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世界最大の金融資本、シティグループは今年一月号の本誌「企業研究」でも取り上げたが、敢えて再度俎上に載っていただこう。異例だが、シティのような巨体は、なかなか一太刀では斬りつけられない。前回は焦点を証券、銀行部門に絞ったが、今回は消費者金融部門、それも業務縮小か否かで揺れる日本のシティファイナンシャル・ジャパン(CFJ)をえぐる。
今年二月二十六日の日付が入ったシティグループの内部メモを入手した。社内エコノミスト二人がシティ「奥の院」に控える最高首脳三人に直訴したもので、シティの傘マークのレターヘッドがついたメモは、見るからにただの社内報告ではない。
限りなく要注意国に近い日本
その三首脳とは、まずこの七月十五日にサンフォード・ワイル会長から最高経営責任者(CEO)の椅子を引き継ぎ、ワイル後継レースの筆頭に躍りでた五十三歳のチャールズ(チャック)・プリンス。そのライバルで最高執行責任者(COO)になった五十七歳のロバート・ウィルムスタッド。そして日本市場担当の五十五歳の副会長デリック・モーンである。
表題はただ一語――JAPAN。
この「シティの二・二六メモ」から透けて見えるのは、日本市場の先行きに警鐘を鳴らす鋭いリスク感覚だ。
「昨年十二月に我々はビジネス上の理由から、公式には日本を要注意国リストに載せない決定を下しました。ただ同じ会議で、要注意国指定のステップに準じた手続きに従う(follow a proc-ess that mirrored the watch list-ing steps)ほうが業務上も理にかなうと決めました。特にこれまで日本を精査してきた理由は、大胆な政策が打てず構造改革もできず、経済が維持不可能なコースをたどっていることにあります。この見解は、国別検討会合でも当方の会合でも異論が出ていません」
メモが首脳陣に訴えているのは、(1)いち早く手を打って日本の潜在リスクを軽減するため、どう経済や政治、市場を監視するか、(2)リスクを免れる緊急プランをどう作成し、誰が執行責任を負うか、(3)そうした行動や環境によってシティの収支はどれだけ振れるか――の三点でシミュレーションしたいということだ。要は、日本経済の不測の事態に備え、危機管理へ先手を打つべきだと助言しているのだ。
こうしたシティ内の危機感を背景にして、三月十六日付の日本経済新聞で「シティグループ日本事業縮小」が報じられた。日本のシティグループは銀行、証券、生保など総合金融サービスを展開、社員は一万一千人に及ぶが、収益の最大の柱である消費者金融部門CFJ(社員六千五百人、有人店舗八百五十店、無人店舗三百七十店)でリストラを敢行、年末までに有人店舗四百〜五百店、社員二千人を減らす計画があるという報道だった。
衝撃が走る。無理もない。シティ傘下の日本の消費者金融三社を一月に統合して誕生したばかりのCFJは、貸付残高が推定で一兆五千億円。武富士(一兆六千七百億円)、アコム(一兆六千五百億円)に次ぐ堂々の三位で、アイフルやプロミスをも上回るこの消費者金融の「黒船」が店じまいに入るなら、業界地図が塗り替わってしまう。
翌十七日、慌てたシティの統括在日代表チャールズ・ホワイトヘッドは、「日本を格下げや投資不適格国に位置付けたりしてはおらず、日本の経済情勢を引き続き注意深く見守っている」「(統合は)対日ビジネスの効率的展開が目的で、長期的に日本の消費者金融ビジネスを一層強化していく意思を表す」という否定談話を発表した。
この火消し攻勢は一時奏効したかに見えた。「東洋経済」誌はすっかり乗せられて「シティの日本撤退がありえない理由」という提灯記事を書かされる始末。日経も五月に来日したモーン副会長のインタビューを載せて幕引きした。
