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イラク危機と日本の国益
2 月5 日、米国のパウエル国務長官は、国連安保理で、イラクの大量破壊兵器の保有・
開発、およびテロ組織アルカイダとの関係を示す独自の機密情報を開示した。決定的な証
拠ではないが、安保理決議1441 の重大な違反であるとして、強硬姿勢を一段と強めてい
る。ブッシュ政権は、戦争回避を求める国際世論に配慮し、数週間程度の査察は継続する
が、最後までイラクが武装解除に応じない場合は、第2 の国連決議がなくても、武力行使
を辞さないとの決意を固めている。クーデターやフセイン大統領の亡命の可能性が小さい
ことから、米英軍の戦闘準備体制が整う2 月末から3 月中旬にかけて、イラク攻撃が避け
られない情勢となってきた。
こ のような中、ロシア、フランス、中国などは、フセイン後を視野に入れて、イラ
クの石油利権や債権回収など自国の権益確保に向けて動いている。各国とも、米国を
牽制しつつも、最後は勝ち馬に乗れるように、したたかな国家戦略を持って行動して
いる。
そ れに対して、日本はイラクから米国に追随する敵対国と名指しされる一方で、同
盟国の米国からは軍事行動をとった場合、どのような貢献をするのか厳しく評価され
ることになる。また米国からは、戦後復興のために、日本の対イラク債権(約60 億ド
ル)の放棄を求められる恐れもある。さらに、フセイン後の油田開発を巡っては、米
英とロシア、フランスなどの間で協議されていると伝えられているが、日本は蚊帳の
外である。
1991 年の湾岸戦争では、日本は多国籍軍に130 億ドルも拠出したが、汗を流さなか
ったとして、国際的に評価されなかった。その苦い経験もあり、その後、国際平和協
力法を制定し、国連のPKO 活動に参加するようになった。しかし今回のイラク危機
では、テロ特措法やPKO 参加5 原則に基づく自衛隊の派遣は難しい。国連決議に基
づき武力行使がなされた時の後方支援や、イラクの戦後復興支援に積極的に参加する
ためには、新しい法律が必要である。普通の国としての対応手段を持たない限り、国
益がぶつかり合う国際社会の中で日本の国益は守れない。
(EP レポート平成15 年2 月21 日号掲載)