★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 戦争35 > 321.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
非核国家がタブーを破る日 ニューズウィーク日本版
http://www.asyura.com/0306/war35/msg/321.html
投稿者 M 日時 2003 年 6 月 04 日 17:08:46:

開発力を有しながら
核をもとうとしない日本
北朝鮮の高まる脅威が
核武装への扉を開くのか

その日の会合は、いつもの打ち解けた日本研究者の集まりとはどこか違っていた。
 今年2月。ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターに、最新の研究成果を報告するために6人の日本専門家が集まった。テーマは日本の銀行改革でも、海外援助でもない。日本はついに、核兵器を開発する能力と意思をもつにいたったのか、だ。
 日本に「意思」があるかどうかは一般論に終始したが、「能力」については明確な結論に達した。その気になれば、日本は2〜4週間で核爆弾を製造することができると、研究者たちは結論づけた。
 日本にとって、考えもしなかったことを考えるべきときが訪れたのだろうか。唯一の被爆国である日本は、核に対して強烈なアレルギーをもち、そのことを世界に対して公言してもきた。
 日本の防衛は核抑止力も含めてアメリカの「核の傘」が保障しているという、米政府の公式見解も変わっていない。「新しい点や変化した点を見つけようとしてもムダだ」と、米国防総省の報道官は言う。「これに関しては、1951年から何も変わっていない」
 だが、日本を取り巻く状況は大きく変化しつつある。4月に北京で行われたアメリカ、中国との3者協議で、北朝鮮はすでに核兵器を保有していると宣言した。
 米情報当局は、北朝鮮が寧辺の施設で使用済み核燃料棒8000本の一部を再処理しはじめた可能性があるとみている。事実なら北朝鮮は半年以内にも、さらに多くの核兵器を開発したり、核兵器の原材料を輸出できるようになる。

アメリカも保有を容認?

 先週テキサス州クローフォードで開かれた日米首脳会談で、ジョージ・W・ブッシュ大統領と小泉純一郎首相は「北朝鮮がすべての核開発を検証可能で再開不可能な形で廃棄する以外は、何も受け入れられない」ことで一致した。
 米軍は韓国の群山基地にステルス戦闘機を配備し、イラクに展開していた空母カールビンソンとキティホークを東アジアに呼び戻した。北朝鮮の動きに注目が集まるなか、中国も核兵器の近代化を着々と進めており、中国のミサイルの射程には日本がすっぽり入る。
 こうした変化が、半世紀以上にわたって核兵器を拒絶してきた日本をついに揺さぶりはじめた。アメリカでは、ワシントン・ポストのチャールズ・クラウトハマーのようなタカ派のコラムニストが、日本は核武装すべきだと説いている。中国の危機感をあおり、核を放棄させるよう北朝鮮に圧力をかけさせることがねらいだ。
 ディック・チェイニー副大統領は、3月に出演したNBCのトーク番組で「(北朝鮮危機で)日本なども核政策の見直しを迫られるかもしれない」と語った。CIA(Central Intelligence Agency:米中央情報局)と国務省情報調査局は、日本が核武装する可能性について極秘裏に検証してきた。
 「アメリカは、日本に核武装を思いとどまらせることができるのかどうかわからない。思いとどまらせたいのかどうかもわからない。(ブッシュ政権の当局者から)そう聞いたことがある」と、保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のジョン・タシックは言う。
 かつての日本なら、そんな見方にまともに取り合うことさえなかっただろう。防衛庁は95年に、日本の核武装の可能性について内部で検討している。93年に北朝鮮の核開発をめぐって緊張が高まった後だったが、今年2月に公表された報告書によれば、政治的、経済的コストが高すぎるので保有すべきではないという結論に達した。
 報告書をまとめた防衛庁長官官房の西正典・秘書課長は、今もその立場を変えていない。「北朝鮮の核危機による現在の状況は、8年前に検討を行った範囲を超えていない」と、西は言う。

