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不条理にも幼い兄妹まで手にかけ、手錠と重りのダンベルを付けて博多港に投げ捨て、列島を震撼(しんかん)させた福岡市東区の衣料品販売業、松本真二郎さん(41)ら一家4人殺害事件。「手引き役と遺体運搬役の女2人」「長髪でバンダナの20代男」「3種類以上の男の足跡」…。松本さんのヤミ金融トラブルも分かり、5人以上の犯人グループが絞り込まれてきた。新事実と現場を歩き、名刑事で『桜田門の顔』の元警視庁捜査一課長、田宮栄一氏(70)は、冷酷無比な事件を大胆推理、暴力団関係者ら裏社会の人間が関与した可能性を指摘する。
【子供の命まで】
世間を戦慄(せんりつ)させたのは、犯人側が20日午前1時半すぎの帰宅を待ち伏せして松本さんを襲う前に、19日午後11時ごろ、入浴中の妻の千加さん(40)、就寝中の長男の海君(11)、長女のひなちゃん(8)の3人も殴るなどして殺害した残虐性にある。
田宮氏は豊富な捜査経験から、「一家殺人で最初に思いつくのは恨みの犯行だ。家族の誰かに強い恨みを抱くあまり、報復として一家全員を皆殺しにする事件は過去にもあった」と指摘する。
4人の首を絞めると同時に、激しく殴った跡もあった。一家に強い恨みを抱く犯人グループが冷徹に犯行に及んだ−との見方が有力である。
「3種類以上の男の足跡から、犯行グループに、兄妹の顔見知りがいたのではないか。目撃者を消す理由で子供に手をかけることはありうる」
松本さん一家を熟知した顔見知りによる犯行の可能性を指摘する。
大柄な40〜50代の女は千加さんの知人とみられ、室内を物色した形跡がないことからも顔見知りを強くうかがわせる。
【ズサンな面も】
20代男は18日の白昼、手錠やダンベルを購入するなど計画性がみられる。4人を20日午前4時すぎまでに博多港に投げ捨てるまで、女2人が手引役と遺体運搬役に役割分担していた疑いがある。
田宮氏は「現場検証からは、犯人が2階で就寝中の兄妹に直接向かったことや、手錠を4人分、ダンベルを子供用に2人分購入していることから考え、最初から全員を殺害し、海に捨てるつもりだった」と断言する。
田宮氏は、博多港と手錠などを販売した量販店がそれぞれ松本さん宅から約3.5キロ、約1キロと近い点に注目する。
現場周辺を歩いた田宮氏は「土地カンのあるはずの犯人グループがなぜ、手錠などを近所で調達して、自宅近くの海に遺棄したのか。あまりにもズサン」と指摘する。
「水深も約2メートルと浅い。発見されるのは時間の問題。『完全犯罪』を目指すなら、コンクリ詰めにして船で外洋に捨てるのではないか」
実際、一家4人の遺体は20日午後2時ごろに発見された。襲撃から1日、遺棄からは12時間もたたないうちに発見されている。どこまでが計画のうちだったのか、首をひねる点も少なくない。
【裏社会が関与?】
数々の矛盾に対し、田宮氏が示す合理的見解は「実行犯のなかに、裏社会や外国人が関与している可能性」である。
「早期発見が予想される場所に捨てたのは、同様の金銭トラブルを抱える相手への『見せしめ』効果を期待したのか。高飛びするまでの時間稼ぎができればいい−という考えではないか」
松本さんは約15年前から福岡市で韓国料理店を経営していたが昨年、BSE問題で廃業している。衣料品販売と、数年前から無許可営業で高利のヤミ金融もしていた。夫婦の周辺にいる暴力団関係者に借金の取り立てを依頼していたという。
廃業に伴う借金問題のほか、知人に金を貸したり、友人から集めた600〜700万円を金融業の親類に事業資金として出資、金銭トラブルに陥っていたという。
田宮氏は「飲食業は比較的裏社会との接点も少なくない。店の関係から松本さんの場合、外国人との付き合いもあっただろう」と推理する。
松本さんは祖父の遺産をめぐって、関係者ともめていたとされるなど、事件直前、周囲に金銭トラブルの悩みを打ち明けていたという。
福岡県警東署捜査本部は、松本さんが金銭トラブルに巻き込まれ、恨みから殺害されたとの見方を強めており、暴力団関係者もリストアップし、犯人グループの割り出しに全力を挙げている。
こうした経緯を踏まえて、田宮氏は大胆に犯人像を推理する。
「動機は恐らく金銭トラブル。裏社会の人間が関与したグループ犯罪だとすると、実行犯は金で雇われたプロの殺し屋。動機のある主犯格は黒幕に徹し、直接手を下していない可能性もある」
遺体発見から1日で11日。捜査本部は捜査員約150人で犯人像を絞り込んでおり、20代男もほぼ特定されたという。
犯人の男2人が遺体運搬に使った松本さんのベンツを約35キロ先の久留米市の駐車場に乗り捨てる際、国道3号で県警のN(ナンバー)システムにキャッチされていた。
着々と捜査が犯人グループに迫るなか、田宮氏は「遺留品から実行犯を割り出す『ブツ読みの捜査』と、交友関係を洗って動機面から絞り込む『ヒトの捜査』を平行しているはずで、いずれ犯人が捜査線上に浮かぶはずだ」と説明している。
●田宮栄一(たみや・えいいち)氏
元警視庁捜査一課長。昭和7年台湾生まれ。中央大法学部卒。27年に警視庁巡査を拝命し、数多くの現場を経験後、花形の捜査一課長として、羽田沖の日航機墜落事故やホテル・ニュージャパン火災の捜査などを手がけた。
その後、新宿署長、警察学校長、警ら部長。ノンキャリアとしては最高位の警視監まで昇進し、平成元年に退官した。未解決事件のナゾに迫った『未解決殺人事件ファイル 捜査ケイゾク中』(廣済堂出版)の監修を務めたほか、TVなどでも活躍する。
ZAKZAK 2003/07/01