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外部監査の導入加速も
「エディー・バウアーのインドネシアの工場では労働者が罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられていた」
「メキシコにあるナイキの工場では従業員が求める労働組合の結成を認めていなかった」
六月、消費者団体などで構成する米公平労働者協会(FLA)が、有力アパレル企業七社の海外工場の実態について、調査結果を初公表した。
セクハラ、衛生、安全環境…。分厚い報告書がつづるのは世界に顧客を抱える有力企業の恥部。衝撃的な内容だけに、ともすれば不買運動を引き起こしかねない内容だ。だが、驚くべき点はこれだけではない。調査とその結果の公表を頼んだのは実は企業側だった。
米企業のこれまでの取り組みは、社内調査を実施して問題が生じないよう心掛けているといったもの。もっとも、内容を公表する企業は皆無に近い。それだけに一度不祥事が発覚すると、消費者の猛烈な反発と不信を引き起こしてきた。
報告書の作成に全面協力したナイキの担当ディレクター、ウェインステイン氏は「工場が完ぺきでないことは知っている」と語る。リスクへの対応として出した答えは「第三者による客観的な監査」だ。まず監査で実態を把握。問題を指摘されたら速やかに改善に動く。FLAに協力した企業は報告書を通して企業イメージの向上を狙う発想の転換に踏み切った。
環境や人権などを重視する企業を選んで投資する社会的責任投資(SRI)の時代。企業に変革のうねりが押し寄せ、一部ではあるが、この分野に外部監査を導入する企業が出てきた。FLAのスポークスマン、ダンジグ弁護士は「社会的責任分野で外部監査を受ける圧力は加速度的に強まっていく」と予測する。
「熱帯雨林の破壊につながる開発案件への融資についてどう考える」
四月、ニューヨーク市内で開かれたシティグループの株主総会。昨春の総会に続き、環境団体に所属する株主がワイル会長に厳しい質問をぶつけた。会場の外では活動家らがデモを繰り広げる始末。「最先端の企業倫理」を掲げる同社は困惑せざるを得なかった。
それから間もない六月。シティなど世界の主要銀行十行は開発案件融資に新手法を導入すると発表した。融資先の企業に環境などへの配慮を義務づけ、違反者には後の資金調達が困難になるように仕向ける仕組み。ワイル会長は新手法導入の背景に「株主や非政府機関などとの対話があった」と素直に認めた。
西海岸サンフランシスコに本拠を置く「ビジネスのための社会的責任(BSR)」。企業に対応を助言するこの団体で会員の大企業化が進んでいる。名を連ねるのはフォードや通信大手ベライゾン、バンク・オブ・アメリカなど四百五十社。同団体幹部のバナーマン氏は「会員の質問がここ数年で『社会的責任への取り組みがなぜ重要なんだ』から『どうやれば責任を果たせるのか』に変わってきた」と話す。
理由は経営者の認識の変化だ。プライスウォーターハウス・クーパースが三十三カ国で千百六十二人の最高経営責任者(CEO)を対象に昨年実施した調査では、「社会的責任への取り組みと業績の間には密接な関係がある」と答えた企業が七〇%に上った。
だが、取り組みは容易ではない。この分野に詳しい弁護士のサーチャージ氏は「ナイキのように問題改善へ努力すればするほど、活動家の注目を集めてさらなる対応を迫られるという皮肉な側面もある」と指摘する。
それでも企業は動かざるを得ない。米企業で外部監査を初導入した玩具大手マテル。幹部のデンチフィールド氏は「ブランドは『消費者の期待』という重みを背負っている」と強調する。
信用が失墜してからでは遅いという危機感。社会的責任を企業は果たす必要があるという「べき論」。厳しさを増す消費者のチェックを踏まえ、米企業の社会的責任への取り組みが胎動期に入ったのは間違いない。
(ニューヨーク
=豊福浩)