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(回答先: Re:新たなる国生みへの手がかりへ 《共同的資本主義論》 投稿者 馬場英治 日時 2003 年 7 月 30 日 12:24:26)
マルハナバチさん:
前号追伸の宿題はもう終わりましたか?なぁーんて,うそですよ.よく数学の教科書などで,
この証明は読者への宿題とするなんて書いてあるのは大体先生が手抜きして飛ばしたとこ
ですから.数学系のリストではこの種の「いじわる」は何時ものことなので気にしないでくだ
さい.これまでの説明で,宿題になっている外国為替交換の問題を除き,ほぼ一通りの説
明を終えたのではないかと思いますので,一番最初の出発点に戻ってみましょう.
> 貯蓄をしなくても(貯蓄が出来ないでも可)死ぬまで安心して生活できるシステムをつ
> くれば、財に対してだけではなく広範囲にお金(可処分所得)を使うようになるでしょう。
日本国内のすべての銀行は日本銀行に当座預金を持っていますが,共同的資本主義を
行なう都市国家には通常の意味での銀行は無く,すべての市民・法人は中央銀行に直接
自分の当座預金口座を持ちます.当座預金は金利の付かない要求払い預金で,預金と言
えば預金ですが,貯蓄というイメージはありません.市民は中央銀行の無利子金融を使っ
て,かなり容易に資産を手に入れることができますから,もちろん財に対してだけでなく広
範囲にお金(可処分所得)を使うことができます.中央銀行は預かり金を運用することは
ありません.つまりこの銀行システムは non-fractional reserve banking です.
> 誰に増税するかは重要な問題ですが、政府が主導しなければならないことが多いと
> 思っています。
増税は不要です.この都市の租税制度は取引税と法人外形課税の2本立てというシンプ
ルな構成でかつ,驚くほど低率です.この低負担の根拠は銀行システムの事実上の廃止
(接収)により,寄生的に搾取されていた「余剰利得のすべて」が経済循環の中に還流する
こと,担税捕捉率が100%であることなどによります.
> 死ぬまで安心して生活できるシステムをつくることに税金を投入してください。
> (身体が動く人はなにかをしなければならないという対価が必要でもかまいません)
この都市の年金と保険制度は完備しています.保険制度(災害・海難・生命・健康・賠償)
についてはこれまでまったく触れていませんが,無利子金融実現のための(物価の安定と
並ぶ)もう一つの大事な要素です.この都市の証券市場は投機的でないので,市民は資産
形成のために貯蓄ではなく,証券投資を行ないます.通常の業績を挙げている企業は1割
配当ができるので,リタイア後も公的年金に加えて,十分な配当収入を得ることができます.
貯蓄しないというのがこの都市の生活スタイルなので,中にはリタイアの時期に一文無しと
いう人も現われますが,(本人がどうしてもというのでなければ)ホームレスをやる必要はあ
りません.住み替えが容易なので,放浪癖のある人でも抵抗無くほとんど家を持っています.
(後述のように土地は共有されているので,どこにテントを張っても特に文句を言う人もいま
せんが.)本人に働く意思がある限り仕事は常にあります.完全雇用は政府の最初に果た
すべき責務ですが,通常は本人の「希望すること」をやって収入を得ることができます.
この都市には固定資産税も相続税もないので,財産を減らすことさえなければ増える一
方です.従って莫大な資産をもつ家族も決して少なくはありません.ほとんどの家に大き
な図書館とプールがあります.貧しい人もいないわけではありませんが,人の富をうらや
むということはあまりありません.すべてのチャンスが公正に与えられているからです.支
配・隷従という関係はこの都市ではほとんど見られません.(この記述はこの社会では共
有が進むという以前の説明に反するようですが,どちらに傾くかは市民の選好によります.)
この都市では土地は減価しないという理由から当初から共有物になっています.なぜか
というと建物など資産価値が滅損するタイプの資産の場合には購買価格と耐用年数から
その資産の所有権を得るための最小所有費用というものが計算され,最低限その金額を
月々支払わないと所有できないという仕組みになっていますが,土地の場合滅損というこ
とが起こらないので,最小所有費用がゼロということになり,結果,誰でもタダで使えると
いうことになりました.つまり,土地は資産ではなく,水や大気などと同様に共有資源であ
ることが確認されたのです.中南米の原住民やアイヌの伝統的システムへの復帰ですね.
再資源化のコストは自由貨幣によって支払われ,専門業者が処理します.これはトータ
ルコストの点からももっとも安上がりであることが分りました.消費者や所有者にコストを
負担させ,製造メーカに最後まで責任を負わせる方式は事務経費だけで再資源コストを
上回ってしまうことが判明したからです.現在の資源リサイクル率は99.9%です.再資
源化された資源は誰でも無料(かないし低額)で払い下げを受けることができます.
通常は貿易相手国の通貨で決済しますが,相手国が承認すればもちろん自国通貨を使
った決済も行います.ドルのような国際通貨ももちろん使われます.いずれにせよ外国為
替交換が必要になりますが,国際的な信認を得られているので特に問題はありません.
外国資本の導入も積極的に行なっています.外国資本はまず都市の中央銀行で自由貨
幣と自国貨幣(ないし国際通貨)を交換した後,都市の証券市場に投資します.両替で得
られた外国貨幣は国庫収入ではないので,単なる預かり金として保管されます.なお,
貿易取引では輸出入いずれの場合も,自由通貨が移動した時点で取引税の課税対象と
なります.外国通貨の移動には課税されません.両替の場合も同様です.外国の為替
銀行はこちらの中央銀行に当座を持っていて,(電子)貨幣自体は海外に出ません.
英治
ps: 共同的資本主義でテクニカルに見てもっとも難しいのは無利子金融の部分です.
前にイスラム銀行家の悩みについて,銀行家と投資家を兼ねなくてはならないジレンマ
と書きましたが,書き落としたのは同時に企業家(執行役員)の役割も一部果たさなくて
はならないという点です.しかも我々の場合は官吏でもあります.イスラム銀行の実践
もかなり経験を積んでいると思いますが,何か画期的なブレークスルーが必要かなと
いう気もします.国家は株式会社であるとどこかで書きましたが,この巨大企業つまり
官僚システムが機能しなければこのシステムは死んでしまいます.民と官の境界を取
り払うようなことができればいいのではないかと思うのですが...