「平和国家」の様変わり

 しかし昨年5月、福田康夫官房長官が、核兵器の保有は憲法上は否定されないと語り、非核三原則の見直しに言及した。その1カ月前には、自由党の小沢一郎党首が「その気になれば(日本は)原発のプルトニウムで何千発分の核弾頭をつくれる」と発言。今年1月には石破茂・防衛庁長官が衆議院予算委員会で、他国のミサイル基地を「日本が先制攻撃する可能性」について答弁した。
 こうした変化に、アメリカの専門家は驚きを隠さない。「核武装の可能性について議論するのは日本にとってタブーでなくなった」と、戦略国際問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)のカート・キャンベルは言う。「核武装について、冷静に議論できる国になったということだ」
 小沢の話は、大げさでもなんでもない。核武装を決断すれば、日本が核兵器を製造するまでにあまり時間はかからないだろう。
 日本は現在、使用済み核燃料を再処理して得たプルトニウムを国内に5.6トン、フランスとイギリスに32.4トン保有している。核兵器に適した高純度のものではないが、モンテレー国際大学の物理学者チャールズ・ファーガソンによると、日本の技術力があれば余分な酸素を化学的に取り除いて核爆弾を製造できるという。
 国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)の試算だと、核爆弾を製造するのに必要なプルトニウムは1発当たり5〜9キロ。日本国内にあるプルトニウムだけでも、500発以上は十分につくることができる。 
 日本には、他の条件もそろっている。H2ロケットは液体燃料のため弾道ミサイルへの転用はむずかしいが、5月9日に小惑星探査機を打ち上げたM5ロケットは固体燃料を使用しており、「ICBM(Inter Continental Ballistic Missile:大陸間弾道ミサイル)そのものだ」と、軍事評論家の江畑謙介は言う。日本のコンピュータ技術をもってすれば、初歩的な核実験のシミュレーションも可能だ。

自前の核武装は損か得か

 残る問題は、信頼できる指揮系統をどう築くかだ。「森喜朗のような首相がゴルフをしている横に、核ミサイルの発射ボタンを持った側近が控えている。そんな光景は想像したくない」と、スティムソン・センターの研究会に参加したワシントン大学(セントルイス)のアンドルー・オロスは言う。
 ただし、能力と意思は別の問題だ。日本には、核武装を封印しておくべき理由がたくさんある。たとえば日本は、被爆体験と憲法9条のおかげで、核拡散防止について国際社会で強い発言力をもてる。
 「日本がイニシアチブを取れる数少ない分野の一つだ」と、戦略国際問題研究所太平洋フォーラム(ホノルル)のフランク・コッサ所長は言う。「核武装を検討するだけでも、日本は方向を180度転換しなければならなくなる」
 日本が方向を転換すれば、周辺諸国に最悪のメッセージを送ることになると、ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロンは言う。「日本には軍国主義がくすぶっているかもしれないという周辺諸国の疑念が、現実のものとなる」
 軍事戦略の点からも、核武装は合理的とは言いがたい。日本は、アメリカの核の傘による抑止力を低コストで享受してきた。小泉政権の発足以来、日米の結びつきも強まっている。「ブッシュ政権は日米の絆を英米並みに強くしたがっている」と、米国防大学のジェームズ・プリスティプは言う。
 核攻撃に対して脆弱な日本が、相手の報復能力をすべて破壊できる確証がないまま中国やロシアの核攻撃を単独で抑止するのは現実的ではないと、95年の検討会に参加した防衛庁防衛研究所の小川伸一・主任研究官は言う。日本は人口の45%以上が3大都市圏に集中しており、中国やロシアの報復の脅しに耐えられないからだ。
 70年代から日本の「非核神話」を批判してきた石原慎太郎・東京都知事のようなタカ派の政治指導者も、北朝鮮の原始的な兵器に対して日本が核武装する必要はないと主張する。「TMD(戦域ミサイル防衛:Theater Missile Defense)や航空母艦など、通常兵器で徹底的な防衛体制を構築すれば、北朝鮮には大きな抑止力になる」と、石原は言う。

