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(回答先: 薬を売るための陰謀が渦巻いているようですね。 投稿者 シジミ 日時 2003 年 8 月 29 日 21:45:17)
「いま医薬品を見直そう」 シリーズ 全国保険医新聞掲載
http://npojip.org/newspaper/hodanren/040.htm
詳しくは、「薬のチェックは命のチェック」季刊誌 第2号 「コレステロールは悪玉じゃない」
http://npojip.org/jip_book/magazine/magazine0021.htm
第40回 1)メバロチンは本当にEvidence−Basedか?
日本人に対する一次予防のエビデンスを正しく分析すれば 1999年5月15日
はじめに
コレステロール低下剤など高脂血症用剤の日本での1998年の推定市場規模は約3000億円、プラバスタチン(メバロチン)だけで1850億円(スタチン剤合計2500億円)。「Evidence−Basedメバロチン」「エビデンスに基づく高脂血症治療」などと宣伝されていることから、"EBM"を製薬企業の宣伝文句と誤解する人もいるほどである。
しかし、心筋梗塞ほど欧米と日本で発生率に差のある疾患はない。日本人にとって、コレステロール低下剤は3000億円も毎年使う価値のあることか?これらのエビデンスはすべて外国のものだ。外国のエビデンスをそのまま日本人に当ててよいものだろうか?害はないのか? TIP誌1999年6月号で適切なEBMの手法による分析・検討を試みた。そのサマリーを紹介する。
コレステロール低下剤開発の歴史は、失敗と薬害の連続
コレステロール低下剤の開発の歴史を端的に言えば失敗と薬害の歴史であった。
アセチルCoAからコレステロールが合成されるので、その過程の阻害物質を投与してコレステロール合成を抑制しようという考え方でコレステロール低下剤の開発が進められてきた。
アメリカでは1949年に開発が始まった。初期のコレステロールそのものによく似た物質はコレステロールは確かに下げるが、その前段階の物質や投与したそのものが蓄積して重大な肝障害や副腎不全などを起こして開発が次々に断念された。
市販された最初のコレステロール低下剤「トリパラノール」も2年後の1962年には早々と発売中止になった。
長期臨床試験で薬害が続出
その後、アメリカでは数種類の冠疾患用剤について、心筋梗塞を発症した患者を対象に心筋梗塞の再発予防をエンドポイントとして、長期のランダム化比較試験(RCT)が実施された。エストロゲンの高用量では肺梗塞が多発して2年足らずで臨床試験が中止になり、少量エストロゲンでは癌死亡が多発した。
その他3種類が試験されたが、いずれも総死亡が不変あるいは増加し、害反応は多く、有用性は証明されなかった。
WHO(世界保健機関)が実施したクロフィブラートの一次予防試験(コレステロール値平均248mg/dlの男性)では、総死亡率は有意に増加し悪性腫瘍も増加の傾向があった。
ジェムフィブロジル(フィブラート系)は、コレステロール値が平均約290mg/dlの非常に高い人を対象としても、死亡率や悪性腫瘍死亡率はプラシーボ群よりも高い傾向があった。フィブラート剤は動物実験で肝悪性腫瘍の増加が確認されている。
プロブコール(ロレルコなど)は長期試験は実施されておらず、動物実験で不整脈から突然死、人でもQT延長が認められ、心室性不整脈には禁忌である。
スタチン剤の登場とエビデンス
スタチン剤は、コレステロール低下剤としてはじめて長期試験で本格的に寿命を延長する可能性を示した物質である。
シンバスタチンでは心筋梗塞後の二次予防に使用して総死亡率が低下した(4S研究)。WOS研究では心筋梗塞の既往のない高コレステロール血症の男性に対して、プラバスタチン群で総死亡率が低下する傾向(P=0.051)を認めた。
これらの外国でのエビデンスをもって「エビデンスに基づく高脂血症治療」"Evidence Based Pravastatin"と宣伝されているが、これは、以下に詳しく述べるように、極めて誤解を生みやすく、エビデンスを欠く表現である。
高脂血症用剤による虚血性心疾患予防効果とリスク
(1)リスクの減少は5年間で1%足らず
プラバスタチンを心筋梗塞のない高コレステロール状態の人に使用して心筋梗塞の予防や死亡率を改善した研究は、メバロチンの宣伝で引用される8文献のうち、一つだけである。5年間で死亡率が22%減少したとされるが、これはあくまで相対的なリスク減少。死亡率は4.1%から3.2%に減少したに過ぎず、ARR(絶対リスク減少)は0.89%、NNT(治療必要人数)は112であった。
(2)外国人でのエビデンスだけ
