現在地 HOME > 掲示板 > 戦争35 > 581.html ★阿修羅♪ |
|
アフガンもむしばむウラン兵器
湾岸戦争やボスニア、コソボ紛争で使われた「劣化ウラン弾」が一昨年のアフガン戦争でも使用され、深刻な健康被
害を生んでいる−との疑惑が、NGO(非政府組織)による調査で濃厚になった。従来の対戦車砲だけでなく、「バン
カーバスター」など巨大兵器にも用いられたとみられ、影響は計り知れない。 (田原拓治)
カナダのNGO「ウラニウム医療研究センター(UMRC)」は昨年五月と九月にアフガン現地を調査、その結果を
先月発表した。
それによると、昨年九月に採取したアルカイダ掃討作戦で激戦区だった東部ジャララバードの住民の尿からは、通常
の四十倍から二百倍の高濃度ウラン汚染が確認された。爆撃跡やそれに近い田畑からも二十七倍の汚染が検出された。
首都カブールでは、アフガン戦争と同時に関節や背中または腎臓の痛み、筋肉の衰弱、記憶障害、感覚まひなど米英
の従軍兵に発生した「湾岸戦争症候群」とほぼ同じ症状を訴える人々が相次いでいるという。
さらに新生児にも先天性障害が多発しており、街の長老たちは、新生児の25%以上が不可解な病気にかかっている
=と話した。爆撃にさらされた人々は直後に鼻血が止まらなくなったなどと語り、これも劣化ウラン弾の被害を訴える退
=役軍人の症状と酷似している。
= これに対し、米、英両政府ともタリバン前政権、アルカイダの掃討を狙ったこの「不朽の自由」作戦では公式には劣
=化ウラン弾の使用を否定してきた。
ラムズフェルド米国防長官は二〇〇二年一月、劣化ウランによる高濃度の汚染報告を受けたと認めたが、アルカイダ
の隠していた兵器によるものと片付けた。
だが、アルカイダやタリバンに劣化ウラン弾を発射する装備がなかったうえ、米国防情報センター(CDI)のフィ
リップ・コイル上級顧問は「(開戦二カ月後の〇一年)十二月に使用量を最小に抑えるよう訴えたが、劣化ウランが使
われていた」と証言した。
さらにパキスタンのドーン紙は同年十一月、軍事情報筋の話として「開戦後、米空軍は劣化ウラン弾の雨を特にタリ
バン前線の北部に降らせた」と報じた。
■劣化弾とは違う成分が人体から
気になるのはUMRCの調査で、人体から検出されたウラニウムの中に劣化ではない成分が混ざっているという指摘
だ。ちなみに調査したジャララバード周辺にはウラン鉱山はない。
この点について、英国の劣化ウラン研究者ダイ・ウィリアムス氏は「(劣化ウラン弾使用の非難を避けるために)米
軍は天然ウラン汚染に見せかけられる劣化ではないウランを使った可能性がある」と推測する。
現段階では、ウラン汚染の実態はつかみ切れていない。国際機関も政治的配慮か、調査に及び腰だ。アフガンで環境
調査を実施している国連環境計画(UNEP)は昨年八月、ウラン汚染について特別な調査計画はないと発表。世界保
健機関(WHO)に至っては、バルカン半島での調査で米国防総省のシンクタンク「ランド研究所」の放射能汚染を扱
った報告書を引用してお茶を濁している。
劣化ウラン弾の特質は戦車の甲板すら撃ち抜く破壊力だ。アフガンで懸念されるのは、この劣化ウランが従来の対戦
車砲のみならず、「バンカーバスター」弾など洞穴や地下要さいを破壊する貫通弾として使われた可能性が高いため
だ。
アルカイダは洞穴を拠点にしていたため、東部トラボラではバンカーバスターが多用された。劣化ウランの使用量
は、対戦車砲では一発に付き五キロ分だが、「GBU37B」といった二トン級のバンカーバスターには一・五トンが
含まれるとされる。一説ではアフガン戦争で約六千発が使われ、湾岸戦争の二倍から三倍の劣化ウランが降り注いだと
される。
米国政府は公的には劣化ウラン弾による悪影響を否定している。にもかかわらず、国際非難の風が強まるにつれ、軍
