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9日、捜索の成否には、米国の信頼性がかかっているのではないかと尋ねられ、弁明するブッシュ大統領=AP
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大量破壊兵器は実在せず? 米議会、CIAなど調査へ
「来週初めに情報機関から話を聞くつもりだ」
11日午前、米上下両院の情報特別委員長らが記者会見で発表した。
イラクは、米国にとって脅威となる大量破壊兵器(WMD)を本当に持っていたのか――。こんな疑問を抱かせる報道が米国で相次いでいる。議会も、WMDの存在を示唆してきた情報機関に対する調査を本格化。ウォーターゲート事件をもじって「WMDゲート」とささやかれ始めている。
戦闘終結宣言から1カ月余。イラク戦争を主導したブッシュ米大統領とブレア英首相は勝利の高揚感から一転、苦しい防戦を強いられている。米英での議論は、日本でのイラク復興支援特別措置法案の国会審議にも影を落とし始めた。
●「大義」揺らぐイラク戦
「すでに我々は大量破壊兵器(WMD)を発見した。国連決議に違反する生物兵器実験施設だ」
5月30日。ブッシュ米大統領は外遊先のポーランドで、地元テレビ局とのインタビューに答えて、こう言い切った。
生物兵器実験施設とは2台の特殊トラックのことだ。米当局は「生物兵器も製造できる」と見ている。しかし、WMDの存在を裏付ける決定的証拠とは言えない。疑念が逆に深まる結果となった。
この強弁をきっかけに「イラクにはWMDが存在する」という米当局の主張そのものに対する信頼が揺らぎ始めた。
拍車をかけたのが、ワシントン・ポスト紙の5日付の報道だ。チェイニー副大統領が昨年、バージニア州ラングレーの米中央情報局(CIA)本部を訪れ、イラクのWMDについて幹部職員らに質問を繰り返していたことを暴露した。
副大統領はホワイトハウスで毎朝行われるCIAの定例報告に出席する。その副大統領が、わざわざCIA本部に足を運ぶのは異例だ。しかも、1回だけではなかった。
当時CIAは、イラクのWMDに関する報告書をまとめている最中だった。度重なる副大統領の訪問でCIA側は「ホワイトハウスの政策目標に沿う報告書にしなければ」と重圧を感じていたことを、複数の幹部が同紙記者に打ち明けた。
実際、10月にまとまった報告書は「イラクは生物・化学兵器を保有している」という内容で、強硬姿勢のブッシュ政権にとって都合のいいものとなった。
副大統領の圧力でゆがめられたのではないか――。立証することは難しいが、この疑惑が事実なら「生物・化学兵器の保有」という主張そのものが怪しくなってくる。
●CIA報告に圧力か
ブッシュ政権は疑惑の火消しに躍起だ。
「圧力をかけるために副大統領はCIAを訪ねていたわけではない」。パウエル国務長官は8日のテレビ番組で訴えた。ライス大統領補佐官も別のテレビ番組で「テネットCIA長官によると、副大統領の圧力で報告書がゆがめられた事実はない」と強調した。
だが、疑惑は「CIAルート」にとどまらず、さらに広がる勢いを見せている。
ブッシュ大統領は昨年9月の国連演説で、武力行使を示唆してイラクにWMDの破棄を迫ったが、ちょうどそのころ、米国防総省の国防情報局(DIA)が「イラクが化学兵器を持つ確たる証拠はない」という報告書をまとめていたことが、最近になって明らかになったのだ。
武力行使もやむなしという判断を固めつつあったホワイトハウスは、都合の悪いDIA情報を握りつぶした疑惑が浮上している。
この「DIAルート」の疑惑について、フライシャー大統領報道官は9日の記者会見で「大統領は様々な形の情報を持っている。総合的に検討すれば(イラクにWMDの脅威が存在するという)大統領の発言の根拠になる」と説明した。しかし、記者団から「DIA情報よりも重要な他の情報があると思うのか」と追い打ちをかけられると「いや」と、答えに詰まった。
