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鳥越俊太郎著『報道は欠陥商品と疑え』より
検察はあくまで取り調べの立場で、いろいろな材料を集めて、有罪となるように一生懸命努力しています。しかし、それが間違っているかもしれないという考え方は当然あるわけですね。僕は警察や検察が間違った冤罪事件やでっち上げ事件をいくつも見てきていますから、検察がやることを最初から鵜呑みにはできないんです。でも日本のメディアは逮捕、容疑者の段階からどこも100%有罪であるかのごとく書いていますね。最近は少し被疑者の側の言い分を載せるようになりましたが、それでも量からいえば8対2とか9対1ぐらいの分量で、警察、検察側の言い分が載っています。だから本当は冤罪だったとしても、容疑者がその流れに飲み込まれたら、まず助からないんです。 それが困るから、みんな流れに逆らう報道をやらないんです。常に視聴者の風向きと一緒に動くのが日本のメディアの一つの特徴で、結果的にメディアも、政治も、役所も、国民も、みんな同じ方向に走りだしていきます。 職人に大事なのは何よりも直感です。職人はいちいち1足す1が2だから2だと思うという思考ではやっていないんですね。たとえば料理人が味付けをするときは、いちいち料理番組のように醤油や砂糖や塩を小さじ何杯とか、そんなことはしていません。全部目分量です。これは長年の経験で鍛え上げられた「このくらい」という勘なんですね。
ある大きな流れがおきると、それだけがあたかも正義のようになってしまい、その中では「ちょっと違うんじゃないか」とはだれも言えなくなってしまう。そういった日本の文化や国民性と結び付いた横並び体質、均質性をメディアも当然持っていて、それが逆に少数派の人たちに被害をもたらしてしまうということだと思います。
それは犯罪の被害者、もしくは容疑者に対してもそうですね。司法のルールといわれているものに「推定無罪」というのがあって、本来、有罪が確定するまでは容疑者・被告は無罪と推定します。そこから一つひとつ証拠を積み上げていって有罪を立証して、裁判がそれを認めたときに、つまり判決が確定して初めて容疑者は有罪になります。それまでは無罪と仮定する。「推定無罪」という原則に立っているにもかかわらず、日本の犯罪報道は、警察がおかしいんじゃないかと思った段階からすでに容疑者を犯罪者扱いするんです。一社だけが犯罪者扱いするならまだいいけれども、一社が特ダネで抜くと、負けじと他の新聞、テレビ、雑誌がそれに乗ってきて、雪崩現象のようになって、無批判にAという人物が犯罪者だということになってしまう。
(12〜13p)
メディアの報道が雪崩のように同一方向へ走り出す現象は「スタンピード現象」といって、アメリカなどでも起こります。でもアメリカのジャーナリズムは基本的に視聴者やスポンサー、行政などから一定の距離を保とうと努力しているところがあって、流れに待ったをかけてバランスをとろうとする復元力みたいなものを持っているような気がします。その点が、日本のメディアには欠けている。そういった状況の中、僕は本当にいまの報道でいいのか、真実を忘れているんじゃないかという思いが常にあって、一人ぐらいへそ曲がりな奴がいてもいいんじゃないかと思っています。活字も含めれば、僕だけではなくてへそ曲がりは何人もいると思いますが、少数派であることは確かですね。少数派の戦いは、常に苦戦を強いられるんです。
(30〜31p)
一つは、とことん現場にこだわるということです。職人というのは現場で仕事をするんです。会議室でやっているわけじゃないんですね。映画『踊る大捜査線』の青島刑事が叫ぶシーンを覚えていますか。あの映画で「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」と叫ぶシーンがあるんですが、われわれにとってもそのとおりです。ニュースは管理職のところで起きているわけではなくて、現場で起きているわけです。だからできるだけ現場に行って、直接当事者とか関係者に話を聞く。人づてではなく直接間くことが原則です。
(54〜55p)
日本の職人の話を書いた本を読んでいると、零コンマ何ミリの研磨をするにも最後は機械ではなくて手なんです。日本の技術が世界に強いのはそんなところにあって、日本では伝統的に職人の世界がまだ生きています。
……やはり日本は労働者も現場の作業員も、伝統的な職人芸が支えになっているわけですね。そういうことはメディアの世界にもあると思います。僕がこれはニュースだ、ここに少し疑問があると思うのはまさに直感で、それは経験の積お重ねの中で勘がピピピッと来るんです。ある種のコンピューターみたいなものですが、コンピューターと違うのは、何も入力しなくてもパーンとひらめくところですね。
(66〜67p)