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自民党の総裁選に向けて
合成の誤謬
9月20日に実施予定の自民党の総裁選は、日本社会にとって、考えられている以上に重要である。誰が総理・総裁になるかによって、今後の経済政策はかなり違ってくる。ただ小泉首相が再選されれば、一気にものすごい緊縮財政になるということではない。実際、小泉政権のこれまでの緊縮財政は、どちらかと言えば掛声だけであり、国・地方の累積債務はむしろどんどん増えている。決して、積極財政とか中立的と言わないが、やや緊縮的という程度の経済運営である。
しかしこれは、経済政策が一番まずい形で行われていることを意味している。中途半端な財政政策を行っているため、経済が最悪の状態に到らない。このためにいつまでも政策の大胆な転換が行われない。またバブル期に資産を売り切った人々は、物価が上昇しないことを確認して、少し金を使いはじめている。このため高級レストランがはやったり、高額なクルージングが人気となっている。したがって首都圏で行われる調査では、予想以上に内閣支持率は高い。
一方、小泉政権の稚拙な経済運営の犠牲者は沢山いる。バブル期に借金でビルを建てたり、住宅を購入した人々が典型である。またリストラで職を失った人や、就職先のない人、どんどん工賃を削られている下請業者、そして仕事のない土木・建設業者など、犠牲者は沢山いる。特に地方への皺寄せが大きい。資産デフレも、首都圏の中心部では終息に向かっているが、地方はこれからが本番である。
しかしマスコミは地方の苦境に関心がない。また小泉政権の存続を願っているのか、小泉政権下で起っている問題をほとんど報道しない。反対にこの不況下、自助努力でたまたま生き残っている企業や、補助金なしで道路の修繕を行っている自治体が、国民の鏡ともてはやすようにマスコミは取上げる。どういう訳かテレビに登場するエコノミストは、本質的に企業コンサルタントばかりである。個人や企業の努力でデフレ時代を生き抜くことしか説かない。出版され、売れる本も、個人のサバイバルを手ほどきした本やノウハウ本ばかりである。
バブル崩壊後、当初は積極財政が行われ、設備投資の急減をカバーしていた。しかし明らかに橋本政権の二期目あたりから、雰囲気は変わった。「小さな政府論者」「財政均衡主義者」「供給サイド重視論者」といった構造改革派が台頭し、彼等が経済政策の実権を握った。「規制緩和で潜在成長率を高める」「孫子に借金を残すな」「もう右肩上がりの成長は無理だ」、そして最近では「創造的破壊」、つまり「財政支出による景気対策は、不効率な企業の存続させるだけ」という議論が目立つようになった。
したがって財政支出対して急に逆風が強くなった。「公共事業は業者を潤すだけだ」「これ以上国の借金を増やさないために、無駄な政府支出は削減すべき」といった風である。しかし民間も自己防衛のために同様の行動を採っている。企業は急ぐ必要のない設備投資は止め、個人は無駄な買物を控えるようになった。国民のこのような行動によって、かえってデフレの克服は難しくなった。さらに資産デフレが続き、不良債権がどんどん増えている状況であった。まさに逆噴射的財政政策である。
「合成の誤謬」という言葉がある。これは個々の主体が正しい行動を採ることによって、経済全体ではむしろまずい方向に進むことを意味する。デフレ下で、それぞれの主体が自己の防衛を行うため、支出を控えることによって、さらにデフレが深刻化する今日の状態が「合成の誤謬」である。しかし一般国民がこの「合成の誤謬」の意味を正しく理解することは難しい。
世論の形成に大きな影響力を持つテレビには重大な欠陥がある。テレビは、取上げるテーマについて人々に深く思考させることが難しいメディアである。したがって「合成の誤謬」と言っても、簡単にはテレビの視聴者に理解されない。むしろ「政府は無駄使いをやめろ」「道路公団は民営化して合理化しろ」「銀行の経営者の責任を追求しろ」といったアジテーションの方がアッピールする。このようにまともな経済論議はテレビでは無理である。しかし今日求められている政治は、国民の理解が難しいこの「合成の誤謬」を解決する必要がある。