だが、白々しすぎる。お忍びで来日したワイル会長は小泉純一郎首相と会い、そのカラ元気にいたく失望したという。シティが三顧の礼で迎えたロバート・ルービン元米財務長官も、日本の将来に懐疑的な持論をぶっている。ワイル会長の目は中国市場に向かい、ダイナミズムに欠けた日本にすっかり興味を失っているのだ。
だからこそ、親日派のモーン副会長は、保身のために日本事業縮小報道の否定に躍起になったのである。「ミニ・モーン」を自認する子飼いのホワイトヘッド代表もその意を受けたに過ぎず、二人とも「二・二六メモ」の存在に一言も触れないのはフェアとは言えない。米欧記者から逆に「なぜ日本を要注意国にしないのか」と聞かれて絶句したというから、懸命の否定はやはり内向きのポーズだったのだ。。
会長交代で拡大路線にブレーキ
シティがいかに隠そうと、CFJで何か起きていたことは隠れもない。日経の報道と並行して、CFJは三月に不可解な首脳交代人事を発表した。三年間会長を務めてきたジム・ジョンソンが突然辞任して社外へ去り、銀行畑のスティーブン・バードが後任になったのは偶然の暗合ではあるまい。
かつてジョンソンをCFJ会長に抜擢したシティグループ本体の消費者金融国際部門CEOが、ジョンソンの「輝かしい業績」を称える言葉を贈った。確かに彼が会長に就任した三年前の十一月、シティは米国最大の消費者金融会社アソシエイツ・ファースト・キャピタル(AFCC)を買収。その結果、日本AFCC傘下にあったアイク(業界六位)、ディックファイナンス(同七位、旧ダイエー系)、ユニマットライフ(同九位、旧ユニマット系)、さらに千代田トラスト(本田ちよ)、朝日信販などを一気に手中に収めた。その後も二〇〇二年に業界十二位のタイヘイ、大阪のマルフクからも貸付債権を買い取り、日本で三位の大手に駆けあがる目覚ましい成長を遂げたかに見える。
なのに、なぜジョンソン前会長は辞任に追い込まれたのか。退任後は「スパイダーマン」や「超人ハルク」など米国コミックスの著作権管理会社の日本代表に転じた本人に会った。退社時の機密保持契約を破らない範囲で彼はインタビューに応じてくれた。
「更迭を告げられたのは今年初めだった。後任はシティバンクから来るという。米国ではコンピューター関連の業務に携わり、中南米で実務経験がある人物だというが、彼は日本も消費者金融も知らない。承服できなかった。CFJは日本市場で積極的な拡大戦略をとって業界一位をめざすべきだと思う。今後、CFJは戦略を変え、シティは日本で道に迷うだろう」
――内部抗争があったということか。
「抗争の源は、拡大戦略に代えて、出費を抑える緊縮戦略を優先しようということにあった。それは社員の解雇、新入社員の内定取り消しなどといったことを意味する。これはいいビジネス方針とは思えなかった」
――CFJは国内勢との競争激化で戦略を変えざるをえなかったのでは。
「CFJはいわゆる二流顧客層を専門にしている。債権の質は他社と大きく違わない。二百六十万人の顧客を抱えていれば平均値でならせるからだ。しかし顧客が最初に利用する借り先になっていない。私の優先課題はマーケティングの改善で、“無傷”の初利用客の比率を高めることだった」
しかし、彼が言う拡大路線に国内ライバル他社は首をかしげる。中堅・中小の寄せ集めに過ぎないCFJを「図体は大きいが、所詮は張り子のトラ」と見ているのだ。〇二年後半から未曾有のデフレ不況と自己破産や貸し倒れの急増で日本の消費者金融業界には逆風が吹いていた。なのにCFJが、タイヘイや格下のマルフクから、債権のみかヒトや店舗まで引き取ったのは「愚の骨頂」と見ている。
