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総務省の放送政策研究会及び同省が示した規制緩和案では、ローカル局の経営を支援するためのキー局の関与は「経営破たん時」に限るなど、最小限にとどめようとの考え方が見て取れる。(西 正)
■■キー局肥大化を警戒
キー局の関与を最小限にしたのは、ローカル局を傘下に収めることを安易に認めると、キー局が肥大化することを警戒したものと考えられる。あくまでも「地域性」を確保するためと理由付けられていた。
ところが、現場サイドのテレビ局からも、規制緩和案の実効性につき疑問視する声が多く寄せられたことから、新たに総務省としての規制緩和案が示されることになった。
同省は、「マスメディア集中排除原則の見直しに関する基本的考え方」をまとめ、広く意見募集を行った。それによると、ローカル局間の兼営を可能にする場合につき、隣接県の2県に限定していた放送政策研究会案を拡大し、原則として連携しようとする地域すべてが、そのうちのいずれか一つの地域に隣接している場合のすべてを認めるというものである。
イメージ例として、当該局に隣接する4局ケースの例や、当該局が2局と1局に隣接する場合を例示した。形からすると「向こう三軒、両隣」というもので、兼営可能範囲は著しく拡大することになった。
もはや、地域性の確保という言葉は、建前論に過ぎないことが明らかになり、キー局による支援を避けることさえ出来れば、兼営する範囲は、東北、東海、九州といったブロック内全域に拡大しても構わないことになる。それでも、ローカル局がキー局の傘下に収まってしまうことに比べれば、地域性は確保されるということなのであろう。
ローカル局が地域文化の拠点であるとの考え方は間違ってはいないが、現状を直視してみて、本当に、そうした地域性が維持されているのかどうかは検討に値することであると思われる。
■■ローカル情報は10〜15%程度
キー局各社が系列のローカル局に資本を入れると、地域性が失われると言われるが、それならば、今は地域性のある放送が行われていると言えるのだろうか。ローカル局の放送している番組のうち、ローカルの情報が流されている比率は、せいぜい10〜15%程度というのが現実である。
静岡県のテレビ局は、県の東西境が、03年から地上デジタル放送を開始するため、非常に厳しい立場にあるということが指摘されている。
すなわち、関東地方でデジタル放送が始まって、中部地方でデジタル放送が始まると、間に挟まっている静岡県のテレビ局は苦しい状況に追い込まれる。同局がいつまでもアナログ放送のままであると、静岡県の東西地区にある世帯のアンテナが東京や名古屋に向けられてしまい、静岡局の放送エリアが事実上縮小し、広告営業に支障をきたすのではないかという指摘である。
ところが、それは現時点でも、既に起きている現象なのである。伊豆半島の東海岸でテレビ放送を見ると、どこでも東京のキー局の番組がそのまま流されている。長野県でも同じことが起きている。軽井沢でテレビ放送を見ると、東京キー局の番組がそのまま流されている。諏訪のケーブルテレビ局も、東京キー局の放送を受けて流している。それが現実である。
地元のテレビ局の番組を見るか、大都市圏のテレビ局の番組を見るかを決めるのは、地域の視聴者なのである。つまり、大都市圏のテレビ局の方にアンテナが向いてしまう理由は、大都市圏のテレビ局の放送の方が面白いからに過ぎないということだ。ローカル局の放送に、本当に地域性があるのであれば、アンテナが大都市圏のテレビ局の方に向くことなどないはずである。
つまり、ローカル局が、きちんと魅力あるローカル番組を作っているかどうかがポイントなのであって、政府の規制緩和案には、そうしたローカルの実情が何ら反映されていない。
■■地域ブランドを生かせ
どこの系列局でもそうであるが、1週間のプライムタイムの中で、ローカル枠が何時間か設けられている。例えば、ある系列では、ある曜日のプライムタイムの1時間枠をローカル枠にして、系列各局はその時間帯に自分たちの制作した番組を流すことが出来る。地域性を重視する政策が取られるのであれば、そうした枠が有効活用されていることが前提のはずである。
もちろん、キー局も関東地方のローカル局として、独自の番組を制作して流すわけだが、その時間帯には全国ネットで流してはいないということだ。その枠について考えると、ローカル局には、1カ月に4回、自由に放送するチャンスがある。
毎週が無理なら、4週間のうちの1週間分は自主制作して放送し、残りの3回はキー局の制作したものを買ってきて放送することも出来る。もちろん、毎週、自主制作出来るところは、それを流すチャンスがあるということだ。
そうした枠がどのように活用されているか知るために、ローカル局各社の番組表を入手して調べてみた。極端なケースでは、独自に制作した番組を放送しているところは2局しかなかった。さらに何カ月かのタームで調べてると、東名阪を別にすれば、どこのローカル局も独自の番組を作らなくなってしまっているケースも見られた。
自主制作をせず、それでいてキー局の制作した番組も流さずに、何を放送しているのか。何と、テレビ東京の番組を買って流しているのである。テレビ東京は系列局の数が限られているため、他系列のローカル局と競合しない地域が多い。だから、番組を買ってきて流すには最適の購入先だというわけである。
そうした実態を踏まえて考えると、政府が大事にしようと主張している地域性とは一体何なのか、非常に疑問であると言わざるを得ない。
デジタル化後のローカル局の明日を明るいものとするためには、政府による規制緩和以前に、ローカル局が自身の地域ブランドを生かしていくことが重要なようである。