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「急騰した金市場が見ているもの」 ☆☆
金市場が新たな展開に入る気配が濃厚となっている。株式市場や債券市場を
見る上でも目は離せないだろう。
前回8月18日配信号で、俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー主演映
画で使われたセリフを借りる形で金市場の見通しを書かせていただいた。下
げても短期で価格が戻る様子を“I’ll be Back.”、そろそろ目立った動
きが出そう(上げ基調を強めそう)ということで“It’s Time.”とした。
現地8月27日のNY市場で価格は急騰した。
前日比7.3ドル高の374.1ドルと5月21日以来の370ドル台乗せ
となった。そしてこの水準が、その時の終値372.2ドルを上回ったこと
で意味のある数字となった。というのもチャート分析上は、価格が過去3ヵ
月間の価格帯(膠着状態)を抜け出し、新たな展開に入ることを示すシグナ
ルと解することができるためだ。もちろんこの分析は、ひとつの方向性を示
唆するものであって、絶対的なものではない。ただし、環境によっては信頼
性が高まるのも事実である。例えば現在のようにヘッジ・ファンドや商品フ
ァンド(マネイジド・フューチャーズ)などの大口の投資家が主導権を握る
市場では、それらの多くがテクニカルな観点から売買の決断を下す傾向が強
いため、市場分析上の注目度が上がるのである。これは株式市場を見るうえ
でも参考になるだろう。
いずれにしてもテクニカル面(注)では、節目となる価格を下から上へと突
破したことから終値ベースで見た今年の高値である2月4日の379.9ド
ルの突破が射程に入ってきたことになる。
ただし、市場の「内部要因」と呼ばれるものを検証すると上値突破がそれほ
ど簡単ではないこともわかる。ここまでの価格上昇はファンドの旺盛な買い
意欲の賜物ではあるが、その結果、その買い越し量は280トンと史上最大
の規模に膨れ上がっているのである(8月19日時点のデータ)。これはそ
のままチャンスがあれば利益を出そうと控えている“売り注文”と解釈して
いいだろう。通常であれば、これだけの買い越しは過熱を意味するため(あ
るいは市場の見方が偏りすぎていることを示すため)、その「大幅買い越
し」という事実自体を弱材料にして売られることもよくある。テクニカルに
は強気できても、内部要因的には見通しに?(クエスチョンマーク)が付く
わけだ。
もっとも、内部要因といっても流動的ではある。事実、27日のNY市場の取
引では、出来高約7万コントラクト(1=100オンス≒3.1キロ)とな
っているので、かなりの売り物が出て、しかもそれをこなした上での上昇で
あったことがわかる。いわゆる“回転がきいて”おり、(株になぞらえた表
現をするならば)買い残の多さも気にならないということである。こういう
ケースの場合、動きが止まった時が正念場で、需給の悪化が急浮上し、どう
しても調整安に陥らざるを得ないというのがお決まりのコースである。その
面でやはり280トンは重くのしかかるのだが、少し角度を変えてみると従
来のパターンにはないものも見えてくる。
最近の金市場には、新規資金の流入が活発化しており、その主だったものと
して欧米の年金基金が挙げられることは、当欄で指摘してきた。こうした機
関投資家は、金投資というとその関連あるいは代替として金鉱株やその周辺
銘柄に投資するというのが、これまでのパターンである。それがファンドを
経由するかたちで金市場本体に資金を入れるところが出てきた。その際のポ
イントは、彼らの運用スタンスが中長期の視点に立ったものであるというこ
とだろう。もちろん委託を受けた運用機関が、結果を競い短期売買を繰り返
すということはあろうが、やはりスタンスの異なる投資家の参入は価格展開
を変えるのは必定であろう。
例えば、最近の金価格上昇の背景としてメディアで取り上げられるのは、頻
発している自爆テロや泥沼化の様相を帯びるイラク問題などいわゆる「地政
学的リスク」である。たしかに要素としてそれらは無視できないが、それだ
けで足元の旺盛な買い意欲を説明するには無理があるように思う。このとこ
ろユーロが対ドルで弱含みに推移しているが、これまでの展開ならば、金も
連れ安するのがパターンだった。事実5月の金の高値時にはユーロは1.2
0に接近していたと記憶しているが、それが今は1.08台である。落ちる
ユーロには連動せず、その戻りには連動するという“いいとこ取り”の展開
を見た為替市場の参加者からは「金の独り立ち」という指摘も聞こえてくる
ほどだ。
それでは新たな市場参加者が見ているものは何なのか。
それはやはり米国マクロなど大きな金融の流れだろう。今週は、米議会予算
局が財政状況を発表している。それによると来月9月で終わる2003会計年
度は、4,010億ドルの赤字予想となっている。10月からの2004年
度はさらに増え4,800億ドルもの赤字の予想となっている。ちなみに、
これまでの赤字の最高額は1992年度の2,904億ドルでブッシュ父政
権時代のことだった。クリントン民主党政権時代の黒字から、急転直下の赤
字転落である。いうまでもなくバブル崩壊後の景気刺激策としての大型減税
などに国防費や戦費の拡大が重なっての結果である。その意味するところ
は、株価の戻りとともに明るさが出てきた米国経済の裏側で、ある面でその
明るさを演出している国家に大きなしわ寄せが来ているということである。
すでに年間5000億ドルを超え懸念が高まっている経常収支の赤字(大部
分は貿易赤字)と合わせて「双子の赤字」と呼ばれるが、その昔、レーガン
政権時代にも問題になったが、今の規模は空前のものと言っていいだろう。
この赤字を賄うために、米国は外からの資金還流に頼っているわけだが、そ
れがここ2〜3年で流れが大きく変化しているのである。まずバブル崩壊と
金利差逆転でユーロ圏からの還流は大幅減少し、続いてテロ以降の一連の米
国関与のなかで中東オイルマネーが米国回避を始めた。いま足元で米国の赤
字を支えているのは、われ等が日本とチャイナ・マネーである。
それでも膨らみ続ける米国の赤字。「史上最大の不均衡」は、今日明日でド
ラスティックな変化をもたらすものではないが、このままでは早晩限界がや
って来るのもまた事実であろう。その対処法も“あちらを立てれば、こちら
が立たず”という類のもので、結局最後は「国益」が幅を利かすのではない
かと思われる。その時、国際金融市場は波風が立ちそうだ。そうした将来の
可能性を感じさせる現象が、中長期の運用を見据える年金基金などをして、
金市場にも目を向けさせていると見られ、それが足元の金市場の価格展開に
も影響を与えているのである。
急騰した金価格に調整はつきものである。目先どの程度の下げで止まるの
か、連休を控えた今晩のNY市場に注目している。(8月29日記)
注)テクニカル分析;チャートの形(過去の価格の推移)などから市場の状
況を分析し、
近い将来の方向性を探ろうとするもの
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、
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