチ氏のほか、ケリー、リーバーマン、エドワーズ、グラム各上院議員、ゲッパート前下院院内総務、ディーン前バーモント州知事、モズリーブローン元上院議員、黒人活動家シャープトン師が出馬を表明している。大本命とされるヒラリー・クリントン上院議員は今のところ、出馬の意思を示していない。共和党はブッシュ大統領が再選を目指す。来年1月から各州の予備選を経て、3月までに各党は候補者を絞り込む。11月に大統領選挙が実施される。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030619/mng_____tokuho__000.shtml

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