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「証拠があるんやけん、早く白状したらどうなんや」
警察署の狭い取調室で、容疑者の耳元に怒鳴り声が響く。机をどんどんたたきながら、刑事が自白を迫る。
「私がやりました」。取り調べが始まってから6時間。最初は「全く身に覚えがない」と盗みの容疑を否認していたにもかかわらず、男性は自白に転じた。
起訴され、裁判が始まった。ところが逮捕から1年後、「自分がやった」と真犯人が現れた。386日間の身柄拘束を解かれ、男性は無罪となった。
これはドラマではない。99年2月に愛媛県で起きた誤認逮捕の事件だ。
新しい刑事裁判のあり方について、政府の司法制度改革推進本部で検討が進められている。これまで密室で行われてきた取り調べを、どうやって透明なものにするかが大きな課題となっている。
裁判官や弁護士の間で、取り調べの過程を録音したり、ビデオ録画したりすべきだという声が強まっている。賛成したい。
愛媛の男性は、裁判で自白を強要されたと訴えた。検察官は自白調書をもとに弁解はうそだと主張した。真犯人が現れなかったら、裁判官も判断に悩んだろう。冤罪が生まれた可能性は十分にあったのだ。
80年代に4人の死刑確定囚が再審無罪となり、死の淵(ふち)から帰ってきた。自白偏重の取り調べが冤罪の原因となったのは、遠い過去の話ではない。
近い将来、裁判員制度が導入される。重大な刑事事件について、くじで選ばれた市民が裁判官と共に有罪・無罪を判断し、量刑も決めるのだ。
これまでのように、捜査段階での自白が自発的になされたのかどうかをめぐり、検察官と弁護人の間で延々と争われるようでは、判断に迷うだろう。
市民が参加する以上は、わかりやすさが求められる。録音や録画ほどわかりやすく、客観的な証拠はない。不毛な水掛け論がなくなれば、裁判も速くなる。
日本の捜査当局は「ビデオを撮ったりすれば、容疑者が真実を話さなくなる」と反対している。だが、適正に自白を得ていることがだれの目にも明らかになれば、むしろ捜査当局の信頼は一層高まるはずだ。
取り調べ状況の録音・録画は国際的な流れとなっている。英国では80年代にテープ録音が法律で義務化された。米国でも録音・録画の動きが広がっている。
米国司法研究所のドレッセル所長は、22年半の裁判官経験を踏まえて「取調室で何が行われたかを知るうえで、録音・録画よりもいい手段はない。検察も警察も採用に積極的だ」という。
テープ録音を義務化した85年の米国アラスカ州最高裁の判決は言う。「録音は被告の権利だけを守るのではなく、真実を発見することを助ける」
★取調べの録音やビデオ撮影には賛成だ。
しかし、この社説の一番の問題点は、報道機関もまた冤罪を作り出す共犯者だという視点が完全に欠けていることである。
現在でもマスコミが警察発表を鵜呑みにせず、十分に批判的に吟味する姿勢を持てば、冤罪事件の多くは防ぐことができる筈だ。