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●角笛が鳴るとき
1932年イギリス・ヨークシャー州リポンでの、お話し。この町には13
世紀の「夜警の家」の建物が残っていた。その家には、夜警や保安官などが住
んでいたわけだが、空き家として長い間、放置されていた。
そのため、町では、700年以上もの歴史を誇るこの建物を、綺麗にして、
もう一度、開館させようとしたのである。
修繕も終わり、早速、開館記念の祝賀行事を行うことにした。進水式に執り
行う、船首のシャンパン割りのように、このときは、一人の笛吹きにより、町
の角笛を吹き鳴らし、開館を祝うことにしたのである。
当日、笛吹きが進み出て、角笛を吹き鳴らした。そして、最後の音が消えて
いったとき、数百人もの町民が息をのみ、身をのりだし、全ての視線が、ある
一点に釘付けになった。
それは、この家の二階の窓であり、そこには奇妙な服を身にまとった男の影
が、映っていたのである。そして、影は、ほどなくして消えていった。
その窓のある部屋の扉には、鍵がかけられており、その扉の前には、警備員
が立っていたので、部屋の中には誰もいないはずであった。
行事が終了すると、町民たちは、その男の影の姿形を、事細かにメモに書き
留めた。全てが同じ特徴ではなかったが、大多数の町民の書いた姿形は、ほと
んど一致し、その姿は13世紀当時の衣服のようであったという。
その数ヶ月後、建物の中から、一枚の肖像画が発見された。その肖像画のモ
デルは、初代夜警H・リプレーであった。
驚くべきことに、絵に描かれていた彼の服装と、行事のときに見られた男の
服装が同じであったのだ。しかも、背丈や顔の表情など、あの影の男に酷似し
ていたのである。
数百人の人々が見た、同じ姿の影の正体とは・・・。集団ヒステリーが引き
起こした、幻覚だったのか。
しかし、その初代夜警の肖像を、町民は見たことも、それがあることすら知
らなかったという・・・。
※古今東西浪漫通信※ 第31号 99/7/4