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骨髄移植に代表される造血幹細胞の移植に新しい動きが出ている。「母子間長期免疫寛容」という新仮説に基づく移植方法だ。白血球の型(HLA)が一致する提供者が見つからず、移植を受けられなかった多くの人たちに、今後、肉親からの移植が受けられる道が開けそうだ。まだ確立された治療法ではないが、緊急時に実施され、一定の成果を上げつつある。
妊娠時、母体にとって受精卵は“異物”だが、不思議に排除されないで子宮内で順調に育つ。
「妊娠中の母子はお互いに体を“共有”しており、異物を排除する免疫作用が起こりにくい免疫寛容の状態と考えざるを得ない」と京都大病院血液・腫瘍(しゅよう)内科の一戸辰夫医師。
妊娠期間の終了で、それも終わるはずだが、実はその後も母子間では免疫寛容状態が続いていることがあるらしい。
「妊娠中、母子間では血液の交流があり、出産後も母には子の、子には母の血液細胞がごく少量だが残っていることが分かってきた」(同医師)
実際に血液中からお互いの細胞が検出でき、そのことは母子間では免疫寛容状態が長期間続いていることを示しているかもしれないという。
▽兄弟姉妹間にも応用
仮説が正しいなら、HLAが一致しなくても、母子間の造血幹細胞移植では、拒絶反応や、移植された血液細胞が逆に体を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)が起こりにくいと考えられる。
兄弟姉妹間でもこの仮説が応用できる。われわれは父と母から1組ずつ計2組の遺伝子セットを受け継いでいるので、それを調べれば、免疫寛容となる組み合わせが分かるからだ。
通常、白血病などの治療で行われる造血幹細胞移植は、GVHDの重症化を避けるため、HLAのすべて一致する人同士で実施するのが望ましいとされている。
兄弟姉妹間では4分の1の確率で一致するが、確率が低いため骨髄バンクや臍帯血(さいたいけつ)バンクが発足し、適合する提供者探しが行われている。しかし、適合する提供者が見つからない場合も少なくない。
▽健康そのものに
「HLA型は計6座あるが、2座以上の不一致があれば、これまで移植をあきらめていた」と京都府立医大血液内科の島崎千尋講師は話す。
しかし、1999年から、この仮説に基づき、緊急の造血幹細胞移植が行われるようになった。
一戸医師らが昨年実施した調査では、これまで全国32施設でHLA2―3座不一致の移植が49例行われており、50%以上の1年生存率が得られていた。
「特に兄弟姉妹間の移植では、急性GVHDが起こりにくい傾向があり、有力な治療法になる可能性がある」(同医師)
京都府立医大では、これまで10例を実施。1昨年秋の慢性骨髄性白血病の女性(55)の場合、症状が急転し悪化、余命2―3カ月だった。島崎講師は、女性の血液中に娘さんの血液細胞の存在が確認できたため、娘さんからの移植を決断。倫理委の承認を得て末しょう血から採った造血幹細胞の移植を実施した。一時的にGVHDが出たが、その後は副作用もなく健康そのものになっている。
悪性リンパ腫の男子高校生(17)の場合は母親から移植。現在、元気で学校に通っている。
島崎講師は「いずれも後がない状態で実施し、4例が亡くなっているが、社会復帰できている患者さんもいる。提供者が見つからない場合、非常によい方法になる可能性がある」と話している。
現在、厚生労働省研究班が治療法確立に向け調査、研究を進めている。