南北朝鮮統一も引き金に

 アメリカの軍事アナリストの一部は、日本はもっと真剣に事態を検討すべきだと考えている。彼らによれば、ドナルド・ラムズフェルド国防長官とコリン・パウエル国務長官が北朝鮮はすでに核兵器を保有している可能性があると認めたことで、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動に踏み切る「境界線」は変わった。
 専門家のみるところ、北朝鮮が越えてはならない一線は核兵器を保有することではなく、核兵器や核分裂性物質を輸出したりテロリストに渡したりすることに変更された。
 こうした変化によって、防衛庁の95年の報告書は時代遅れになったと、タシックは言う。「日本は当時、北朝鮮の核武装はアメリカが絶対に許さないと考えていた」。今やアメリカが許さないのは核武装ではなく、米本土に対する核攻撃に変わったようだ。
 ケイトー研究所のテッド・カーペンターは、アメリカは日本と韓国の核武装を認めるべきだと考えている。カーペンターに言わせれば、北朝鮮の周辺諸国は、地域の安全保障について自分たちで責任を負う時代になった。「日本が確実な核抑止力を求めるなら、自ら核を保有すべきだろう」というのが、彼の考えだ。
 日本の近隣諸国が核兵器の開発競争を始めれば、カーペンターの主張は説得力を増す。チェイニーは3月に出演したトーク番組で、「北朝鮮が弾道ミサイルに核兵器を搭載するようになれば、この地域の軍拡競争に火がつくだろう」と語った。そうなると、日本が直面する現実は、8年前に防衛庁が考えていた状況とはかなり違ったものになる。
 「北朝鮮の核兵器は、韓国にとって大きなプレッシャーになる」と言うのは、オープン・ソサエティー財団のモートン・ハルペリンだ。
 「北朝鮮が崩壊するようなことになれば、朝鮮半島の統一国家がその核兵器を引き継ぐ。そのときは日本も、ただちに核兵器の保有に踏み切るだろう」
 韓国が25年ほど前に核兵器開発に動こうとしたとき、アメリカはそれを阻止した。台湾が70年代と80年代に核爆弾を開発しようとしたときも同じだった。80年代には、情報機関が入手した核兵器開発の証拠を米政府が台湾に突きつけ、中止するよう強く要請した。
 だが、台湾と日本は違う。「太平洋で最も重要な同盟国が(核武装は)安全保障に不可欠だと判断するなら、大統領は反対しないだろう」と、タシックは言う。

核が欲しい本当の理由

 日本は、周辺諸国が核兵器の開発競争を行わなくても、核武装するかもしれない。日本には60年代から、核アレルギーを払拭しようとする政治家がいた。
 その意味では、昨年5月の福田官房長官の発言は驚くにあたらない。国際政策センターのセリグ・ハリソンに言わせれば、「日本の核武装志向の根っこにあるのは戦略ではなく願望」だ。
 「日本の右派は(第2次大戦後の)主権回復以来、核兵器開発の可能性を常に探っている」と、ハリソンは語る。「彼らにとって、北朝鮮の核は日本の核開発を正当化する口実にすぎない。彼らが核保有をめざすのは、国際社会でより自立した地位を得たいからだ」
 北朝鮮の脅威には、TMDやハイテク通常兵器で十分に対応できるかもしれない。だが、核兵器でなければ満たせない「願望」もあるようだ。
 日本は10年に及ぶ景気低迷に苦しんでおり、アジアにおける政治的影響力でも中国に後れを取りはじめている。こうした立場におかれた日本が、自らの力を再確認する手段として核兵器開発を選択することもありうる。
 現実的に考えれば、日本は核兵器をもつ必要はないのかもしれない。一部の専門家が指摘するように、いつでも核兵器を開発できるという状態が、すでに「潜在的な抑止力」になるからだ。
 スティムソン・センターの勉強会でも、日本がすぐに核武装する可能性は低いという見方が強かった。しかし長期的には、日本は国際社会でより積極的な役割を演じようと考えているようにみえる。
 中国が軍事力を増強し、ブッシュ政権が在韓米軍の再配置を検討している今、北東アジアの未来の姿は予測しがたい。だが、北朝鮮の核危機がどのような形で決着しようと、日本が核開発をめぐる論議をタブーと考える時代は終わりを告げるだろう。
 日本もアメリカも、以前は考えられなかったことを真剣に考えねばならなくなったということだ。

ニューズウィーク日本版
2003年6月4日号 P.16


http://www.nwj.ne.jp/

 次へ  前へ

戦争35掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。