WOS研究は、コレスロール値が著明高値(平均で272mg/dl、全員250mg/dl以上)で、喫煙率45%、合併症もあるなど、あくまで相当ハイリスクのヨーロッパ人男性でのエビデンスであり。女性ではエビデンスはない。日本人については全くエビデンスがない。
(3)日本人はコレステロールが高い方が死亡の危険は少ない
日本人はコレステロールが最も高い(240mg/dl)人の死亡の危険が最も低い(後述)。橋本らは、高コレステロール血症患者に対する薬物療法の効果に関する研究と、日本人の虚血性心疾患の罹患率に関する文献の体系的な調査を行い、何人の患者にコレステロール低下剤を使用すれば心筋梗塞を一人防ぐことができるか(治療必要人数=NNT)を求め、一人の心筋梗塞を減らすのに男1.3億円、女5.3億円の費用がかかると推定した。若い人ではNNTは1万人を越えるので重大な副作用が1万人に一人でも起これば、治療の意味は無くなる。
メタアナリシスの結果を引用して虚血性心疾患の死亡率が1000人当たり10以下の集団では、コレステロール低下剤で全死亡が22%増加したことから、スタチン剤が日本人の総死亡を増加しないという根拠は今のところないと、正しく指摘している。
この点で画期的な論文といえる。ただ、心臓病以外の病気や総死亡への影響と、費用計算について不足している部分がある。これらの点を詳細に検討し、その結果をTIP誌に記載した。
日本人はコレステロール値が高いほど長生きする
欧米人は、かつて10万対約400人(全死亡の40%)以上が心筋梗塞で死亡し(日本人の約10倍)、血清コレステロール値は心筋梗塞のリスクファクターとして指摘されたため、もっぱら心筋梗塞との関連が問題視されてきた。
しかし、人は心筋梗塞だけで死ぬわけではない。癌や事故、肺炎も死因となる。日本人の心筋梗塞による死亡はせいぜい6〜8%。癌や他の疾患の方が圧倒的に多い。コレステロールが低すぎると脳出血、癌、うつ病や自殺、事故死の増加が指摘されている。
健康な日本人1万人以上を追跡したデータが二つある。一つはIsoらによる大阪府八尾市の住民を約9年間追跡した調査。もう一つは、全国300カ所で実施された1980年の厚生省国民栄養調査の対象になった1万人あまりを14年間追跡した上島らの調査である。いずれも出発点でコレステロールの値を測定している。
Isoらの報告では男性はコレステロールが34mg/dl低くなると死亡の危険が21%大きく、癌の危険で死亡する危険が26%大きかった(社会階層や栄養状態を補正してもいずれも統計学的に有意であった)。
上島らの報告では、コレステロールの値を20mg/dl毎で区切って死亡率を計算し、コレステロール値が160〜179mg/dlの危険度を1とした場合の、他のコレステロール値の群の相対危険度を死因別に出している。図1はこれを40mg/dl毎に区切って示したものだ。コレステロール値が低いほど死亡の危険度が大きく、高いほど少ないことが明らかである。
世界各国の約30万人のデータを合わせて集計した研究では、循環器以外の病気、特に消化器や呼吸器の病気、外傷(事故など)はすべてコレステロールが高い方が死亡の危険が少なかった。図2に癌・循環器以外の死亡との関連を示した。
日本では、コレステロールが高いほど死亡の危険が大きいのは心筋梗塞だけ。欧米でも、呼吸器疾患や消化器疾患では、低コレステロール値が危険因子となるだけでなく、コレステロール値が高いほど危険が少ない点が注目される。
欧米では循環器疾患が死因の50%以上を占め、そのまた80%が心筋梗塞である。しかし、日本人では循環器疾患は全体の30%、心筋梗塞は循環器病の4分の1。全死因の6〜8%に過ぎない。だから全体への影響は少ないのである。
コレステロールの有益な役割と危険因子としての役割
肝硬変や癌ではコレステロールが低下するため、コレステロール低値は病気の結果であって原因ではないとの解釈もあり得る。しかし、コレステロールは細胞の構造や機能の要である生体膜の重要な構成成分で、細胞の構造や機能を保つために必須の物質である。また、ステロイド系ホルモン(糖質コルチコイドなど計5種類)の原料である。不足による悪影響の可能性を考えれば、コレステロール低値は病気の結果であるよりも、原因として重視しておくべきだ。少なくともその可能性を否定する根拠は今のところ明らかでない。
以上のことから、冠疾患を持たない日本人のコレステロールを下げることは、むしろ危険を増大させる可能性が高いということが容易に想像できる。
薬剤費は5年間で一人百十万円、医療費全体で百五十〜百八十万円也
薬剤費の計算で橋本らは日本人の常用量1日10mgを使用したが、WOS研究で心筋梗塞を2.4%減らすことができたのは、毎日40mg使ったからだ。
日本人の費用計算にも1日40mg相当量(体重差を考慮して32mg)を用いると、薬剤費は1人5年間で109万円となる。