歴史の転換点
このように世論を大きく変えることは難しい。しかし可能性はある。政権が交代し、正しい政策が行われ、これが効果を生めば、人々の考えも変わるのである。つまり今度の自民党の総裁選は、歴史の転換点になる可能性が強い。積極財政に転換し、経済が成長し、財政赤字の増加スピードが鈍れば、これが正しい経済政策と世間に認知される。たしかに積極財政に転換すれば、一時的に財政赤字は増えるかもしれないが、積極財政を続けることによって、むしろ政府の累積債務残高のGDP比は小さくなるはずである。
また国債の日銀買入れ分は実質的に国の借金にならないことが国民に理解されれば、国債の日銀引受けという政策も是認される可能性がある。さらにもし国民の理解がさらに進めば、政府貨幣(紙幣)も可能性が出てくる(ただし日銀などの金融当局や日経新聞の論説委員もこれについては不勉強で、今日的外れの発言が続いている。このような状況では政府貨幣(紙幣)の発行は当分無理)。
そして重要なことは、政策転換してもインフレや国債の暴落といったことが起らないことが証明されることである。積極財政への転換に反対している人々は、「ハイパーインフレ」「国債の暴落」「円の暴落(マイルドな円安はむしろ好ましいが)」が起るといい加減なデマを流している。このようなことが起らず、むしろ経済が成長し、失業が減り、株価が上昇と好ましい結果が生まれることは確実である。
どうしても政権交代を実現させなければならない。自民党の総裁選には何人かの政治家が立候補するようである。小泉首相を除き、誰と誰が最終的に候補になるかまだ流動的である。ところで数いる候補者の中から、次の総裁として亀井静香氏を推薦する勝手連ができた。実は筆者もこれに一枚噛んでいる。ホームページ亀井静香勝手連http://www.nb-j.co.jp/katterenもできている。そして驚くことに志帥会のホームページが、この亀井静香勝手連にリンクを張ってくれた。
是非、勝手連のホームページを見てもらいたい。さらにここに掲示板があるので、一言書いてもらいたい。亀井氏を推挙したのは、筆者達の経済認識や必要と考える経済政策に、この政治家の考えが一番近いからである。この政治家以外では、経済政策が中途半端なものになることが危惧される(それでも小泉政権よりずっとましであるが)のである。
日本経済は、バブル崩壊の影響が小さくなっているはずなのに、異常な状態が続いている。今日の日本経済は、異常な財政赤字、異常な為替介入、異常な株価てこ入れ政策、そして異常な金融緩和でかろうじて支えらている。それにもかかわらず、政府関係者や構造改革派は、水面下の経済が少し上向き、株価が上昇すると、「底離れのきざし」「改革の芽が出て来た」と狂ったようなことを言っている。
たしかに日本中が苦境に陥っている中で、東京、特に東京の中心部だけは、残り少ない富をかき集めて賑わっている。しかし地方は悲惨である。国会議員は、通常国会が終わり皆地元に帰っている。地方経済の現状を見れば、小泉首相や構造改革派が言っている「痛みを耐えれば、そのうち経済はみごとに蘇る」という話は真っ赤な嘘だと気付くはずである。当の森派でも、本心から小泉再選を希望する人は何人いるのか疑問である。
本誌00/11/13(第185号)「急がば回れ」は、約3年前のコラムであるが、今日これとよく似た状況になった。来週号では、このことを取上げたい。以前、来週号を休刊にすることを予告していたが、予定が変わったので、休刊はもう少し先にのばしたい。
テレビ朝日のサンデープロジェクトで、生中継でアンケート調査を行っていた。25名中、なんと15名が小泉再選に賛成していた。60%の支持率である。しかし出席者は笑いが全くなく、皆とても暗い顔をしていた。とても6割の人々が小泉政権に満足し、再選に賛成しているとは感じられなかった。
http://www.adpweb.com/eco/index.html
小泉純一郎から亀井静香に変わったからって、何かが特別に変わるとは思えないんですが、どーなんですかね。