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『天と地の狭間――最高司令官は、カタールで将軍たち相手に祝勝演説 兵たちは、イラクで流血騒ぎ、恐怖、待ち伏せ攻撃』ロバート・フィスク
http://www.asyura.com/0306/war35/msg/1058.html
投稿者 TUP速報 日時 2003 年 6 月 24 日 01:46:39:DlnF7rlwhj5Xo

[TUP-Bulletin] TUP速報 117 号 03年6 月23日

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ブッシュ大統領は、サダム・フセイン体制崩壊後の5月、作戦海域から帰還中
の空母エイブラハム・リンカーンに着艦して、凱旋パフォーマンスを世界に誇
示したが、6月に入って、占領下イラクを訪問するという大方の予想に反して、
カタール前線司令部で勝利を祝い、『オリンポス神ゼウスの眼』で上空からイ
ラク領土を視察するだけで終わった。

下界、かつてバース党と化学工業の都市だったファルージャでは、死を招く待
ち伏せ攻撃、汗まみれの捜索と連行、そして恐怖の物語が紡がれているが、米
兵たちと住民たちとの間に深まる緊張と対立の連鎖が、最高司令官の眼に映っ
ているのだろうか?

ベトナム戦争時代のボブ・ディランの弾き語り『戦争の親玉』が聞こえてくる
ような、ロバート・フィスクの現場レポート。

                       TUP 井上 利男
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『天と地の狭間――
最高司令官は、カタールで将軍たち相手に祝勝演説
兵たちは、イラクで流血騒ぎ、恐怖、待ち伏せ攻撃』

――ファルージャ発 ロバート・フィスク
2003年6月6日 インディペンデント

【原文: Znet】
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=15&ItemID=3737
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昨日、ジョージ・ブッシュ大統領はカタールを訪問して、サダム・フセインに対
する戦争を『管制』した米軍将兵を賞賛した後、イラク上空から、古のメソポ
タミアの地にオリンポスの神ゼウスの視線を投げかけた。だが、下界では、ブ
ッシュ氏がその地名を耳にしたくもないファルージャの汚い市街の汚い一角で、
米兵の血と米兵の武力の――そして、イラク国民の住宅の戸口を蹴破る米兵の
軍靴の――物語が繰り広げられている。

「女が銃を持っている」――米兵が、自宅裏庭でカラシニコフ突撃銃を抱えてい
る女性の姿を捉えて叫んだ。彼は、「銃を下に置け! 銃を置け!」と女に怒鳴
る。兵たちはイライラし、疲れ、怒っていた。その日の未明午前3時に、何者
かが第101空挺団部隊のトラックに手榴弾を投げ、それ以来、兵たちは寝て
いない。これで、ブッシュ氏がイラクへの戦勝訪問を避けている理由が透けて
見えるだろう。

昨日、私が会った兵士たちの中には、待ち伏せ攻撃に遭遇した者たちもいて、
軍人のみが語ることができる早朝のできごとを話してくれた。「やつらは第1
01空挺団部隊兵員を満載した2トン半トラックに手榴弾を投げ、ついでカラ
シニコフで銃撃し、忽然と夜の闇に消えました」と、兵の一人が私に語った。

「皆、凄まじい有様でした。兵の一人は、頭から脳が垂れ下がり、胃も飛び出
して死んでいました。背後にいた兵8人は、自分たちの脚から手榴弾の金属片
を引き抜きながら、喚いていました」

夜が明けきらないうちに、米兵たちは現場に戻ってきて、街路に広がる同僚た
ちの血糊を洗い流した。さらに、昔からのバース党地盤である都市ファルージ
ャのこの汚い一角の住民に対処するために、兵たちはもう一度戻ってきた。

カタールで――75分間のイラク空域飛行に出立する前――ブッシュはしかる
べき楽観論を開陳することに意を尽くした。サダムがいなくなった今、イラク
はより良い国になった――「巨悪は息絶えた」と彼は言い、「我がアメリカ軍の
人道的任務」を賞賛した。