現に融資残高の五五%を占める国内大手四社(武富士、アコム、プロミス、アイフル)は貸し倒れ費用の急増に焦っている。トップの武富士でも、実質貸倒償却比率が四年前の三月末には一・八九%(損失額二百五十四億円)だったのに、今年三月末には六・一五%(同一千三十億円)とはねあがった。彼らの目にCFJは「規模さえ大手の仲間入りをすれば儲かると勘違いしているのではないか。米国流のM&A(買収・合併)で駒を進めても、日本ではうまくいかない」と映るのだ。
確かに四半世紀前にも日本の消費者金融業界は「黒船来襲」を迎えたが、アブコやジャパン・ハワイ・ファイナンスなど上陸した十数社のうちアイクを除き全社が撤退している。それほど日本の市場は「手間暇をかけないと成功しない」(武井保雄・武富士会長)のだ。CFJには画期的な商品も魅力的な金利もなく、とりわけキメ細かな出店戦略、社員教育が欠けている。
同じ事情は、業界六位のレイクを買収したGEコンシューマー・クレジット(GECC)についても言える。この十月にGEキャピタル・コンシューマー・ファイナンス(GECCF)に吸収されるのは、GEエジソン生命を米保険最大手AIGに売却したのに続き、GEが日本業務を縮小していく一環ではないかと見られている。
四月三日、GEはアナリスト向け説明会を開き、GECCFのデビッド・ニッセン社長兼CEOが、日本での融資残高が九十六億ドルから九十二億ドルに減少したことを明かした。利益率は上がると胸を張ったが、残高が減るのは新規融資を止めているためで、新規顧客獲得を諦めて回収に専念すれば収益につながるのだ。ある業界筋は「GEもCFJも貸倒償却額を公表していないが、〇三年三月期に実質償却率が一〇%以上に悪化したのではないか」と見ており、業務縮小説が信憑性を持って語られるわけだ。
なぜ「シティ」ブランドを隠すか
不思議なことに、CFJは「アイク」「ディック」「ユニマット」の三ブランドを今なお維持している。シティグループに属していることは、よほど目を凝らさない限り看板からは分からない。ジョンソン前会長も「米国、カナダ、インドその他の国では傘マークで統一しているのに、日本だけ別なのは一貫性がない」と不満顔だ。しかし、そのために、国内大手四社から締め出された多重債務者の「駆け込み寺」となり、債権の中身が著しく見劣りするという。優良顧客は四社に囲い込まれ、ババを引かされているのが実情だ。
その中でCFJ社員のモラール喪失が著しい。顧客の実印を偽造して不正融資したり、顧客情報八百件を外部に売り払うなど大量の不正行為が発覚し、今年二〜五月の間に、少なくとも執行役員ら八十三人が懲戒解雇や諭旨退職を含む処分を受けていたことが明るみに出ている。リストラに怯える中堅にも動揺が広がって櫛の歯が抜けるように退社が相次ぎ、若手はインターネット掲示板「2ちゃんねる」で上司たちの陰口を書き込んでは憂さを晴らす暗い日々なのだ。
おまけに傘下のディックファイナンスが東京国税局の税務調査を受け、〇二年までの三年間に約五百億円の申告漏れを指摘されている。オランダの関連会社を使った租税回避行為に対し、国税局は過少申告加算税を含め百七億円を追徴している。これで日本に嫌気がさしたわけではないと関係者は否定するが、面汚しには違いない。
深刻なのは中核のアイクである。不動産担保融資で露見したトラブルの根が深いのだ。複数の消費者金融から借りている多重債務者に対し、シティの名で不動産を担保に借金を一本化させ、同時に闇ブローカーに債権を叩き売って利益に計上する悪辣な手法である。顧客が見も知らぬブローカーから取り立てを食うトラブルが相次ぎ、CFJ内部でも「大掛かりな違法行為が摘発されたら、アイクの存亡にかかわる」と問題視された。
香港からシティグループの社内監査チームが来日、愛知などを調べて四月に調査結果が出た。が、その内容についてシティグループは本誌に「社内のポリシーに基づきコメントできません」と答えた。責任があるはずの山田良隆専務(アイク前社長)には何も処分がない。六月にCFJの最高法務責任者(CLO)が退職したのは「うやむやに済まそうとする執行部への抗議」との見方に対しても、シティ側は「プライバシー保護の観点からノーコメント」「関係ありません」と返答したにとどまる。退社時に守秘義務を課して口封じをしている以上、鵜呑みにできない。
