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米女性兵士救出も演出か 米英メディアが疑惑の目
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イラク南部のナーシリヤの病院から救出されたリンチ上等兵(米軍提供のビデオ映像から)=AP
「戦争のヒロイン」は国防総省がつくった偶像だったのでは──。イラク戦争で捕虜になった後に救出された米陸軍上等兵ジェシカ・リンチさん(20)の「物語」に、欧米メディアが疑惑の目を向けている。大量破壊兵器の情報操作疑惑とあいまって、ブッシュ政権の説明には疑いの声が強まる一方だ。
リンチさんは3月23日にイラク南部で捕虜になった。米政府筋は当時、「多くのイラク兵を倒した」「敵の銃弾を浴びて重体」「イラク側はまともな治療をしていない」など米側の武勇談とイラク側の非道さを強調。リンチさんは瞬く間にヒロインに祭り上げられた。
米特殊部隊が4月2日に収容先の病院から救出した際も、自動小銃で武装した部隊が突入し、リンチさんをヘリコプターで搬送する米軍映像が繰り返し放映され、緊迫感をかき立てた。
しかし英BBCテレビは、▽リンチさんの体には銃創がなかった▽イラク側は可能な限りの治療をした▽病院にイラク兵は1人もいなかったので救出劇に危険はなかったと報道。「国防総省がハリウッド映画みたいに演出した」と批判した。
ワシントン・ポスト紙も17日、リンチさん周辺や国防総省、イラクの病院関係者ら数十人に取材した特集を掲載。リンチさんの部隊は道に迷った末にイラク軍と遭遇し、慌てて交戦したため味方の車両同士が衝突▽この事故でリンチさんは重傷を負った▽銃の故障でリンチさんは1発も発砲していないと指摘。軍情報に基づく3月時点の同紙の報道を訂正した。
国防総省は「事実に基づいておらず、ばかげている」(ホイットマン報道官)と反論している。しかし、民主党の大統領候補の一人、クーセニッチ下院議員は同省に資料公開を要求。「リンチさんはブッシュ政権による物語のシンボルにされた」と批判する評論家も増えている。
リンチさんは、いまも陸軍の病院に入院中で、国防総省は「捕虜になってから救出されるまでの記憶は残っていない」としている。 (06/23 10:08)
http://www.asahi.com/international/update/0623/004.html