大量破壊兵器については、当然、もう少し慎重に言葉を選んだようだ。「われ
われは注意深く探している。われわれは真実を暴き出すだろう……だが、確か
なことが一つある。もはや、いかなるテロ組織もイラク政権からは大量破壊兵
器を入手できない。なぜなら、イラク政権はなくなったのだ」 それにしても、
もちろん、大量破壊兵器は何一つ見つかっていない。

自分の兵たちがイラク遠征任務の達成を誇りに思っているはずだと、ブッシュ
が考えたにしても――そして、昨日、カタールで彼は司令官たちにそのように
語ったのだが――ファルージャでは、汗と恐怖、それに街路から一般人に命令
を下す拡声器、それだけだった。はたして、「夜の闇に消えた」武装集団が、待
ち伏せ攻撃現場のすぐ近く、幹線道路に面した最寄りの住宅地に本当に隠れる
だろうか? そうだとすれば、頭がどうかしてるとしか言えない。

だが、昨日のうちに、銃器類の押収と一般人被疑者たちの一斉検挙を任務とす
る米軍第115警務隊の派遣を、第3歩兵師団上層部の誰かが決定したのであ
る。

占領の混乱状態に限りなく深く入り込むうちに、彼ら兵たちは、まさしく自分
たちが『解放』したはずの民について、当惑するばかりになった。兵たちにも、
善人もいた。例えば、セス・コール軍曹――彼はかつてノーサンプトンに住ん
でいたが、ファルージャ住民の1割が嫌米的であるとしたら、「とてつもなく
多いですね」と理解していた。

フィル・カミングスの場合、彼はロードアイランドから来た大柄で陽気な憲兵
であり、車道から自分を睨んでいるイラク人に話し掛けていた。「私たちは助
けに来たのに、ここの人たちの中には私たちが好きでないのもいます」と、彼
は言った。「それでも、私はいつも笑顔で彼らに接するのです。学校では、生
徒たちが私たちに石を投げますが、私はキャンディをあげるのです。私はキャ
ンディを寄越し――彼らは石を寄越すのです」

生徒たちが石を投げて寄越すのは何故なのか、分かるまで時間はかからなかっ
た。40メートル先に、米兵がもう一人いた。彼はなにやら忙しく没頭し、つ
いでに心も失っていた。彼は、十代のグループを指差しながら、民間人に向か
って、「あいつらに、向こうへ行ってしまえと言え」と命令していた。かと思う
と、今度は路上の椅子に腰掛けていた中年男性に向かった。「お前、さあ、立
つんだ。首をへし折ってやる」と、彼は怒鳴りつけた。

「屋根に人!」と、憲兵が叫んだ。自動小銃30丁の銃口が黄色塗装の住宅の天
辺に向けられた。軍曹が双眼鏡を眼に押し当てた。「大丈夫だ! 小さい娘と一
緒の女だ」 そして、兵たちを見て、目をむいている、長い黒髪の子どもがい
た。その時、彼らはカラシニコフを持っている女を見た。「女が銃を持ってい
る。銃を持った女だ」 喚き声が米軍兵の隊列に走った。征服者であるのに、
生け贄であるかのようにも見える兵たちと、ほんの数時間も一緒にいれば、露
天商のように喚いて、情報をやり取りしなければならない理由が分かってくる。
「女が銃を持っている」 「女が銃を持っている」 「女が銃を持っている」……も
う一度、喚き声が街路を往復して伝播した。

兵士3人が門扉の格子細工に銃を突っ込み、「銃を下に置け!」と揃って怒鳴り、
やがて、背の高い、汗まみれの憲兵が扉を蹴ると、バンッと開いた。「下に置
いた――銃を確保したぞ!」 3人の兵たちは庭に走り込み、カラシニコフを
持って、出てきた。すると、2人の女性士官が女を連れ出した。地元の高校の
教師であり、ヴェールで顔を覆い、衣服も黒づくめだった。「どうして、銃を
持っていた?」と、ひとりが詰問した。ヴェールの奥から、女の眼が見つめ返
した。さらに、反抗の態度を腕を組んで示し、返答を拒んだ。