疑惑がじわじわと広がる一方で、WMDの証拠としてブッシュ政権が挙げていた情報の信頼性も崩れつつある。
「核兵器用のウラン濃縮に使う」と米側が主張していたアルミ管について、国際原子力機関(IAEA)は「核開発との関連は確認できない」と国連安保理に報告。英国経由で米側が入手した「天然ウラン購入疑惑」も、ライス補佐官は「間違いだった」と認めた。
追いつめられたブッシュ政権内では、責任を回避しようとする言動も目立ってきた。
パウエル長官は「ブッシュ政権だけではない。国連安保理決議1441に賛成した国々も、クリントン前政権など歴代政権も、イラクのWMDの開発能力を認めていた」と主張。さらに「フセインがWMDを持っていたということは、そういう情報を集める責任があるCIA長官の公式見解だ」とも言っている。ライス補佐官も、「大統領はWMDに関する情報をCIA長官から聞いている」と口をそろえ始めた。
●「都合良く解釈」と指摘
こんな好機を、野党・民主党の大統領選候補者たちが見逃すはずはない。今月に入って一斉に攻撃の火ぶたを切った。
「情報機関が大きな間違いを犯したのか、政権が情報をゆがめたのか、いずれにしても問題だ」
ベトナム戦争の従軍経験を持つケリー上院議員は、真っ向から批判する。エドワーズ上院議員も「国民は政府から説明を受ける権利がある」と主張。急先鋒(きゅうせんぽう)のクーセニッチ下院議員は「何も見つからなかったら、この戦争はいかさまだ」と手厳しい。
しかし、民主党も無傷ではない。昨年10月、上下両院に出されたイラクへの武力攻撃容認決議案に多数の議員が賛同したからだ。現職議員ではない候補者の一人、ディーン前バーモント州知事は「6カ月前に民主党議員が何をしたのか問いたい」と身内にも矛先を向けている。
情報機関の信頼性が損なわれてしまったことに、かつて情報機関で働いたことのある関係者からも、懸念の声があがっている。
時事問題を扱う週刊誌ナショナル・ジャーナルは、イラクによる脅威が差し迫っているということにしたかった政権内の強硬派のため、国防総省の特別計画室(OSP)が都合のいい情報を集めていたと指摘する。国防総省が反フセイン体制派の有力組織、イラク国民会議(INC)幹部の情報に頼りすぎたという分析も紹介している。
ワシントンにあるシンクタンク、軍備管理協会のポール・カー研究員は「情報当局が分析を誤ったか、政府高官の誰かが情報当局の分析結果をゆがめたかのどちらかだ」と語る。「イラクのWMDに関する情報には不確かな部分がかなりあり、幅広い解釈が可能だった。ブッシュ政権は『イラクが生物・化学兵器を持っている』という信念に引きずられて、間違った判断を下した可能性がある」と指摘する。
◇ ◇
◆WMD捜索の経緯と現状
米政府当局は開戦と同時に、戦闘部隊とは別に捜索のために組織した部隊をイラク国内に投入、事前にリストアップしていた1000カ所を超える「疑惑施設」の捜索を始めた。WMDに関連のありそうな物が見つかった場合には、科学者の専門チームがさらに詳しく調べる手はずだった。
「神経ガス入りのドラム缶を発見」「捜索部隊にマスタードガスの中毒症状」といった報道は相次いだが、いずれもその後の専門家による調査で「シロ」と判明した。
すでに最重要視していた100〜200カ所の「疑惑施設」の捜索を終えたが、生物兵器の製造にも使えるとされるトラック2台のほかには、「有力証拠」は何も見つかっていない。軍の捜索部隊はすでに活動を休止している。
現在、情報当局者や文書分析官、通訳など1300人からなる新たな調査チームがイラクに入りつつある。片っ端から「疑惑施設」を捜索する手法をあきらめ、イラク人からの聞き取り調査や関連文書の分析をもとに、WMDにつながる情報を探る考えだ。
核施設の調査には国際原子力機関(IAEA)が協力しているが、米当局は、生物・化学兵器の捜索に国連査察団が介入することには消極的だと言われている。 (06/12 08:34)