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重症急性呼吸器症候群(SARS)の重症例では、ほぼ全例が成人呼吸促進症候群(ARDS)の症例定義を満たすことが明らかになった。SARSに罹患した患者の2〜3割は重症化してICUの管理を必要とする状態に陥る。トロントではSARS患者196人の19%がICUに送られ、そのうちの82%に当たる31人がARDSと診断された。ICU患者の79%は人工呼吸器を装着された。一方、シンガポールでも199人のSARS患者の23%がICUに送られ、うちほぼ100%に当たる45人がARDSと診断された。重症例の死亡率は高く、トロントの研究ではICUに送られた患者の34%がシンガポールでは37%が28日後までに死亡した。2地域の重症例に関する原著論文は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌7月16日号に掲載された。
Toronto大学内科のRobert A. Fowler氏らのSARS重症者対応チームが、4月15日までに発症したSARS疑い例、可能性例患者196人の重症例とその臨床的特徴をまとめたところによると、196人中、19%に当たる38人がICUに送られ、このうち、31人(82%)がARDSと診断された。そのうち29人(ICU患者の79%)は人工呼吸器の適応になった。
Tan Tock Seng病院麻酔科のThomas W. K. Lew氏らが報告したシンガポールのSARS重症者の傾向もほぼ同様で、3月6日から6月6日の間に発症した199人のSARS患者のうち、46人(23%)がICUに送られ、うち45人がARDSと診断された。
症状の進行は極めて早く、いったん重症化すると予後は悪い。トロントでは入院から人工呼吸器装着までの日数の中央値はわずか4日だった。ICU管理開始後28日後には、ICU患者の34%が死亡した。人工呼吸器装着者では45%に当たる。発病から死亡までの経過日数の中央値は19日に過ぎない。
先行研究でも明らかなように、これら二つの研究報告でも、重症化例は軽快例に比べ、高齢で慢性疾患の有病率が高かった。トロントでは、ICU患者の年齢の中央値は57.4歳、37%が糖尿病だった。これに対して非ICU患者の年齢中央値は43歳、糖尿病患者は5%だった。また、ICUに送られた後、回復した生還者の年齢の中央値が55歳なのに対して、死亡者は70歳、生還者のうち、糖尿病患者は24%だったのに対して、死亡者では62%と半数以上を占めた。
この傾向はシンガポールでもほぼ同様で、199人のSARS患者のうち、ICU患者の年齢の中央値が51歳だったのに対し、非ICU患者では43歳、ICU患者のうち15.2%が糖尿病だったのに対し、非ICU患者では7.4%だった。ほかに、高血圧は30.4%対9.4%、冠動脈疾患では13.0%対2%でICU患者の有病率が高かった。
トロントの報告では、人工呼吸器の適応になった患者の死亡率はインフルエンザとほぼ同様だが、SARSでは健康な若年者が重症化する例が多いと指摘している。両地域の報告では、ICUにおける重症SARS患者の治療や看護において、医療関係者の感染の危険性が極めて高いことを指摘している。トロントでは当初、十分とされたN-95マスクの装着とガウンテクニックによる防御を施していたにもかかわらず、複数の医療関係者の感染が見られたと報告している。シンガポールでは、幸いICUでの医療関係者の感染例は見られなかったが、不顕性感染の発生は否定できないとしている。
トロントの報告では、「すべての現場の医療関係者は、SARSの流行が発生する前に、感染対策の装備を備え、使用法を学んで体験しておくことを強く推奨する」と結んでいる。
トロントの報告の原題は、「Critically Ill Patients With Severe Acute Respiratory Syndrome」。アブストラクトはこちらまで。
シンガポールの報告の原題は、「Acute Resiratory Distress Syndrome in Critically Ill Patients With Severe Acute Respiratory Syndrome」。アブストラクトはこちらまで。(中沢真也)