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日本で開発されたまま、天然痘の撲滅後四半世紀、冷凍庫で眠っていた「世界で最も安全な種痘」が復活することになった。
米カリフォルニア州の医薬品メーカー「バクスジェン」社がこれを買い取り、米国で臨床試験を始める。生物テロの恐れが高まっての再登場だけに、開発者の橋爪壮・日本ポリオ研究所理事長は「評価はうれしいが、こんな形で役に立つとは」と、複雑な心境をのぞかせている。(米・カリフォルニア州サンノゼで、館林牧子)
この種痘は、1970年代に千葉県血清研究所が開発した「LC16」。橋爪さんらが、代表的なワクチン用ウイルスの一つをウサギの細胞に感染させ、増殖したウイルスの中から病原性の低いものを選ぶ、という作業を繰り返して作った。
当時普及していた6種類のワクチンに比べ、中枢神経への副作用などが最も少なく、一方で、接種を受けた人の体内には天然痘ウイルスを攻撃する免疫物質(抗体)が十分に作られるなど、優れたワクチンだった。
75年に旧厚生省が承認。計10万人の乳幼児に接種されたが、天然痘が根絶されたため、日本は翌76年に義務的接種を廃止。LC16は、氷点下80度の冷凍庫で眠りについていた。
米国では1972年に種痘が廃止されたが、2001年の炭疽(たんそ)菌テロ事件以来、生物化学兵器に対する警戒が高まり、まず軍人を対象に天然痘予防接種が再開された。今年1月、民間の医療関係者へも接種が拡大され、軍と民間あわせて約40万人が受けている。
しかし接種後の副作用の問題が浮上。心臓疾患を併発して死亡する例も出た。こうした状況から、バクスジェン社では「LC16は生物テロ対策に不可欠な武器となる」と期待している。
日本政府も、一昨年の米同時テロ後、種痘の備蓄を決定。昨年廃止された千葉県血清研究所に代わり、財団法人「化学及血清療法研究所」(熊本市)がLC16を生産し、自衛隊などで接種を再開している。
岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長は「LC16は免疫物質を確実に作り出す一方、脳炎などの副反応を起こさない極めて優秀な種痘。副反応がない『夢の種痘』の開発を地道に続けた、日本ならではの成果で、世界的な評価を受けたことは喜ばしい」と話している。
◆種痘=天然痘の予防接種。イギリス人医師のジェンナーが18世紀末、天然痘に似た牛の「牛痘」の経験者は天然痘にかからないことを発見。子供を実験台に、牛痘感染牛から採取した液をすりこむ接種法を開発した。世界に普及し天然痘撲滅の主力となった。(読売新聞)
[6月11日15時31分更新]