「お願いです、兵隊さん。連れていこうとしているのは、私の息子なんだ。 悪
いことは何もしていない」 街路の向こうの方で、別のドアがぶち壊されてい
た。私は、茶色シャツの若い男が、二人の憲兵に両側を挟まれ、ハムヴィー戦
闘車両で連行されるのを目撃した。年配の男が軍医に訴えていた。「私の息子
がどうして? 私の息子がどうして?」

2メートル先の光景がこれよりもましなわけではない。ここ、熱風の町では、
物音がいかに不気味にざわめくことか。マサチューセッツから来た、背の高い
兵士が、助けてくれと上手な英語で訴える男に耳を傾けていた。道の向かい側
で、3人の兵士が金属製の仕切り板をハンマーで破ろうとしていた。「そこに
住んでるのは、病気持ちの年寄りなんです。あれはただの店で、子どもたち相
手にキャンディを売っているのです」 イラク人は兵士に教えていた。兵士は
返事もしなかった。

オーブンのように熱い陽光の中、店の表ドアが開くのを待ち続け、その場で私
たちは立っていた。ゆっくりと広がるドアの隙間に、3人の兵たちは銃口を向
けていた。すると、戸口の向こうに、非常に年取った、長く伸びた白い髭と四
方八方に広がった白髪の男がいるのを、私たちは見た。長く垂れた白いガウン
を着た、弱々しい生き物。心に浮かんだ言葉は、『太古の』だった。体を支え
るために、アイスクリーム冷蔵庫にもたれかからなければならなかった。その
姿は預言者に見えなくもなく、一瞬、米兵たちは言葉も失った。「すみません、
ご主人。われわれはあなたの店を捜索しなければなりません」と、兵の一人が
言った。三人は店に入り、老人は街路に立ち、私たちを眺め、店を眺め、暗が
りの中へよろよろと戻っていった。

数百メートル先で、なにか発砲があり、兵たちは、壁の背後、庭の中に身を隠
すために走った。すると、門扉がバタンと開き、グレーのディシュダシュ織民
俗服をまとった男が出てきて、両手を頭の上に置き、門柱の傍に座った。米兵
たちが家屋を捜索している間、彼の家族は、ブーゲンビリアの木立の下、ベラ
ンダに座りこんでいる。ここでも、1丁のカラシニコフ自動小銃が発見された
――イラクでは、おおむね全ての家庭が2丁か3丁の銃を所持している。彼ら
はたいがい中流とみなすべき階層で、教養もあり――破壊された軍需工場と、
サダムの息がかからない公務員を探すのが難しいほどに深く根を張ったバース
党組織を具えた、この荒廃した都市にあって――邸宅で通る住宅を持っていた。

昨日、米軍は百人を超える住民を敵に廻した。一人の若い男が、数日前の夜、
武装グループが彼らの住宅地に現れたと私に語った。発足したばかりのレジス
タンスに参加しないかと誘ったと言うのである。「私たちは誘いを断りました」
と、彼は言った。「でも今度来た時は、私がどう返事するか、私にも分かりま
せん」 昨日、バグダッドの銀行の外で、発砲し、米軍兵士2名を傷害した男
たちも、おそらく、かつて同じような誘いを受けたのだろう。

ファルージャで、捜索任務が解除になった後、米軍憲兵隊のひとりが私の方に
振り向いた。「明日、第3歩兵師団がここに来て、この地区を『くまなく調べ
る』ことになっているんだ」 『くまなく調べる』がなにを意味するのか、拝
見するのは興味深いだろう。だが今は、ファルージャという地名だけは覚えて
おこう。

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               翻訳 井上 利男 / TUPスタッフ

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