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「何をやっているのかわからなくなった」。長崎市北陽町の会社員、種元毅さん(30)の長男で幼稚園児、駿(しゅん)ちゃん(4)全裸殺人事件は12日までに、誘拐殺人などの非行事実で補導された市立中学1年の男子生徒(12)による「夢想殺人」だった可能性が浮上してきた。付添人の弁護士との面会などから分かった。付添人は男子生徒の更生には、当事者さえも認識できていない「心の闇」を解明することが不可欠と判断、精神鑑定を申請して非行事実の根元を探る。
【予想外の表情】
「よろしくお願いします」。男子生徒は昨11日、長崎少年鑑別所で2人の弁護士と面接した際、こう切り出した。身長は165センチ前後でがっしりした体格。丸顔のかわいい顔立ちで「予想外だった」(弁護士)。
環境の変化でよく眠れなかったようだが、食事も取れており、特に落ち込んだような様子はなかったという。
【ブラックジャック】
鑑別所では備え付けの漫画「ブラックジャック」2冊や歴史本、参考書など5冊を借り、暇な時に読んでいる。
ブラックジャックは、故手塚治虫氏の名作。法外な治療費を請求する無資格の天才医師が、次々と難病手術を成功させていく。非情な医師として描かれる主人公は、実は「深い愛情の持ち主」という設定である。
「ゲーム好きで、現実と仮想(バーチャル)の混同から暴走した生徒の内面をうかがわせるものがある」(捜査員)
【謝罪の言葉にも…】
弁護士の受けた生徒の印象は、「頭の切れがあり、言葉の端々にそう思わせる対応をしていた。表情が変わることもあるが、取り乱すことはない」というもの。小さな子供が親しみを覚える感じの少年だという。
生徒によると、犯行当日は早く学校から帰り、荷物を家に置いて家電量販店に行って駿ちゃんと仲良くなった。会話の中で、弁護士は「計画性は感じ取れなかった」。
生徒は「(駿ちゃんの)先をなくしたことは本当に申し訳ない」と謝罪の言葉を口にした。
だが、駿ちゃんの両親には、「心を痛めているが、それをうまく表現できる言葉が見つからない。思いの丈はいっぱいあるが、月並みなおわびしかできない」とも。
【夢の中】
犯行の軌跡をたどり、生徒と弁護士の会話が順調に進むのは、殺害現場となった長崎市万才町の「築町パーキングビル」に到着するまでである。
駿ちゃんは裸足で屋上の手すりに立たされたうえで突き落とされているが、その前後に話が及ぶと、生徒は言葉を濁す。「自分が分からないようになった」と頭を抱えた状態になったという。
生徒は幼稚園のころから、大人顔負けの冗舌で「相手を言いくるめるまで理論を押し通す少年」(知人)で知られた。
だが、非行の動機や状況について口を閉ざしているというより、自分でもまったく認識できていない『夢の中』にいるのかもしれない。
【実感なし】
社会評論家の赤塚行雄さんは「犯行時、少年は陶酔感に浸っていたはず。憎しみとか具体的理由があったわけではない。『分からなくなった』と話すのは当然」と分析する。
国立教育政策研究所の滝充・総括研究官も「殺人が悪いと頭で分かっていても、実感がないのだろう。死を本当に理解していない。被害者を突き落としたところで、現実感が途切れているのではないか」と語る。
【眠れぬ日々】
生徒は調理師の父親とパートの母親の一粒種。一身に愛情を受けて育てられてきただけに、料理人一筋で温和な父親、息子を溺愛(できあい)して過保護・過干渉になった母親の心の傷も計り知れない。
父親は長崎署捜査本部が生徒の聴取に着手する9日朝、勤務先のレストランに対し、「今日は仕事に行けない」と電話したのを最後に、連絡を絶っているという。
付添人選任の打ち合わせで10日に父親に会った弁護士は「まったく眠れず、食事ものどを通らない状態。『今夜もどこに泊まるか決めていない』と言っていた」と、両親を気遣った。
両親は「まさか、自分の子がこんなことをするなんて」と追い詰められているが、生徒は「両親にすまないことをした」とだけ話したという。
【殺意の芽生えと精神鑑定】
犯行の過程で、生徒に「誘拐→いたずら」という意思は確かに存在する。残忍な殺人という重い事実もある。
だが、駐車場屋上でいかに「殺意」が芽生え、確定したのか、弱者にストレスのはけ口を求める「行為障害」があったのかはまだ不明である。
このため、弁護人は最長4週間の長崎少年鑑別所での観護措置のなかで、男子生徒を見極め、家裁での少年審判で精神鑑定を求めていく。
ZAKZAK 2003/07/12