節減医療費を医療経済学では考慮する。診療費や受診のための時間を労働喪失時間分の賃金に換算した。コレステロール低下で心筋梗塞が減少する分、医療費は節減になるが、別の原因で総死亡は大きくなる。このため逆に増加も考えられるので疾患予防による節減医療費は考慮しなかった。メバロチンに必要な薬剤費は、1人あたり5年間で109万円(187×3.2×365×5)。医療機関に4週間に1回受診すれば5年間で65回受診することになり、再診料や検査料、処方料など診療費を1回2000〜6500円(平均4000円)とすると5年間で1人13〜42万円(平均26万円)。間接費は1時間あたり賃金1500円で計算すれば5年間で合計約30万円(3×13×5×1500)、1時間あたり750円で計算すれば15万円。薬剤費以外に必要な経費は、合計28万円から72万円。直接間接経費合計で一人あたり140万円から180万円となる。
コレステロール値を下げると死亡の危険増も
コレステロールが240mg/dl以上の人は160〜199mg/dlの人に比べて心臓病は増えても他の病気が減るため、死亡の危険度は、男性は0.80倍(20%減)、女性は0.94倍(6%減)となる(図1)。逆に考えると、コレステロール240mg/dlの日本人を160〜199mg/dlにすれば死亡の危険は男性で25%、女性でも6.3%増加する可能性がある。
したがって、男性は97人にメバロチン32mgを5年間投与すると一人余分に死亡する可能性があり、女性では463人で1人余分に死亡する可能性がある。費用に換算すると、男性は1.2〜1.7億円(薬剤費1.1億円)使うごと、女性は4.7〜7.4億円(薬剤費4.2億円)使うごとに1人余分に死亡する可能性があることになる。
詳しくはTIP誌を見て頂きたいが、心筋梗塞を1人減らすのに必要な医療費は男性で2.8〜4.2億円(内薬剤費2.5億円)、女性では17億円から26億円(内薬剤費6.3億円)必要である。心筋梗塞を予防できるとしても、これだけ高額の費用を必要とするし、コレステロール値が高い以外、他に心筋梗塞の危険因子を持たない人のコレステロールを低下させると癌や事故などが増える結果総死亡率が増える可能性が高いとなれば、一体どのような人がコレステロールを下げるべき人なのだろうか。少なくとも、狭心症のない単にコレステロールが高いだけで300mg/dlまでの人は、これまでのデータからも薬は不要であろう。
コレステロールを下げる必要のある人(低下の手段は食事や低下剤など種々)は、既に狭心症になってしまったコレステロールの高い人、極端に心筋梗塞の危険の大きい人だけに厳密に限定するべきである。「エビデンスに基づく高脂血症治療」などの表現は、誇大広告に相当するので中止すべきである。
【参考文献】
TIP誌vol 3:27,1988
同 6:33, 1991
同 6:86,1991
同 10:11,1995
同 11:28,1996
同 14:61,1999
表1 1人の心筋梗塞、死亡を減らすのに必要な費用
★1.心筋梗塞を1人減らすのに必要な費用=1人あたり費用×NNT
男性:最大4.2億円、最小2.8億円(内薬剤費2.5億円)(NNT=230)
女性:最大26億円、最小17億円(内薬剤費15億円)(NNT=1400)
★2.死亡に関するNNT、NNH(死亡)-pooled data使用、間接的方法で推定
男性:最大7.3億円、最小4.9億円(内薬剤費4.4億円)使用で死亡1人予防
女性:最大11億円、最小7億円(内薬剤費6.3億円)使う毎に死亡1人増加
★3.日本人の追跡調査成績(上島調査)を使った直接的方法による推定
危険を最大に見積もれば
最大医療費 最小 (内薬剤費) NNH(死亡)
男性:1.7億円 1.2億円 1.1億円 97
女性:7.4億円 4.7億円 4.2億円 385
男女:2.9億円 1.9億円 1.7億円 158
男女合計で、医療費2.9億円(薬剤費で1.7億円)使用するごとに1人死亡
男1.7億(1.1億)、女7.0億(4.2億)で1人死亡する可能性がある。
★4.危険を最大に見積もれば、年間最大1400人超過死亡している可能性がある
(それ以上の可能性も否定はできない)
NNT:Number Necded to Treat NNH:Number Necded to Harm
表2 結論と提案
1.コレステロール低下剤を、狭心症を発症しておらず、心筋梗塞のリスクのない、単なる高コレステロール状態の人に使用すべきでない。
2.日本人に対する高脂血症用剤は「虚血性心疾患が確定診断された高脂血症患者」および心筋梗 塞危険因子を複数有するなど、ハイリスク者に厳密に限定すべきである。
3.「虚血性心疾患が確定診断された高脂血症患者」等ハイリスク者において使用すべき血清総コレステロールの値については、今後の検討課題である。
4.「エビデンスに基づく高脂血症治療」、"Evidence−Based pravastatin"の表現は誇大広告であり、中止すべきである。