需産業も兵器の材質を隠すようになった。
バンカーバスターに劣化ウランが使われているか否かも公表されていない。
ただ、英ガーディアン紙などは貫通力が通常の爆弾の二倍という事実から「断面積を変えずに貫通力を倍にするには
長さを倍にすればよいが、軍用機に積めない。となると、材質を鋼鉄の二倍の比重にするしかない。それはタングステ
ンか劣化ウランになる。タングステンは高価で加工しにくい。劣化ウランは加工しやすく、本来は“ゴミ”なので安
価」として劣化ウラン製は確実と結論付ける。
深さ約百メートルまで進むバンカーバスターの場合、汚染は表土にとどまらず、地下水まで進むことが新たな問題と
して浮上してくる。
アフガン現地で活躍する日本の医療NGO「ペシャワール会」の職員は「はっきりとした影響は分からない。しか
し、現地ではアルカイダ掃討作戦後の〇一年の暮れごろから、通常の爆死とは異なる妙な死に方が増えたとの報告はあ
った」と不安を隠さない。
■タングステンは高価で使えず
東京国際大の前田哲男教授(軍縮安全保障論)は「アフガンで劣化ウラン弾が使われたことはほぼ間違いない。コソ
ボ紛争でイタリア、ベルギー軍から劣化ウラン弾を使うなと通告されて以来、米国は使用を公表しなくなった。自衛隊
は原子炉規制法で劣化ウランが使えず、タングステンを使用している。だが、演習用で量がいらない。しかし、米軍の
ようにあちこちの紛争に顔を突っ込んでいれば高価なタングステンでは賄えない」と指摘する。
そのうえで前田教授は「米国が認めない以上、疫学調査の徹底が急務だ。さらに国際条約で一日も早く禁ずべきだ」
と提案する。
自衛隊は使っていなくても日本も劣化ウラン弾と無縁ではない。資源エネルギー庁核燃料サイクル産業課によると、
日本の原発では国産の約百五十トンのほかに年間七百トンの濃縮ウランを輸入している。最も多いのが米国濃縮会社
(USEC)製で五百八十トンだが、同社の濃縮工場では劣化ウラン弾を製造している。
市民団体「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」は一昨年、関西電力との交渉で、同社が買い付けた自然ウラ
ンの濃縮をUSECに委託し、そこで発生する劣化ウランをUSECに無償提供しているとの言質を得た。この問題は
国会質問にも発展したが、同団体は劣化ウラン弾製造に事実上、加担するものと関西電力を強く批判している。
■「影響はない」と断言する米政府
先のイラク戦争では、米中央軍は「非常にわずかな量」と前置きしながら、劣化ウラン弾使用を認めた。
しかし、ことし四月、米政府は「九〇年に劣化ウラン弾が地域住民や環境に影響があるとした研究結果は時代遅れ」
であり、「長期にわたる影響はない」と決めつけたうえで、「イラクにおいて劣化ウラン弾の破片などを除去する作業
の必要はない」と発表している。
<メモ>
【劣化ウラン弾】 原子力発電などの燃料となる濃縮ウランの製造過程で生じる劣化ウラン(ウラン238=低レベル
放射性廃棄物)を弾頭に使った砲弾。劣化ウランは鉄の2.5倍、鉛の1.7倍と比重が重く、貫通力が強い。発火と
同時に放射能を含んだ酸化ウランの微粒子が飛散し、人体などに悪影響を及ぼす。
湾岸戦争では米英両軍が95万発(320トン)使った。湾岸戦争に従軍した米兵のうち、約18万人が劣化ウラン
によるとみられる疾病、障害に対し、補償を請求した。イラク現地では、子どもたちの白血病の多発や湾岸戦争後の先
天性障害児の多さが問題になっている。だが、米国防総省や英国防省は人体や環境への影響を認めていない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030611/mng_____tokuho__000.shtml