だが、CFJはなぜシティグループの統一ブランドを前面に押し出せないのか。既存三ブランドの軋轢が表面化する可能性があるからだろう。また富裕層に照準を合わせたプライベート・バンキングを推進するシティバンクのイメージも傷つけかねない。その内部矛盾を克服しない限り、CFJは永遠に国内大手並みの質を獲得できまい。
ワイル後継にも響く内部抗争
そこに、シティグループの内部抗争のヒントがある。ジョンソン前会長は、シティグループに買収されたアソシエーツ出身。それをシティバンク出身者に置き換えたのは、消費者金融・銀行部門間で壮大な角逐があるからではないか。メガ合併後、共同会長だったシティバンクのジョン・リードが、消費者金融からのしあがってきたトラベラーズのワイルと衝突、辞任したことは記憶に新しい。「企業文化の違い」と一言で片付けられたが、日本でもサラ金と銀行の間には深くて暗い河があるように、シティ内部でも依然見えざる葛藤が続いているのではないか。
昨年、自社アナリストの利害相反のスキャンダルで、ワイル会長のカリスマにも傷がつき、雌伏していた誇り高きシティバンク派が巻き返し始めたのだろうか。日本のリスクに警鐘を鳴らし、CFJの事業を整備しだしたのもその一端かもしれない。もちろんアソシエーツ派にも抵抗する理由がある。シティグループの日本市場での収益は前期九億七千万ドルとグループ全体の八%を占めるが、あるリサーチ会社によれば、その七割がCFJの稼ぎだという。国内に二十数店舗しかなく気位ばかり高いシティバンクや、独自の道を行く日興シティグループ証券の本流意識に対し「こちらこそ稼ぎ頭」の自負がある。
そうした葛藤の一端が、ワイル後継人事のよじれにつながっているのかもしれない。新CEOのプリンスは法律家出身で実務に疎く、この巨艦の舵を取るには無理がある。ワイルが〇六年まで会長の座にとどまるというのも「プリンスはつなぎ」説の根拠となった。内部抗争はまだ決着がついていないと読むべきだろう。
CFJの存亡にかかわる監査結果などは、どこまでワイル会長の耳に届いているのか。結局、彼をもってしてもシティグループの巨体は統御できない。全米一の高収益もいずれ化けの皮がはがれるに違いない。
http://www.sentaku.co.jp/keisai/zenbun.htm
(私のコメント)
◆アメリカの金融産業の中核中の中核、シィティーグループのビックバン戦略に軋みが生じている。アメリカにおいても銀行業と消費者金融の合体は、企業文化が異なり軋轢が生じている。利益を優先する消費者金融と社会的使命を背負っている銀行とは上手く行くはずがない。
名門シィティーグループが日本で名前を隠して消費者金融をしている背景には、消費者金融の利益は欲しいが、企業イメージを傷つけたくないと言う極めて当然の理由がある。日本の銀行も真似をしようとしているが、上手く行くはずがない。ビックバン戦略は根本的に間違っている。銀行の証券の窓口販売も上手く行っていない。客層が根本的に異なるからだ。
GEも保険部門を売却して撤退した。アメリカの金融テクノロジーは世界最高とうぬぼれて日本進出したが、多くが撤退している。日本経済の低迷にも原因があるが、そもそもアメリカ企業が最も進んだ経営ノウハウを持っているなどと言える根拠はどこにあるのか。
テレビなどの言論人は事あるごとに、日本の銀行が外資に買収されることにより構造改革が進むと言っているが、新生銀行もあおぞら銀行もやりたい放題の事をして、再上場をして売り飛ばしてそれで終わりだ。これが構造改革の正体だ。