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内外で株式市場が堅調に推移している。
連休明け(レーバーデイ明け)のNYでは、先行して年初来高値を更新して
いたダウ、ナスダックに続いてS&P500種平均が年初来高値を抜いてき
た。6月17日の1011ポイント以来、1000ポイントを下回る水準で
の値動きに始終してきたが、今週年初来の高値を更新してきた。幅広い銘柄
をカバーするこの指数の上昇は、一般には株式市場全体の明るさを示すもの
と受け止められる。
さて、その中で海外金価格は、いわゆる「高値保ち合い(もちあい)」と表
現されるが、370ドル台をキープした値動きとなっている。
前回8月29日配信号で上昇の背景はファンドの買いで、それはテクニカル
分析を重視する傾向のあること、新たな市場参加者の出現で従来の感覚では
予想できない価格展開が考えられるとした。いま市場参加者の大半が指摘す
るのが、金価格は目先、「大幅な調整は不可避」ということである。前回号
でも取り上げたので、背景についてはそちらを参照していただくとして、そ
の後もファンドの買い越し量は膨らみ続け、8月26日時点でついに312
トンにも上ってきた。日本時間の明朝(現地9月5日)に発表が予定されて
いるデータはおそらく更に膨れ上がっているものと思われる。そうした影響
が現れるという意味から前回「目先どの程度の下げで止まるのか、連休を控
えた今晩のNY市場に注目している」として8月29日NY市場(NY・C
OMEX)の取引結果に注目した。
以下は、その週末と連休明け後今週の結果を時系列で見たものである。
始値 高 安 終値 出来高 前日比
2003/8/29 371.8 379 370.6 376.8 46069 5.2
2003/9/2 376.8 380.4 373.5 374.3 52381 -2.5
2003/9/3 374.8 376.7 370.9 375 45494 0.7
2003/9/4 375 376 370.7 374 -1
(ドル/オンス)
29日の結果はご覧のように5ドル以上の続伸となった。大幅買い越し状態
での週末の取引は、一般に手仕舞い(「決済」という意味)の売りが出るも
のである。今回の場合は3連休を控えて利益を確定させておこうという売り
が出ると予想し、その際にどの程度の価格で折り合いが付くのかで、目先の
市場の動きを判断する上で注目に値したのである。結果は上昇で非常に強い
ものとなった。
そしてこの日、新たに発表されたファンドの買い越しは312トンとなっ
た。それを受けた連休明け2日の取引は、さすがに前日比マイナスではあっ
たが下げ幅は予想外に小さなものだった。3日の取引では、ユーロが一時大
幅に売られたものの(4ヵ月半ぶりの安値)、結局前日比プラス・サイドで
終わっている。
昨晩も株式市場続伸のなか途中売られ、前日同様371ドル割れを見たとこ
ろで反転し、結局前日比1ドル安で終わっている。おそらく市場参加者の多
くが予想したのは、この段階で少なくとも360ドル台への下落であったろ
う。回転が利いている当座は苦にならなくとも、値動きが止まったところで
“残”の重さに耐えられず急落というパターンはここまでのところ現れてい
ない。むしろ下げたところはすかさず買いが入るという展開が続いており、
この辺りは前回「スタンスの異なる投資家の参入で価格展開が変わるのは必
定」としたところである。
さて、この間の金市場を別の角度から眺めて見ると以下のような点が指摘で
きる。
まずNY市場の終値ベースで見て昨日までで6営業日連続で370ドル台を
維持することとなった。これは取引時間中の高値390.4ドルを記録した
イラク戦開戦前の2月時点の5営業日を上回るものである。これは当時のよ
うに一過性の材料を基に買い上げられた相場とは質的に異なるものを感じさ
せる。ちなみに5月の戻り局面で370ドル台は1日に過ぎなかった。
もうひとつは、株式市場で金鉱株の堅調地合が続いていることである。以前
取り上げたことのあるフェラデルフィア証券取引所の金銀鉱株指数(シンボ
ル:XAU)は、昨日(現地4日)の取引で年初来の高値を更新し5年4ヵ
月ぶりの水準まで買い進まれている。この場合、金鉱株への関心の高さは、
金本体をもサポートする要因と考えていいだろう。昨日は、ヨーロッパの時
間帯で、膨らむ財政赤字の一助とするためドイツが保有金売却を考えている
とのニュースが伝わるなど、環境は決して良くないにもかかわらず、金市場
は値を保った。上に載る300トン以上もの“買い残(将来の売り注文)”
を考えると、驚異的な強さである。もっとも、300トンは金市場の感覚か
らは「重い」のだが、時価にして約4500億円ほどで金融市場の感覚で
は、(よくある規模という意味で)驚くに値しない数値ではある。新規の参
加者の参入を考えると、いずれ調整は免れないとしても、まずは新高値トラ
イというところか。調整局面入りでも下げの値幅(押し)は、春先ほどには
深くならないと思われる。
いずれにしても世界経済同様、金市場も過去の経験則が当てはまらない展開
が濃厚である。その意味で、NY市場でのオプションの納会が予定されてい
る来週は流れに変化があるのかも知れない。(9月5日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