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From : ビル・トッテン
Subject : イラク攻撃で遠のく平和
Number : OW577
Date : 2003年6月6日
国連安全保障理事会が対イラク経済制裁解除決議を採択し、国連中心の復興を主張してきたフランス、ドイツ、ロシアなどは修正を受けて妥協し、アメリカ、イギリスの占領下でイラク復興が進められている。しかし武装集団による米軍への攻撃は続くなど、平和には程遠いのが現状である。 そんな中で、経済制裁解除決議で決まった「イラク開発基金」の口座がアメリカ連邦準備制度理事会が管轄するニューヨーク連邦準備銀行に開設され、すでに10億ドルが振り込まれているという。イラクの石油を売却した資金を、実質米国が管理する体制が着々と進んでいる。
(ビル・トッテン)
イラク攻撃で遠のく平和
採択によって1990年のクウェート侵攻以来続いてきたイラクへの経済制裁は解除された。決議は石油事業の再開、運営と売却金、占領国の権限や占領統治期間、さらには略奪されたイラクの文化財の回収にまで言及した。国連の役割は人道支援の調整と統治機構設立の支援だけで、米英が暫定政権樹立を主導して石油事業を掌握する。アメリカがイラク侵攻の大義としていた大量破壊兵器は最終的な検証が「課題」として先送りされた。
アメリカがイラクを攻撃している間にも、またブッシュが誇らしげに解放を宣言してからも、主要メディアとくにアメリカの報道は恐ろしいほどに一貫して大本営発表に限定され、イラク人犠牲者の報道はわい曲されるか、またはまったく報道がなされなかった。
世界で「石油のために血を流すな」というスローガンのもとデモが行われる中、たとえブッシュ政権が石油のためではないというふりをしても、またはメディアが正直に報道をしなくても、米兵がバグダッドの石油省を守る一方で病院や博物館の貴重な品々を略奪させるがままにしたことはインターネットを介して全世界に報じられた。私のところにも、世界の友人たちから主流メディアには載らない情報がいくつも送られてきた。
例えば、米軍がバグダッドを占領した時に市民がもろ手をあげて大歓迎していることを印象づけるためにベルリンの壁の崩壊を引き合いに出して放映された、「フセイン銅像の引き倒し」も、倒したのは解放を歓迎するイラク人などではなく、米軍の戦車だった。
イラク最大の原子力関連施設のあるツワイサでは、イエローケーキと呼ばれる天然ウランの入ったドラム缶が多数略奪にあい、大量のウラニウムが施設敷地内にぶちまけられ汚染が広まった。水道のないこの村で、略奪者が欲しかったのは水を入れる容器となるドラム缶だった。ウランはあたりに捨てられ、略奪者は相当の被ばくを受けたであろうとされる。
これほどひどい状態にあるにもかかわらず米軍は何の手も打ってはいない。施設近郊の町では、すでに子どもたちの全身に発疹(はっしん)ができはじめ、極めて危険な状態にあるという。
原子力施設は核爆弾の原料である天然ウランが保管されていたことからも分かるように大量破壊兵器に一番近い場所でもある。もちろんそれだけで核兵器が作れるわけではないが、天然ウランなどは厳重に管理されなければならない物質であることは間違いない。しかしイラクの大量破壊兵器を理由に攻撃を始めたアメリカは、この場所を略奪され放題に放置した。アメリカが行ったことは明らかにもう一つの犯罪行為である。
すでにイラクでは、1991年の湾岸戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾によって、がんの発生率が急増している。さらに長年続いた経済制裁による栄養不足、医薬品の不足などで、ユニセフの発表によればイラクの乳幼児死亡率は大幅に増えている。
オサマ・ビンラディンを捕まえ、アフガニスタンに新たな民主体制を作るとして行われたアフガン戦争を人々が忘れてしまったように、確証のないままサダム・フセインが9月11日のテロと関係しているとか、大量破壊兵器の脅威などを口実にしてアメリカが行ったイラク攻撃も、大量破壊兵器の検証が「課題」として先送りされるように、過去の戦争としてすぐに人々の記憶の隅に追いやられるのだろう。(英下院では、外交委員会が大量破壊兵器の脅威を理由に対イラク戦争に踏み切ったブレア政権の判断の妥当性について調査を始めることを決定したという。英政府はイラクは45分以内に生物化学兵器を実戦配備できる態勢にあるとの報告書を昨年9月に発表している。)
そしてアメリカがその手で破壊したイラクの国土を、戦争を決行した人々が権力を握るハリバートン社やベクテル社といったアメリカ企業が「再建」をすることによって大きな利益を上げるという事実も、うやむやにされるのであろう。
わずか一世紀前、アジアとアフリカはほとんどがヨーロッパの支配下にあった。南アメリカは今よりも多くの侵略を受けた。冷戦が終わり、再び世界は西洋の、とりわけアメリカのなすがままとなり、アメリカに逆らう国は「悪の枢軸」と名指しされ、アメリカが脅威とみなせば先制攻撃も容認されるようになった。人間が進歩していないことは、明らかな植民地主義が、正義の名を借りて行われる侵攻に代わったことからもみてとれる。
イラクがアメリカに降伏し、軍事支配に抵抗をしないだろうと考える理由はどこにもない。もともと負けるはずのないこの戦いに勝ったアメリカ政府は、5月20日、サウジアラビアとモロッコで相次いだ自爆テロ攻撃を受けて米本土と海外の米権益に対するテロへの危険を示す色表示を5段階で2二番目に危険度の高い「オレンジ」に引き上げた。
アメリカのイラク攻撃でイラク国民はいまでも戦争中と変わらないような混乱の中にある。そしてアメリカ自身も、平和からまた一歩遠くなった。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト
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