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http://japan.cnet.com/news/pers/story/0,2000047682,20054147,00.htm
エキスパートの視点:
Linuxと64ビットコンピュータが標準となる日
Richard Seibt
2003年5月7日(水) 10時00分
これまで64ビットプロセッサは、ほとんどのITビジネスが辿る値下げ競争になんとか巻き込まれずに済んでいた。
64ビットシステムの多くは、ベンダーの独自OSしか動かせないように作られてきた。このようなシステムは法人向けコンピュータ販売に占める割合もわずかで、値崩れを免れることができたのである。どこで買っても大差ないx86プロセッサとは対照的だ。しかし、今月初めにAdvanced Micro Devices(AMD)が64ビットのOpteronプロセッサを発表したことで、かつての優位性はもろく崩れ去ろうとしている。
ここでも値下げ競争の歴史が繰り返されようとしているわけだ。
Itaniumプロセッサは、おもにWindowsとLinuxを想定した仕様になっていたとはいえ、OSを限定しない初の製品だった。他社のプロセッサは、ベンダー固有の設計がなされていたため、使えるOSも最初から限定されていた。だがIntelにとって不幸だったのは、2001年にデビューしたItaniumプロセッサの企業での導入が、思った以上に遅々として進まなかったことにある。
その理由のひとつは、市場がほかの64ビットプロセッサの選択肢も求めていたためだ。作家やベンチャー投資家などの顔を持つGeoffrey Mooreはある時、「市場は競争なくして発展なし」と述べている。先日お目見えしたOpteronのAMD64アーキテクチャにより、この指摘は64ビット製品市場でも現実のものとなった。
OSに対するプロセッサの縛りがなくなったことで、IntelとAMDはITユーザーに費用効果に基づく選択を許したことになる。とりわけエンタープライズでの64ビットプロセッサに対する潜在的な需要は一気に開花するだろう。大手企業ではすぐにでも導入に踏み切るか、製品の検討に入るはずだ。最近出されたEvans Dataによる開発者向けの調査結果では、64ビットのアーキテクチャは今後重要になると全体の53%が答えている。さらに、64ビットシステムをすでに導入済み、もしくは検討中、との回答が同率を占めたことが分かった。
64ビットプロセッサで動くLinuxの有効性は、同様のアーキテクチャを持つシステムの中でも興味深い可能性を秘めている。企業においてLinuxは、x86プロセッサ搭載PCからIBMのメインフレームに至るまで、あらゆる重要なアプリケーションを動かすために実装されるようになった。CIO magazineの調査によれば、375名の情報部門担当者のうち54%が、今後5年以内にオープンソースは自社のサーバプラットフォームの主流になると答えている。
これら二つのトレンドの流れ、すなわち一般化された64ビットアーキテクチャとLinuxは、合流しつつあるようだ。5年後、32 bitのサーバやノートPCを購入するITユーザーの姿は消え、64ビットサーバとLinuxの組み合わせが標準になると見られる。しかし、IT業界で忘れてはならないことがある。顧客が求めているのは、単なる箱物のコンピュータではなく、アプリケーションをサポートするシステムなのだ。つまり、ほかの重要なソフトウェアコンポーネントが整備されるまでは、新システムへの本格的な移行は始まらないだろう。
重要度の高いITアプリケーションは押しなべて、データベースが基盤となっている。そのためOracleやIBMといったソフトウェア企業は、何よりも自社のデータベース製品を新しい64ビットプラットフォームに対応させることが先決だ。しかし各社は今のところ、64ビット製品市場の手ごたえをつかんだ上で本格的な開発に乗り出そうという構えだ。だが、各ベンダーの様子見状態もそう長くは続かないだろう。データベース製品は4GB以上のメモリ空間を直接利用する必要があるため、これら製品を64ビットシステムに対応させることで得られるメリットは他のアプリケーションより大きいことが明らかだからだ。
多くの独立系ソフトウェア企業もまた、自社製品群の64ビット対応が急がれる。例を挙げれば、お馴染みのERPやCRMといった統合アプリケーション製品群である。すべての64ビットCPUサーバが単一のLinux統合環境のもとで稼動するようになれば、アプリケーション移植作業の負担も大幅に軽減するだろう。また、UNIXやLinuxを利用してアプリケーション開発を進めてきたIT企業も大きな恩恵が受けられるため、情報インフラを64ビットの新環境に置き換えることにそれほど抵抗はないはずだ。
こうした動きは次世代ITサーバの到来を告げるものだろうか。私たち技術屋はそんな世界が訪れる日を、首を長くして待ち続けてきた。そして、それはもう目の前まで来ているのだ。
筆者略歴
Richard Seibt
SuSE Linuxの会長兼CEO。IBMで20年間に渡り、ヨーロッパ各国法人のソフトウェア販売マーケティング部門CEOなどを含む、数多くの部門の執行役員を歴任した。