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http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news_i/20030819so12.htm
Ｅ型肝炎ウイルスの国内感染が報じられて約１年後の今月、兵庫県でシカの生肉による集団感染が明らかになった。先進国でＥ型肝炎の感染源がわかったのは初めて。北海道では急性肝炎の最大原因と疑われており、感染経路の解明が注目されている。（増満 浩志）
◆厚労省「生食避けて、加熱を」
Ｅ型肝炎は、ごく最近まで「日本にはない」とされていたが、その常識が覆り、各地で調査が開始された。そして、表のような特徴が分かってきた。地域的な偏りについては「たまたま研究の進んだ所で患者が見つかっているだけ」との見方もあるが、北海道で多発していることは明らかだ（図）。
手稲渓仁会病院（札幌市）で、１９９９年１２月から２００２年１１月までの間に原因不明と診断された急性肝炎、計３５人の血清を再調査した結果、１４人（４０％）がＥ型肝炎と判明した。同市内の勤医協中央病院でも、９７年以降の６年間に発症した患者１０人が、いずれもＥ型肝炎と確認された。
両病院とも、患者数はＡ型肝炎をしのぎ、急性肝炎の中で第１位だった。
感染源は何なのか――。５種類ある肝炎ウイルスの中で、Ａ型とＥ型は主に飲食物から経口感染するが、潜伏期間が１か月前後と長いため、原因の食材を突き止めるのは通常、不可能に近い。ところが兵庫県の例は、食べ残しのシカ肉が冷凍庫に保存されていたため、発症後にここからＥ型肝炎ウイルスを検出することができた。
全日本養鹿（ようろく）協会によると、シカ肉は北海道を中心に年間約３００トンが国内で流通している。「珍しい肉を食べた後に発症したら、患者も『あれが原因では』と思い当たりそうだが、そういう話はあまり聞かない」（道内の医師）と、シカ肉との関連に慎重な意見がある一方、三代俊治・東芝病院研究部長は「狩猟の獲物の肉を食べるのは、大半が男性。それが感染源ならば、Ｅ型肝炎の患者が圧倒的に男性に多い、という事実とも符合する」と語る。実際、鳥取県ではイノシシのレバーを生で食べた男性ハンターが、Ｅ型肝炎に感染して死亡している。
Ｅ型肝炎は、豚にも感染する。北海道では、市販の豚レバーの２％から、このウイルスが検出された。その中には、患者から取り出されたウイルスと遺伝子が一致するものもあったことが、岡本宏明・自治医大教授らの調査で明らかになったばかりだ。
道内の病院で患者１０人に尋ねたところ、「あまり加熱しないで豚レバーを食べた」という人が数人おり、生食の危険性が示唆されている。
肝炎ウイルスは肝臓（レバー）で増殖し、血流に乗って筋肉にも運ばれるが、豚は免疫ができ、大半が出荷期までに血中からウイルスを駆除する。このため、岡本教授は「レバーには遅くまでウイルスが残る可能性があるが、通常の豚肉は心配ない」と話す。
また、三代部長は「少しでもウイルスがあれば感染するというわけではない。サルを使った米国の実験で、ウイルスを血液に注入すると発症するが、口から食べさせるとかなり多量でも感染しないという結果が出ている」と語る。
では、Ｅ型肝炎を防ぐには、どうしたら良いのか。一つのポイントは、生肉を避け、加熱して食べることだ。
シカ肉の感染例が明らかになった今月１日、厚生労働省は「野生動物の生肉に注意を」と、都道府県に通知した。特に、妊婦はＥ型肝炎に感染後の死亡率が高いといわれるため、「生食は控えて」と強調している。熱には弱いウイルスとみられており、「通常の加熱調理で十分」（同省）という。
先月３１日、厚労省はＥ型肝炎の研究班を発足させた。感染経路の解明とともに、ウイルスのタイプによる症状の見分け方や、診断技術についても研究を進め、ナゾに包まれたＥ型肝炎の実態把握を目指す。
(2003年8月19日 読売新聞 無断転載禁止)
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